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更新日:令和5(2023)年4月25日
ページ番号:23641
答申第82号
平成19年12月3日
千葉県知事様
千葉県個人情報保護審議会
会長原田三朗
異議申立てに対する決定について(答申)
平成18年4月25日付け○○健福第187号による下記の諮問について,別添のとおり答申します。
記
平成18年4月7日付けで異議申立人から提起された、平成18年3月9日付け○○健福第824号で行った自己情報部分開示決定に係る異議申立てに対する決定について
諮問第59号
|審議会の結論|異議申立ての経緯|異議申立人の主張要旨|実施機関の説明要旨|審議会の判断|審議会の処理経過|
千葉県知事(以下「実施機関」という。)が、平成18年3月9日付け○○健福第824号で部分開示決定(以下「本件決定」という。)した異議申立人の開示請求に係る「措置入院に関する診断書」、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定に基づく事前調査書」、「措置入院のための移送記録票」、「措置入院のための移送に関する診察記録票」、「指定医による診察命令書」、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による診察の実施について(通知)」、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第27条第1項の規定による精神保健指定医の診察結果について(通知)」及び「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による精神障害者の申請・通報等の結果について(報告)」(以下「本件文書」という。)について、千葉県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)は、別表のとおり判断する。
異議申立人は、平成18年2月22日付けで実施機関に対し、千葉県個人情報保護条例(平成5年千葉県条例第1号。以下「条例」という。)第16条第1項の規定により、本件文書の開示請求を行った。
この開示請求に対して実施機関は、本件文書の不開示部分は条例第17条第2号、第3号及び第6号ハに該当するとして、本件決定を行ったため、異議申立人は、平成18年4月7日付けで実施機関に対して異議申立てを行ったものである。
異議申立ての趣旨は、本件決定の取消しを求めるものである。
異議申立人が主張する異議申立ての理由は、概ね以下のとおりである。
不開示部分が多く、開示の要求を満たしておらず不満である。全面開示を求める。
本号に該当するとして不開示とした部分及び理由は次のとおりである。
ア項目
別表2、7、8、9、10、11、12、16、23及び25の部分
イ不開示とした理由
上記の情報は開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものであるため、不開示とした。
本号に該当するとして不開示とした部分及び理由は次のとおりである。
ア項目
別表13及び29の部分
イ不開示とした理由
精神保健指定医(以下「指定医」という。)が行う診察、診断は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「精神保健法」という。)に基づく措置入院の要否を即座に判断するための行政処分としての性格を有する一時的な行為であって、病状の改善という共通の目的のために将来にわたって被診察者と医師とが相互に信頼、協力関係にある通常の診療行為とは異なるものである。そして、指定医の診断の結果、被診察者の意思にかかわらず、措置入院という身体的自由を拘束せしめる状況に被診察者は置かれ得るということを考慮すれば、両者は一種の緊張関係に置かれているものと考えることができる。
同様に、指定医の診断の結果、被診察者の意思にかかわらず、措置入院という身体的自由を拘束せしめる状況に被診察者を置くために移送を行う移送委託車両提供会社についても、両者は一種の緊張関係に置かれているものと考えることができる。
したがって、上記情報を開示した場合、開示請求者と移送委託車両を提供した会社との間で、軋轢や紛争の生じる可能性を否定できず、報復的な行為により移送委託車両を提供した会社の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、不開示とした。
本号に該当するとして不開示とした部分及び理由は次のとおりである。
ア病名、症状等の診断内容(以下「診断内容」という。)
一般的な診察行為において、当事者及び家族と医師は、病気、病状に関する説明等を通じ、信頼、協力関係を築きながら治療行為を進めていくものであるが、本件の措置診療は、警察からの通報に基づく措置入院の要否を判定するための一時的な診察、診断であることから、精神保健法の規定に基づく措置入院を採る旨の告知はあるものの、一般的な診察及び治療行為のような信頼、協力関係にある医師からの病気、病状に関する説明等は行われない。
こうした説明等を経ずに「措置入院に関する診断書」及び「措置入院のための移送に関する診察記録票」(以下「診断書等」という。)中の診断内容を開示した場合、診断内容に対する不満や誤解を生ぜしめ、開示の結果かえって本人の病状等に悪影響を及ぼす可能性があるほか、被診察者とのトラブルを未然に避けるために診断書等の記載が形骸化する可能性がある等精神保健福祉事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると言わざるを得ない。
よって、これらの情報を不開示としたものである。
イ指定医の氏名及び印影(以下「氏名等」という。)
前述のとおり、指定医が行う診察、診断の性質上、被診察者と指定医とは一種の緊張関係に置かれているものと考えることができる。
よって、指定医と異議申立人との間にその診断結果をめぐり種々の軋轢や紛争を生じさせる可能性を否定できないところから、指定医の氏名及び指定医の氏名を識別できる印影といった指定医の個人情報を開示した場合、被診察者とのトラブルを未然に避けるために診断書等の記載が形骸化する可能性がある等精神保健福祉事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると言わざるを得ない。
なお、「措置入院のための移送記録票」中の「同乗者の氏名と()内の説明」についてであるが、これは指定医の氏名とこの指定医と本件措置診察との係わりについて説明した部分であり、上記おそれは当該情報を開示した際にも生ずるものである。
よって、これらの情報を不開示としたものである。
本号は、開示することにより、開示請求者以外の第三者の権利利益を損なうことを防止するために定められた不開示情報である。
そして、本号に該当するためには当該情報が開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものであり、かつ、本号ただし書に該当しないことが必要である。
そこで、以下検討する。
ア別表2及び10の部分について
まず、当該情報は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものである。
次に、当該情報は、被診察者の生活歴、現病歴等について陳述した者の氏名及び続柄であるので、本号ただし書ロ及びハに該当しないし、当該情報を被診察者が知ることは通常想定できないので、本号ただし書イにも該当しない。
さらに、被診察者の意思にかかわらず身体的自由を拘束せしめる、措置入院制度の性質上、本件陳述者と異議申立人との間にその陳述内容をめぐり種々の軋轢や紛争を生じさせる可能性を否定できないところから、本号ただし書ニ該当性を認めることは困難である。
よって、本号ただし書の適用可能性は否定されることから、当該情報は不開示が相当である。
イ別表7、8、16、23及び25の部分について
当該情報は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものである。
しかしながら、当該情報は異議申立人の家族構成等や、自らを扶養する義務ある者の住所、氏名、性別等であることから、事実上の慣習として、異議申立人は知ることができる情報であると思われる。
よって、当該情報は本号ただし書イに該当することから、本号該当性は否定され、開示が相当である。
ウ別表9の部分について
当該情報は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものである。
また、本号ただし書イ及びロに該当する事情も見受けられない。
よって、本号ただし書の適用可能性は否定されることから、当該情報は不開示が相当である。
エ別表11の部分について
当該情報は、陳述者が所属する組織名等が記載されているに過ぎず、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものとは言えない。
よって、本号該当性が否定され、開示が相当である。
オ別表12の部分について
当該情報は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものである。
また、本号ただし書ハの「公務員等の氏名」ではあるものの、「警察職員であって規則で定めるものの氏名」であることから、本号ただし書の適用可能性は否定され、不開示が相当である。
本号は、法人等及び事業を営む個人の正当な利益が害されることを防止するために定められた不開示情報である。
実施機関は本号に該当する情報として、別表13及び29の部分を挙げている。
当該情報は、異議申立人を移送した際に使用した移送委託契約タクシー会社名であるから、「法人等の当該事業に関する情報」と言える。
しかし、当該情報を開示することにより、例えば当該タクシー会社のノウハウ、信用等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは言い難い。
よって、当該情報は本号に該当せず、開示が相当である。
本号は、事務又は事業の適正な遂行を確保するために定められた不開示情報である。
ア診察をした指定医の氏名等
指定医が行う診察、診断は、精神保健法に基づく措置入院の要否を即時に判断するための行政処分としての性格を有する一時的な行為であって、病状の改善という共通の目的のために将来にわたって被診察者と医師とが相互に信頼、協力関係にある通常の治療行為とは異なり、指定医がその後に被診察者の治療を行うことが皆無であり、診断の結果、被診察者の意思にかかわらず、措置入院という身体的自由を拘束せしめる状況を考慮すれば、両者は一種の緊張関係に置かれているものと考えることができる。
そうすると、指定医の氏名等を開示した場合、指定医と異議申立人との間に診断内容をめぐり種々の軋轢や紛争を生じさせる可能性を否定することはできない。そして、被診察者とのトラブルを未然に避けるために、記載の内容が簡略化されるなど、診断内容が形骸化され、ひいては適正に措置入院命令を発動することができなくなり、精神保健福祉事業の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあることは否定できない。
よって、診察をした指定医の氏名等は本号に該当する。
したがって、別表6、15、20、22、24及び27の部分は不開示が相当である。
イ診断内容
上記で述べたとおり、指定医と被診察者は一種の緊張関係に置かれていることに鑑みれば、当該情報を開示した場合、診断内容に対する不満や誤解を生ぜしめ、開示の結果かえって本人の病状に悪影響を及ぼす可能性があるほか、被診察者とのトラブルを未然に避けるために、診断書の記載が形骸化する可能性がある等精神保健福祉事業の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあることは否定できない。
よって、診断内容は本号に該当する。
したがって、別表1、3、4、5、17、19、21及び28の部分は不開示が相当である。
ウ別表14の部分
当該情報を開示した場合も支障が生ずる旨、実施機関は主張する。
しかし、当該情報は具体的な指定医氏名を記載しているわけではなく、指定医氏名を開示した場合と同列に論じることはできない。
そして、当該情報は本件の指定医について補足的な説明を付したものに過ぎず、指定医の氏名等を不開示にすれば、指定医が誰であるかを推知することはできないと思われるので、前述したような、開示することにより精神保健福祉事業の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは言い難い。
よって、当該情報は本号に該当せず、開示が相当である。
エ別表18の部分
「措置入院のための移送記録票」中の「移送に関する告知」欄を開示したことにより結果として、当該情報とほぼ同内容の情報を異議申立人にすでに開示していることから、当該情報を開示することにより精神保健福祉事業の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは言い難い。
よって、当該情報は本号に該当せず、開示が相当である。
オ別表26の部分
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による精神障害者の申請・通報等の結果について(報告)」中の「診察場所(立会)」欄を開示したことにより結果として、当該情報と同内容の情報を異議申立人にすでに開示していることから、当該情報を開示することにより精神保健福祉事業の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは言い難い。
よって、当該情報は本号に該当せず、開示が相当である。
以上のことから、「1審議会の結論」のとおり判断する。
なお、異議申立人及び実施機関双方のその他の主張は、本件文書を開示すべきか否かの結論に、直接影響を及ぼすものではない。
審議会の処理経過は別紙のとおりである。
番号 |
【文書名】 |
【本件決定における不開示箇所】 |
【審議会の結論】 |
---|---|---|---|
1 |
措置入院に関する診断書 |
「病名」欄 |
不開示が相当 |
2 |
「主たる陳述者氏名と続柄」欄 |
不開示が相当 |
|
3 |
「問題行動」欄 |
不開示が相当 |
|
4 |
「現在の病状又は状態像」欄 |
不開示が相当 |
|
5 |
「診察時の特記事項」欄 |
不開示が相当 |
|
6 |
精神保健指定医氏名と印影 |
不開示が相当 |
|
7 |
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定に基づく事前調査書 |
「現に本人の保護の任に当たっている者」欄 |
開示が相当 |
8 |
「1.家族の状況、家族構成、生活歴等」欄 |
開示が相当 |
|
9 |
「2.申請・通報等をされた原因、問題行動、現在の状態等」欄 |
不開示が相当 |
|
10 |
「4.事前調査にあたっての陳述者」欄のうち1文字目から9文字目 |
不開示が相当 |
|
11 |
「4.事前調査にあたっての陳述者」欄のうち10文字目から20文字目及び23文字目 |
開示が相当 |
|
12 |
「4.事前調査にあたっての陳述者」欄のうち21文字目から22文字目 |
不開示が相当 |
|
13 |
措置入院のための移送記録票 |
「搬送の概要」欄 |
開示が相当 |
14 |
「同乗者の氏名」欄のうち括弧書きの部分 |
開示が相当 |
|
15 |
「同乗者の氏名」欄のうち括弧書き以外の部分 |
不開示が相当 |
|
16 |
「扶養義務者」欄 |
開示が相当 |
|
17 |
措置入院のための移送に関する診察記録票 |
「症状」欄 |
不開示が相当 |
18 |
「告知」欄のうち1文字目から8文字目 |
開示が相当 |
|
19 |
「告知」欄のうち9文字目以降 |
不開示が相当 |
|
20 |
精神保健指定医氏名と印影 |
不開示が相当 |
|
21 |
「その他の特記事項」欄 |
不開示が相当 |
|
22 |
指定医による診察命令書 |
宛名 |
不開示が相当 |
23 |
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による診察の実施について(通知) |
宛名 |
開示が相当 |
24 |
精神保健指定医氏名 |
不開示が相当 |
|
25 |
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第27条第1項の規定による精神保健指定医の診察結果について(通知) |
宛名 |
開示が相当 |
26 |
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定による精神障害者の申請・通報等の結果について(報告) |
「指定医氏名」欄のうち括弧書きの部分 |
開示が相当 |
27 |
「指定医氏名」欄のうち括弧書き以外の部分 |
不開示が相当 |
|
28 |
「病名」欄 |
不開示が相当 |
|
29 |
「委託車両使用の有無」欄 |
開示が相当 |
年月日 |
処理内容 |
---|---|
平成18年4月25日 |
諮問書の受理 |
平成18年6月2日 |
実施機関の理由説明書受理 |
平成18年10月16日 |
審議(第145回審議会) |
平成19年4月16日 |
審議(第152回審議会) |
平成19年5月21日 |
審議(第153回審議会)実施機関口頭理由説明 |
平成19年6月18日 |
審議(第154回審議会) |
平成19年9月10日 |
審議(第156回審議会) |
平成19年10月15日 |
審議(第157回審議会) |
平成19年11月19日 |
審議(第158回審議会) |
答申第82号(平成19年12月3日付け)(PDF:135KB)
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