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更新日:令和5(2023)年8月2日
ページ番号:23570
答申第100号
平成22年6月15日
千葉県教育委員会委員長 様
千葉県個人情報保護審議会
会長 原田 三朗
異議申立てに対する決定について(答申)
平成20年2月4日付け教職第5437号による下記の諮問について、別添のとおり答申します。
記
平成17年11月21日付けで異議申立人から提起された、平成17年11月2日付け教職第332号の2で行った自己情報部分開示決定に係る異議申立てに対する決定について
諮問第81号
|審議会の結論|異議申立ての経緯|異議申立人の主張要旨|実施機関の説明要旨|審議会の判断|審議会の処理経過|
千葉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が、平成17年11月2日付け教職第332号の2で自己情報部分開示決定(以下「本件決定」という。)した「請求者本人に係る『勤務評定書』(平成17年9月1日付け)」及び「『勤務評定報告書』(平成17年9月1日付け)のうち請求者本人に係る部分」(以下「本件文書」という。)について、千葉県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)は、次のとおり判断する。
本件文書は、全て開示すべきである。
異議申立人は、平成17年10月18日付けで実施機関に対し、千葉県個人情報保護条例(平成5年千葉県条例第1号。以下「条例」という。)第16条第1項の規定により、「千葉県立○○高校から教育委員会(教育庁)に行われた請求人に関する全ての情報(事故報告書を含む)。2005年4月1日より本請求収受日までの分 メモ等全て含む」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
本件請求に対して実施機関は、対象となる行政文書を特定した上で、本件文書については、「A職務の状況」、「B服務の状況」中の「服務の態度」、及び「E概評」に係る評定部分は条例第17条第6号に該当するとして不開示とし、その他の部分(「B服務の状況」中の「出勤状況」等)は開示として本件決定を行ったため、異議申立人は、平成17年11月21日付けで実施機関に対し本件決定の取消しを求めて異議申立てを行ったものである。
なお、実施機関は、本件請求に係る行政文書のうち、本件文書以外の行政文書については別途開示決定又は不開示決定(保存期間経過による廃棄のため)を行っている。
本件決定の取消しを求めるものである。
異議申立人が、異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての理由は、概ね以下のとおりである。
ア 実施機関は本件文書の不開示理由を「当該事務若しくは将来の同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため」と、自らの事務遂行能力の不足を請求者に転嫁している。この主張はなんら具体的ではなく従って実証的でもなく見苦しい限りである。
イ 実施機関は、本件文書は「被評定者に対し不利益な評価を含めありのままの事実及び評価を記載している文書」であり、開示されると「評価への反論や非難をおそれ結果的に公平かつ客観的な評価がされなくなるおそれがある」と主張するが、ありのままの事実及び評価を記載しているなら「反論や非難」を恐れる必要は全く無い。一部職員に有利に作用するよう捏造されているがゆえに、開示された暁には「公平かつ客観的な評価がされなくなる」のである。
ウ 実施機関は、評価が間違うことを想定し被評定者の訂正権を放棄させようとしている。過去において、実施機関は教職員の自己情報訂正要求に従って勤務評定の内容を訂正した事実がある。このように実施機関が作成する勤務評定関連情報は不正確で恣意的である。
エ さらに実施機関は「公平かつ客観的な評価が困難となり、県教育委員会に必要な情報が十分伝わらず、勤務評定制度そのものの遂行に支障を及ぼすおそれがあり、さらにその他の人事管理事務にも支障をおよぼすおそれがある」と、評定を行う学校管理者の評価能力が欠けると主張を重ねる。現在行われている評価行為自体がすでに崩壊していることを認めただけの主張である。
オ 社会常識上、勤務評価は被評価者の能力向上を目指して行われるべきものであり、従ってその評価内容こそ、評価者及び被評価者が共有すべきものである。
本件請求の対象は、「勤務評定書」(平成17年9月1日付け)、「勤務評定報告書」(平成17年9月1日付け)のうち異議申立人に係る部分であり、このうち、「A職務の状況」、「B服務の状況」中の「勤務の態度」、及び「E概況」の評定結果について、条例第17号第6号に該当するものとして不開示としている。
勤務成績の評定は、開示されないことを前提に被評定者に対し不利益な評価を含めありのままの事実及び評価を記載している文書であり、仮に本件文書が開示されると、評定者は被評価者からの反論や非難をおそれ、不利益な記載を避けようとするなどの心理的影響により、結果的に公平かつ客観的な評価がされなくなるおそれがある。
また、被評価者が評価は間違いであるとして上司に不信感等を抱いたり、その評価の訂正を要求して上司との間に対立関係を生じさせ、所属長による指導などを困難にし、職場内の信頼関係を失わせ当該所属の業務遂行能力を低下させるおそれがある。
異議申立人は、「実施機関の不開示理由は自らの事務遂行能力の不足を請求者に転嫁している。なんら具体的ではなく従って実証的でもない」と主張するが、前述のとおり開示することによりかえって安易に寛大な評価をしてしまう評価者が出現し結果的に公平かつ客観的な評価が困難となり、教育庁の人事担当者に必要な情報が十分伝わらないことで勤務評定制度そのものの遂行に支障を及ぼすおそれがあり、さらにその他の人事管理事務にも支障を及ぼすおそれがあるものである。
以上から、本件文書の不開示部分は条例第17条第6号に該当するため本件決定を行ったものである。
地方公務員法第40条第1項で定める勤務評定は、県立学校においては、千葉県立学校職員の勤務成績の評定に関する規則第6条の規定により、職員の所属する学校の校長が行うこととされている。
対象文書は、このような制度の中、千葉県立○○高等学校が実施機関に提出した、異議申立人に係る平成17年9月1日付けの勤務評定書及び勤務評定報告書である。
本号は、県の機関や他の地方公共団体等の事務又は事業に関する情報であって、開示することにより当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものは不開示とすることを定めたものである。
実施機関は本号該当性について、(1)開示されないことを前提に評価等が記載されている本件文書を全て開示することとなれば、評価者が被評価者からの非難や反論をおそれること等により結果的に公平かつ客観的な評価がされなくなるおそれがあり、また、(2)被評価者が評価は間違いであるとして上司との間に対立関係が生じ職場内の信頼関係が失われ当該所属の業務遂行能力を低下させるおそれがあり、さらに、(3)県教育委員会の人事担当者が正確な人事評価情報を把握できず勤務評定だけでなくその他の人事管理事務にも支障を及ぼすおそれがあると主張するので、以下検討する。
ア 勤務評定書を全て開示した場合の事務事業の支障性については、実施機関は過去の同種の諮問事案においても同様の趣旨の主張をしている。これに対し審議会は、当該事案の答申(平成14年11月28日付け答申第39号)において、当時の実施機関の運用実態を考慮するとこれらの主張を否定することは困難として勤務評定書の評価情報を開示することは認められないとしつつ、「個人情報保護制度の制度趣旨に鑑みれば、開示を前提として勤務成績を評定し、活用していくための制度上の条件整備が必要である」とも言及していたところである。
イ ところで、人事評価制度については、ここ数年来の公務員制度改革の流れの中、国及び各地方公共団体において公正で納得性の高い新制度が検討・導入されているところであり、実施機関においては、従来の勤務評定に替わる新制度として「業績評価」の導入準備が進められている。
これは、職員の能力開発・人材育成に重点を置いたフィードバック型の評価制度であり、被評価者への開示を前提としている点において、従来の勤務評定とは異なっている。実施機関によれば、被評価者本人から希望があれば評価結果の開示を行うほか、総合評価が低い場合(AからDまでの4段階評価のうちC又はD評価の場合)には希望の有無にかかわらず被評価者への開示が義務付けられている。
業績評価の導入については、平成15年度に「新しい教職員人事管理の在り方に関する懇談会」から意見を聴いた上で取組みを開始し、平成16年度から評価方法等の検討を行った上で平成18年度から管理職(校長・教頭等)について試行を開始し、管理職以外の職員(教諭・講師等)についても平成19年度からの評価者研修を経て平成21年度から試行を開始したところであり、今後、正式に実施となった段階で従来の勤務評定は廃止する予定とされている。
ウ 従来の勤務評定と業績評価の関係について実施機関は、業績評価は新たに作られる制度であり、従来の勤務評定とは別の物であると説明しているが、審議会において業績評価の様式等を確認したところ、業績評価と従来の勤務評定は、職務や服務の状況を段階方式で評価する点においては共通しており、評価情報として同種の性質を有していると見受けられる。
さらに、前記イのとおり、業績評価は従来の勤務評定に替わり地方公務員法第40条に基づく勤務成績の評定として導入される予定であることからすれば、業績評価と従来の勤務評定は、人事評価制度上の位置付けにおいても共通しているものと解される。
エ そうすると、本件決定時(平成17年11月)において、前記アのとおり答申先例で審議会が必要と言及した「開示を前提とした勤務成績を評定し活用するための制度上の条件整備」を自ら進めている状況にもかかわらず、同種の勤務評定書の評価情報について、実施機関が従前と同様の開示支障性を理由として不開示を継続することは、個人情報保護制度の趣旨からして疑問があると言わざるを得ない。
オ 確かに、評定者が評定するに当たり、いかに客観的に評価しようとしても主観的要素を排除することは困難であるため、実施機関が主張するように、評価者と被評価者の見解の相違により両者の間に感情的な対立が生じる等のトラブルが発生する可能性は一般的には否定できるものではないが、審議会が本件文書を見分したところ、不開示部分は段階評価の単純な結論としての評価情報に過ぎず、これを開示したとしても前述のようなトラブルが発生する可能性は極めて低いものと考えられる。
そもそも、同様なトラブルは従来の勤務評定と同種の評価を行う業績評価の運用下でも予想されることであり、現に本件決定時において業績評価の導入を事実上決定し、評価情報を不開示から開示する方針へと転換した状況にある以上、仮にそのようなトラブルが生じたとしても、それは人事評価制度の運用に伴う問題として実施機関が自ら解決していくべきものであることから、本号に規定する事務事業の支障とは言い難い。
また、校長等は管理職として職員を公正に評価することを職責上要求されていることからすれば、評価者が被評価者からの非難や反論をおそれることで公平な評価がされなくなるとの主張についても、評価情報を開示する方針へ転換した状況においては理由がないと言うべきであり、そうすると、人事担当者が正確な評価情報を把握できなくなるとの主張についても認めることはできない。
カ 以上のことから、本件文書を全て開示したとしても、勤務評定事務等の適正な遂行に支障が生ずるおそれがあるとは認められず、本号該当性は否定される。
キ なお、前記イのとおり平成19年度から管理職の評価者研修が毎年実施され、平成21年度からは管理職以外の職員(教諭・講師等)についても業績評価の試行が開始されている。また、この試行に伴い、本人への開示方法等について規定した「公立学校職員の業績評価開示要領」が平成21年4月から施行されるとともに、平成22年3月には県立学校における被評価者のための苦情処理制度も構築されたところである。
これらの導入経過からすれば、実施機関においては、人事評価制度を円滑に運用していくために、勤務評定書を開示した場合に予想されるトラブル(評価者が非難等をおそれ公正な評価がされなくなる、評価結果の見解の相違による対立が生じる等)と同様の事態を想定した上で、それらの問題を解決又は回避できるよう具体的な対策を講じつつ業績評価の導入を進めている状況にあることから、本件決定時以降の状況においては、勤務評定書の開示により前述のようなトラブルが生じる可能性自体が、業績評価の導入の進行に伴いさらに減少しているものと考えられる。
以上のことから、「1 審議会の結論」のとおり判断する。
異議申立人及び実施機関双方のその他の主張は、本件決定の適否に関する審議会の判断に影響を及ぼすものではない。
審議会の処理経過は下記のとおりである。
年月日 |
処理内容 |
---|---|
平成20年2月4日 |
諮問書の受理 |
平成20年5月2日 |
実施機関の理由説明書受理 |
平成20年7月15日 |
異議申立人の意見書の受理 |
平成21年3月16日 |
審議(第173回審議会) |
平成21年4月13日 |
審議(第174回審議会) |
平成21年5月18日 |
審議(第175回審議会) |
平成21年6月22日 |
審議(第176回審議会) |
平成21年7月13日 |
審議(第177回審議会) |
平成21年9月7日 |
審議(第178回審議会) |
平成21年10月26日 |
審議(第179回審議会) |
平成21年11月16日 |
審議(第180回審議会) |
平成21年12月21日 |
審議(第181回審議会) |
平成22年1月18日 |
審議(第182回審議会)実施機関口頭理由説明 |
平成22年2月15日 |
審議(第183回審議会) |
平成22年3月15日 |
審議(第184回審議会) |
平成22年4月19日 |
審議(第185回審議会) |
答申第100号(平成22年6月15日付け)(PDF:26KB)
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