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更新日:令和4(2022)年10月13日
ページ番号:23611
答申第52号
平成17年3月22日
千葉県教育委員会委員長伊藤潔様
千葉県個人情報保護審議会
会長原田三朗
異議申立ての決定について(答申)
平成12年12月27日付け教指第1895号による下記の諮問について,別添のとおり答申します。
記
平成11年5月12日付けで異議申立人から提起された平成11年3月19日付け○○第373号の2で行った「平成11年度○○高校入学試験に係る調査書」の自己情報非開示決定に係る異議申立てに対する決定について
諮問第44号
|審議会の結論|審議会への諮問までの経緯|申立人の主張要旨|実施機関の主張要旨|審議会の判断|審議会の処理経過|
千葉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が、平成11年3月19日付け○○第373号の2で非開示決定した異議申立人(以下「申立人」という。)の請求に係る「平成11年度千葉県公立高等学校入学者選抜に係る調査書」(以下「本件調査書」という。)について、千葉県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)は、次のとおり判断する。
(1)本件調査書のうち、次の欄以外の部分を開示すべきである。
(2)実施機関が行った「教科の学習の記録」中の「所見」欄並びに「行動の記録」中の「評定」欄及び「所見」欄を非開示とした決定は妥当である。
申立人は、平成11年3月5日付けで実施機関に対し、千葉県個人情報保護条例(平成5年千葉県条例第1号。以下「条例」という。)第14条第2項の規定により、申立人の子の個人情報が記録された本件調査書の開示請求を行った。
この開示請求に対して実施機関は、本件調査書は条例第15条第4号に該当し、個人に対する評価及び判断を伴う試験の事務事業に関する個人情報であり、開示することにより、当該事務事業又は将来の同種の事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずると認められ、また同条第8号に該当し、調査書を作成した中学校との信頼関係が損なわれ、事務事業の実施の目的が失われるおそれがあり、また事務事業の適正な執行に著しい支障が生じるとして、本件非開示決定を行った。
これに対し、申立人は平成11年5月12日付けで実施機関に対して異議申立てを行い、実施機関は平成12年12月27日に審議会へ諮問したものである。
異議申立ての趣旨は、実施機関が平成11年3月19日付け○○第373号の2で行った本件調査書の非開示決定の取消しを求めるものである。
申立人が主張する異議申立ての理由は、概ね以下のとおりである。
ア入学者選抜試験の自己採点の結果から不合格とは思えないので、なぜ不合格になったのかを知りたい。
調査書の本人開示は、過去の判例にあった通り時代の流れであり、また知る権利の対象である。
イ条例第15条第4号及び第8号該当性について
実施機関の自己情報非開示決定の理由では、これらの条項に該当することが納得できない。
平成11年度千葉県県立高等学校入学者選抜の学力検査等による入学者選抜(以下「本件入学者選抜」という。)は、実施機関が定めた「平成11年度千葉県公立高等学校入学者選抜実施要項」(以下「実施要項」という。)等に基づいて各県立高等学校(以下「各学校」という。)において実施されたものである。調査書の様式や作成要領についてはこの実施要項に定められている。
各学校の校長は、この実施要項及び学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号。以下「規則」という。)第59条第1項の規定により、中学校長から規則第54条の4(当時。現行規則では第54条の6。以下同じ。)の規定により送付された調査書及び選抜のための学力検査の成績を資料とし、志願者の各学校の教育を受けるに足る能力、適性等を総合的に判定して、入学許可候補者の決定をその権限及び責任の下に厳正に行っている。
申立人の子が志願した千葉県立○○高等学校(以下「○○高校」という。)においても、平成11年2月25日及び26日に県下一斉に行われた学力検査後、校長、教頭及び教諭全員による入学許可候補者決定のための会議を行い、最終的には校長が総合的に判定して入学許可候補者を決定し、平成11年3月4日に発表している。
本件個人情報は、本件入学者選抜の事務事業に関する申立人の子の情報であり、本号でいう「個人に対する評価又は判断を伴う事務事業に関する情報」と認められる。
調査書は入学者選抜の資料であり客観性が求められることから、独自の記載要領により作成され、生徒の教育課程における指導に活用することを目的としている通知表や生徒指導要録とは、作成目的や記載要領を異にしている部分がある。この入学者選抜資料としての調査書の客観性は、本人への開示がなされないという前提のもとでこそ維持できるものであり、もし開示されることとなれば記載責任者である教員には本人に不利となるような記載を避ける心理が働き、その結果、調査書の記載内容が形骸化し、入学者選抜資料としての客観性や公正さが損なわれるおそれが出てくる。
また、開示した場合、入学者選抜の結果なども加味されて、その評定内容や所見欄の記載について、評価した者が故意に不利益な記載をしたのではないかとの誤解や憶測にかられることも否定できず、記載責任者への不信感や遺恨を抱き、結果として記載責任者の教員と開示を受けた生徒との信頼関係を損なうような事態が生ずるおそれもある。
よって、将来の本県の県立高等学校の入学者選抜に関する事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずる可能性がある。
従って、本号に該当する。
本件個人情報は実施機関が行う事務事業に関する個人情報であり、開示することにより、実施機関と調査書を作成した中学校との信頼関係が損なわれ、事務事業の実施の目的が失われるおそれがあり、また、当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずる。
また、調査書の客観性は、本人への開示がなされないという前提のもとでこそ維持できるものであり、もし開示されることとなれば記載責任者である教員には本人に不利となるような記載を避ける心理が働き、その結果、調査書の記載内容が形骸化し、入学者選抜資料としての客観性や公正さが損なわれ、入学者選抜の実施の目的が失われるおそれがある。
さらに、ある受検生が不合格となった場合、当該受検生やその保護者が調査書の記載内容と合否の判定とを結びつけて、調査書の記載内容が不合格になった原因であるとの誤解を生む下地ともなりかねず、それが、記載責任者の教員と開示を受けた生徒との信頼関係を損ねるばかりでなく、他の不合格者へも波及し、無用なトラブルが拡散して生ずるような可能性も否定できない。合否の判定をめぐるトラブルは、今後の入学者選抜の実施や入学許可候補者の決定に関する事務事業にも少なからぬ影響を与えることが予測される。
よって、本県の入学者選抜に係る事務事業の実施の目的が失われるおそれがあり、併せて将来の入学者選抜に係る事務事業の円滑な執行に著しい支障が生じるおそれがある。
従って、本号に該当する。
本件調査書は、本件入学者選抜において、○○高校を志願し、受検した申立人の子に関するものであり、申立人の子の個人情報が記載されている。
規則第59条第1項の規定によると、調査書は学力検査の成績等とともに入学者選抜のための資料であるとされており、調査書は、入学者選抜を実施する上で、学力検査で把握できない学力や学力以外の生徒の個性を多面的にとらえるための重要な資料であると認められる。
本件調査書は「教科の学習の記録」、「出欠の記録」、「運動能力測定の記録」、「健康診断の記録」、「行動の記録」、「特別活動等の記録」等で構成されており、様式は別紙1(PDF:58KB)のとおりである。
条例は、第1条で県が保有する個人情報の開示等を請求する権利を明らかにし、第14条では何人に対しても実施機関が管理している自己の個人情報の開示を請求できる権利を認め、実施機関が開示請求者に開示することを原則とし、当該個人情報が第15条第1号から第8号までに該当しない限り開示しなければならないこととしている。このことは開示請求者が未成年者等の法定代理人であるときも同様である。
実施機関は、開示請求された本件調査書が条例第15条第4号(評価等情報)及び第8号(行政執行情報)に該当するものとして非開示とした。
そこで、審議会は本件調査書が各号に該当するかどうか判断する。
ア本号は、「指導、相談、選考、試験、診療その他の個人に対する評価又は判断を伴う事務事業に関する個人情報であり、開示することにより、当該事務事業又は将来の同種の事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずると認められるとき。」と規定している。これは、指導、相談、選考、試験、診療その他の評価等の適切な執行を確保するための規定であり、これらの事務事業の性格に着目し、これらの事務事業に関する情報で、請求者に開示することにより、当該事務事業の適切な執行に著しい支障を生じるおそれのあるものは、開示しないことができると定めたものである。
イ本件調査書は、作成時点までの申立人の子の成績等が総合的に記載されたものであるから、本号前段に該当する。
ウ次に、本号後段の条件である事務事業への支障について以下検討する。
(ア)本件調査書のうち「教科の学習の記録」中の「所見」欄並びに「行動の記録」中の「評定」欄及び「所見」欄
実施機関の説明によると、これらの欄は、作成者の観察力、洞察力、理解力等に基づいて記載し、また本件調査書作成当時においては、調査書は開示されないという前提の下で記載していたとのことである。
そうすると、一般的にはこれらの欄に記録された情報を開示することとした場合には、記載の有無にかかわらず、開示を受けた生徒等の誤解や不信感、無用の反発等を招く場合を生じるおそれがあり、そのような事態に至ることを懸念して、作成者がありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載にならざるを得なくなる可能性があることは否定できない。
その結果、調査書の記載内容が形骸化、空洞化し、入学者選抜資料としての重要性が損なわれ、入学者選抜事務の適正な執行が阻害されるおそれがあることは理解できる。
しかし、本件調査書が使用された後、実施要項が改定され、現在では調査書は本人開示を前提として作成されている。したがって、本件調査書を現在開示することが、現在の時点で前述のような事務事業執行への阻害を生じる可能性があるかどうかについても検討しなければならない。
本件調査書を全面的に開示すれば、本人開示を前提としない実施要項によって作成されたすべての調査書の開示請求に対しても、開示しなければならなくなる。その結果、作成者と当時の生徒との間で前述のような誤解や不信感、反発が生じるようなことがあれば、作成者の多くが現在も調査書の作成事務に従事していることを考慮すると、現在の生徒との関係にも悪影響を及ぼす可能性を否定することはできない。
よって、これらの欄に記録された情報を開示すると、入学者選抜に関する事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずるとする実施機関の主張は理由があると認められ、本号後段に該当する。
(イ)本件調査書のうち(ア)以外の部分
本件調査書の内容を見分すると、これらの欄には客観的事実や、本人が知り得るであろう評価が記載されている。
これらの欄の記載は、作成者の主観的要素が入る余地がないもの、又は比較的少ないものであると認められる。そうするとこれらの欄に記録された情報を開示することとしても、上記(ア)に記載したような、入学者選抜事務の適正な執行が阻害されるおそれがあるとは考えられない。
よって、入学者選抜に関する事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずるとは認められず、本号後段に該当しない。
エ従って、(ア)は本号に該当し非開示が相当であり、(イ)は本号に該当しないものと判断する。
ア本号は、「交渉、取締り、立入検査、監査、争訟等に係る事務事業に関する個人情報であり、当該事務事業の性質上、開示することにより、実施機関と関係者との信頼関係が損なわれると認められるとき、当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の実施の目的が失われるおそれがあるとき、又は当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるとき。」と規定している。これは、実施機関が行う事務事業の中で、その事務事業の性質上、開示することにより、事務事業の関係者との信頼関係が損なわれるもの、事務事業の実施の目的が失われるおそれがあるもの、及び事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるものについて、開示しないことができることとしたものである。
イ5(3)イ(ア)のとおり「教科の学習の記録」中の「所見」欄並びに「行動の記録」中の「評定」欄及び「所見」欄については、条例第15条第4号に該当するので、本号該当性を判断するまでもなく非開示が相当である。よって、5(3)イの(ア)以外の部分についてのみ本号該当性を判断する。
ウ本号前段は、実施機関の事務事業を例示したものであり、本件入学者選抜は、本号前段に該当する。
エ次に、前述のとおり、5(3)イの(ア)以外の部分は、客観的事実や、本人が知り得るであろう評価が記載されている。そうするとこれらの欄に記録された情報を開示することとしても、開示を受けた生徒等の誤解や不信感、無用の反発等の事態が生ずることを懸念して作成者がありのままに記載することを差し控え、その結果、調査書の記載内容が形骸化、空洞化するとは考えられない。よって、調査書や学力検査の結果等に基づいて、各学校の教育を受けるに足る能力、適性等を総合的に判断し選考するという、入学者選抜に関する事務の実施の目的が失われるおそれがあるとは認められない。
また、これらの欄に記録された情報を開示することとしても、開示を受けた生徒等の誤解や不信感、無用の反発等の事態が生じるとは考えられないことから、無用な混乱が生じ、入学者選抜に関する事務の執行が阻害されるおそれはない。よって、入学者選抜に関する事務の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずるとも認められない。
なお、実施機関は、本件調査書を開示すると作成者と生徒との信頼関係が損なわれると主張しているが、本号においては、実施機関と作成者等関係者との信頼関係が損なわれるかどうかが問題であり、実施機関の主張は本号に該当しない。
よって、これらの欄に記録された情報を開示しても、本号後段に該当しない。
オ従って、これらの欄に記録された情報は本号に該当しないものと判断する。
以上のことから、「1審議会の結論」のとおり判断する。
なお、申立人及び実施機関双方のその他の主張は、本件調査書を開示すべきか否かの結論に、直接影響を及ぼすものではない。
当審議会の処理経過は別紙2のとおりである。
年月日 |
処理内容 |
---|---|
平成13年1月10日 |
諮問書の受理 |
平成14年2月5日 |
実施機関の理由説明書受理 |
平成15年8月26日 |
申立人の意見書受理 |
平成15年10月20日 |
審議(第108回審議会) |
平成15年11月17日 |
審議(第109回審議会)・・実施機関の口頭理由説明 |
平成15年12月15日 |
審議(第110回審議会)・・申立人の口頭意見陳述 |
平成16年1月19日 |
審議(第111回審議会) |
平成16年6月7日 |
審議(第118回審議会) |
平成16年10月18日 |
審議(第125回審議会) |
平成16年12月20日 |
審議(第126回審議会) |
平成17年2月21日 |
審議(第128回審議会) |
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