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更新日:令和4(2022)年10月13日
ページ番号:23607
答申第47号
平成15年5月29日
千葉県知事堂本暁子様
千葉県個人情報保護審議会
会長柴田啓次
異議申立ての決定について(答申)
平成14年4月2日付け障第13号による下記の諮問について,別添のとおり答申します。
記
平成14年3月14日付けで異議申立人から提起された平成14年3月14日付け障第1081号で行った「措置入院に関する診断書」の自己情報部分開示決定に係る異議申立てに対する決定について
諮問第46号
|審議会の結論|異議申立ての経緯|異議申立人の主張要旨|実施機関の説明要旨|審議会の判断|審議会の処理経過|
千葉県知事(以下「実施機関」という。)が,平成14年3月14日付け障第1081号で部分開示決定した異議申立人の請求に係る「措置入院に関する診断書」(以下「本件診断書」という。)について,千葉県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)は,次のとおり判断する。
実施機関が,本件診断書に係る部分開示決定において非開示とした,次の部分は開示すべきである。
なお,実施機関が行ったその他の部分開示決定は妥当である。
異議申立人は,平成14年3月6日付けで実施機関に対し,千葉県個人情報保護条例(平成5年千葉県条例第1号。以下「条例」という。)第16条第1項の規定により,本件診断書の開示請求を行った。
この開示請求に対して実施機関は,本件診断書は条例第15条第2号及び第4号に該当し,開示請求者以外の個人の情報が含まれ,また,本件診断書の内容は,個人に対する評価又は判断を伴う事務事業であり,開示することにより当該事務事業の適正な執行に著しい支障が生じると認められるとして,部分開示の決定を行ったため,異議申立人は,平成14年3月14日付けで実施機関に対して異議申立てを行ったものである。
異議申立ての趣旨は,実施機関が平成14年3月14日付け障第1081号で行った本件診断書の部分開示決定の取消しを求めるものである。
異議申立人が主張する異議申立ての理由は,概ね以下のとおりである。
ア自分には,本件診断書の記載がどのようになっているのかを知る権利がある。
何の犯罪行為又はそれに準ずる行為も犯していないのに,なぜこのような仕打ちを受けたのか疑問に思うのは当然であり,人権への配慮があれば当然開示されるべきである。
イ条例第15条第2号(第三者の個人情報)該当性について
(ア)開示されることにより,自分が精神保健指定医(以下「指定医」という。)に対し何らかの脅迫行為や危害を加えるなどということはあり得ず,指定医の権利利益を侵害するおそれはない。
(イ)指定医の氏名は,人権への配慮を考えれば当然開示されるべきであり,指定医が被診察者の人権を侵害するおそれがあるということに対する配慮がない。現に,自分はその人権侵害を受けている。
ウ条例第15条第4号(評価等情報)該当性について
(ア)実施機関の主張には,具体的にいかなる支障が生ずるのか説明がなく,到底納得できるものではない。
(イ)実施機関は,請求者に開示すると,(1)本人に悪影響を及ぼし,(2)記録作成者と本人との信頼関係を損ない,(3)記録作成者が正確な情報を記録できなくなる等の結果をもたらす場合に非開示とするとしているが,
本件診断書は,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「精神保健法」という。)第27条第1項の規定による,指定医の診察を受けた異議申立人の診断書であり,異議申立人に関する個人情報が記載されている。
精神保健法第29条第1項において,知事は同法第27条の規定による診察の結果,被診察者が精神障害者であり,その精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは,精神病院又は指定病院に入院させることができると規定されており,診察が必要と認められた場合には,指定医2名以上に依頼し速やかにその判定を行うこととされており,この措置は行政処分に当たる。
平成10年9月16日,異議申立人が隣家に対する迷惑行為を行ったとの隣家住民からの警察官通報に基づき,○○警察署内において指定医2名(以下「本件指定医」という。)による診察を行ったが,診察に際しては,異議申立人に対する診察の実施に係る説明及び告知と併せて,本件指定医及び診察に立ち会う職員の紹介を行い,診察を開始することについて,異議申立人の了解を得て行ったところである。
条例第15条では,個人情報の開示請求に対して,開示することが適当でないものであるときは,例外的に開示しないことができると規定されており,この規定に従い本件部分開示決定を行った。
なお,本件指定医は,それぞれ別個に診察,診断を行っており,対象文書である本件診断書は2通存在するが2通とも同様の取扱いとした。
本号では,開示しないことができる個人情報として,「当該個人情報に開示請求者以外の個人情報が含まれるとき。ただし,当該開示請求者以外の個人の権利利益を侵害するおそれがないときを除く。」と規定されている。
本件情報のうち,本号に該当するとして非開示とした個人情報は次のとおりである。
ア診察をした指定医の「氏名」及び印影
本件指定医は,知事が措置をするか否かを判断するための診察結果に基づき本件診断書を作成しており,本件指定医の氏名が開示された場合,本件指定医に対する悪感情から本件指定医やその周囲の者の生命,身体,財産その他の利益を侵害するおそれがあり,本号ただし書きにも該当しないところから,診察時に異議申立人に氏名を伝えていたとしても,非開示とした。
また,本件指定医の印影については,それが実印であった場合,開示することによりこの印影を基に偽造される可能性もあるところから,前記と同様に非開示とした。
イ「診察に立合った者」の氏名(本件診断書の場合は,電話及び文書により通知した者)
本件診察の場合,電話により診察の場における立ち合いを依頼したが,立合者が都合により立ち合えなかったところから,記録として本件診断書に連絡者及び連絡方法について記載した。
開示請求に基づき当該氏名を開示した場合,前記アの前段の場合と同様のおそれがあるところから非開示とした。
ウ診察に立ち合った職員の印影
前記アの後段の場合と同様のおそれがあるところから非開示とした。
本号では,開示しないことができる個人情報として,「指導,相談,選考,試験,診療その他個人に対する評価又は判断を伴う事務事業に関する個人情報であり,開示することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業の適正な執行に著しい支障が生ずると認められるとき。」と規定されている。
本件診断書のうち,本号に該当するとして非開示とした個人情報は次のとおりである。
ア項目
(1)「病名」
精神障害者であるか否か等を記載する。
(2)「生活歴及び現病歴」
被診察者の診察時までの生活状況や精神科の治療歴を含む病歴について記載する。
(3)「初回入院期間,前回入院期間及び初回から前回までの入院回数」
被診察者の精神病院への入院歴について記載する。
(4)「問題行動」及び「現在の病状又は状態像」
被診察者が,指定医の診察を受けるに至った経過及び今後予測される問題行動について,客観的に記載する。
(5)「診察時の特記事項」
上記(1)から(4)までの各項目以外に,措置入院の要否を判定する上で医学的な見地から必要と思われる事項について記載する。
イ非開示とした理由
本件診断書は,前述のとおり知事が措置を行うために必要とされ,その結果は被診察者に一面では不利益処分を課すこととなるものであるが,本件指定医は,医学的総合判断の根拠となる診断内容が被診察者に開示されることがないことを前提として本件診断書を作成している。
一般的な診察行為が,患者自身の意思又は家族等の勧めに応じて行われるものであるのとは異なり,本件の診察は,本人の意思とはかかわりなく,警察からの通報に基づき措置入院の要否を決定するための,一時的な診察,診断であり,治療を前提とした場合のように医師から病質について説明されることもない。したがって,本件診断書の開示だけを受けた場合,被診察者に診断内容の不満や誤解を生ぜしめ,本人に悪影響を及ぼすことも考えられる。
また,本件診断書が開示されるとした場合,指定医は,今後措置入院に係る診断に際して,診察の結果被診察者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼす精神障害のおそれがあると診断したとしても,被診察者からの他害の危険性を予測し,適正な診断事務を遂行しなくなるおそれが生じ,極端な場合には,医師が指定医となることを自ら回避し,事務事業そのものの執行に著しい支障を来す事態も考えられる。
したがって,前記ア(1)から(5)までの事項を開示することは,現在の事務事業の適正な執行が阻害されるとともに将来の同種の事業の執行にも著しい支障が生ずるといわざるを得ず,非開示としたものである。
条例第1条で規定するこの条例の制定目的である「個人の権利利益の保護」には,自己の秘密が公開されない利益や誤った情報,不完全な情報等によって自己に関して誤った判断がなされない利益,さらに自己の情報を知る利益等の広範な権利利益が含まれており,条例第14条の規定により開示請求された個人情報は,すべて請求者に開示するのが原則である。
ただし,開示請求された個人情報が第三者の利益あるいは行政の公正又は円滑な執行の確保等の公共の利益との調整等の観点から,本人であっても開示することが適当でないものであるときは,例外的に開示しないことができる場合として条例第15条各号が規定されている。
そこで審議会はこの考え方に沿って,本件診断書について実施機関が非開示の決定を行った部分について,以下判断する。
本件診断書は,○○保健所職員の依頼した本件指定医が,平成10年9月16日に異議申立人の診察を行った際の,同様の書式によるそれぞれ2通の「措置入院に関する診断書」であり,当該文書の構成は,「申請等の形式」,「申請等の添付資料」,「被診察者」,「病名」,「生活歴及び現病歴」,「初回入院期間,前回入院期間及び初回から前回までの入院回数」,「問題行動」,「現在の病状又は状態像」,「診察時の特記事項」,「医学的総合判断」,「精神保健指定医氏名」,「診察に立合った者」,「診察場所」,「診察日時」,「職員氏名」,「行政庁の措置」及び「行政庁メモ欄」からなっている。
なお,本件診断書の様式については,「精神衛生法等の一部を改正する法律による改正後の精神保健法の運用上の留意事項について(昭和63年5月13日付け健医精発第16号厚生省保健医療局精神保健課長通知)」に基づき規定されている。
本号は,開示することにより,開示請求者以外の第三者の権利利益を損なうことを防止するために定められた非開示情報である。
ア診察をした指定医の「氏名」及び印影
本件指定医の氏名は,開示請求者以外の個人情報であることは明らかであるから,本号ただし書きの適用可能性について検討する。
指定医が行う診察,診断は,精神保健法に基づく措置入院の要否を即時に判断するための行政処分としての性格を有する一時的な行為であって,病状の改善という共通の目的のために将来にわたって被診察者と医師とが相互に信頼,協力関係にある通常の治療行為とは異なり,指定医がその後に被診察者の治療を行うことが皆無であり,診断の結果,被診察者の意思にかかわらず,措置入院という身体的自由を拘束せしめる状況を考慮すれば,両者は一種の緊張関係に置かれているものと考えることができる。
したがって,本件指定医の個人情報を開示することにより,本件指定医と異議申立人との間にその診断結果をめぐり種々の軋轢や紛争を生じさせる可能性を否定できないところから,本件指定医の氏名を開示した場合,本件指定医の権利利益を侵害するおそれがないとは言えず,診察時の状況にかかわらず非開示が相当である。
なお,本件指定医の印影については,医師という社会的に認知された立場から,印影と入手可能な他の情報とを容易に照合することができ,当該個人を識別できる可能性の高い個人情報であると認められ,さらに,印影を顕出する印顆の証明用途との関連が不明であり,本件指定医の権利利益を保護するため非開示が相当である。
イ「診察に立ち会った者」の「氏名」(本件診断書の場合は,電話及び文書により通知した者)
本欄に記載されている氏名等について,開示請求者以外の個人の情報であることから,本号ただし書きの適用可能性について検討する。
本欄に記載されている開示請求者以外の第三者である個人は,実施機関から連絡を受けただけで,本件診察には立ち合ってはいなかったものと認められる。また,本件診断書の記載からは,開示請求者と当該個人は近親関係ないし被診察者と非常に近い関係にあるものと推定されるが,その親疎までは窺い知れず,種々の軋轢や紛争を未然に防止する観点から,前記アと同様に非開示が相当である。
なお,本欄におけるその他の記載については,個人情報であるとは認められず,開示することが相当である。
ウ診察に立ち会った職員の印影
当該印影については,実施機関が主張するように偽造により当該職員の財産権を侵害する可能性を否定するものではないが,それは通常の行政事務における危険性と何ら異なるものではなく,本件診断書上殊更に非開示とする理由はなく,開示することが相当である。
ア本号は,事務事業の性格に着目し,請求者に開示することにより当該事務事業の適切な執行に著しい支障が生じるおそれのあるものは,開示しないことを定めたものであり,これらを開示すると,本人に悪影響を及ぼすこと,記録作成者が正確な情報を記録できなくなること等の結果を防止するために定められた非開示情報である。
イ実施機関は,本件診断書のうち次の項目について本号に該当するとして非開示としている。
ウそこで,事務事業への支障について検討すると,
(ア)治療を目的とした一般的な診察と異なり,開示の結果かえって本人の病状等に悪影響を及ぼす可能性がある。
(イ)作成者である本件指定医は,診断書が開示されることがないことを前提として診断書を作成しており,被診察者への配慮を欠いた記載の可能性も否定できず,被診察者の指定医に対する不信感やトラブルを助長しかねない。
(ウ)さらに,開示を前提とすると,指定医は被診察者とのトラブルを未然に避けるため,診断書の記載が形骸化し,結果として本来の行政目的を達成できないことも十分予想される。
したがって,事務事業の適正な執行に著しい支障が生じることが認められる。
以上の観点から前記イについて判断すれば,(1)「病名」,(4)「問題行動」,「現在の病状又は状態像」及び(5)「診察時の特記事項」については,被診察者の病質や健康状態等に関する評価又は判断を伴う事務事業に該当し,非開示が相当である。
ただし,(1)「病名」の欄のうち,記載されていない部分及び(4)「問題行動」,「現在の病状又は状態像」の評価を記載することとされている様式部分は,項目に付された記号等を除き開示することが相当である。
その他の(2)「生活歴及び現病歴」及び(3)「初回入院期間,前回入院期間及び初回から前回までの入院回数」については,被診察者本人の陳述の記録及びそれに準じるもので,客観的な事実を記載したものであって,評価又は判断を伴うものではなく,開示することが相当である。
エなお,前記ウのとおり,(2)「生活歴及び現病歴」の開示に伴い,その欄中「主たる陳述者」が被診察者本人でない場合には,当該主たる陳述者の氏名は,「開示請求者以外の個人の個人情報」に該当し,前記(3)イと同様に非開示とすることが相当である。
また,同欄中に記録者である本件指定医の訂正印等の印影は,前記(3)アで判断したとおり,非開示が相当である。
以上のことから,「1.審議会の結論」のとおり判断する。
なお,異議申立人及び実施機関双方のその他の主張は,本件診断書を開示すべきか否かの結論に,直接影響を及ぼすものではない。
審議会の処理経過は別紙のとおりである。
別紙
年月日 |
処理内容 |
---|---|
平成14年4月2日 |
諮問書の受理 |
平成14年6月14日 |
実施機関の理由説明書受理 |
平成14年7月22日 |
異議申立人の意見書の受理 |
平成14年9月10日 |
審議(第96回審議会)・・・実施機関の口頭理由説明 |
同上 |
審議(第96回審議会)・・・異議申立人の口頭意見陳述 |
平成14年9月24日 |
異議申立人の追加意見書の受理 |
平成14年12月9日 |
実施機関の追加理由説明書受理 |
平成15年1月20日 |
審議(第100回審議会) |
平成15年2月24日 |
審議(第101回審議会) |
平成15年3月17日 |
審議(第102回審議会) |
平成15年4月21日 |
審議(第103回審議会) |
平成15年5月19日 |
審議(第104回審議会) |
答申第47号(平成15年5月29日付け)(PDF:158KB)
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