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更新日:令和5(2023)年8月2日

ページ番号:23581

答申第111号

答申第111号

平成23年3月28日

  千葉県人事委員会委員長 清水新次 様

千葉県個人情報保護審議会

会長  原田 三朗

 

異議申立てに対する決定について(答申)

 

  平成22年3月2日付け人委給第511号による下記の諮問について、別添のとおり答申します。

  平成22年2月1日付けで異議申立人から提起された、平成22年1月28日付け人委給第464号で行った自己情報部分開示決定に係る異議申立てに対する決定について


諮問第92号

答申第111号

1.審議会の結論2.異議申立ての経緯3.異議申立人の主張要旨4.実施機関の説明要旨5.審議会の判断6.附言7.審議会の処理経過

1.審議会の結

  千葉県人事委員会(以下「実施機関」という。)が平成22年1月28日付け人委給第464号で行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)について、千葉県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)は、次のとおり判断する。

  実施機関が不開示とした部分は、全て開示すべきである。

2.異議申立ての経

  異議申立人は、平成22年1月18日付けで実施機関に対し、千葉県個人情報保護条例(平成5年千葉県条例第1号。以下「条例」という。)第16条第1項の規定により、「2009年9月1日以降、請求人に関わる人事委員会が作成、収受したすべての文書等(教育委員会から収受した文書等も含む)。」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

  本件請求に対して実施機関は、対象文書の不開示部分は、条例第17条第6号ハに該当し、相談事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務若しくは将来の同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして、本件決定を行ったため、異議申立人は、平成22年2月1日付けで実施機関に対し異議申立てを行ったものである。

3.異議申立人の主張要

(1)異議申立ての趣旨

  本件決定の取消しを求めるものであるとの趣旨と解される。

(2)異議申立ての理由

  非開示部分の非開示の理由について納得のゆく説明が得られない。

  また、開示部分についても事実と異なる部分があるため。

4.実施機関の説明要

(1)対象文書について

  対象文書は、県立学校の教諭である異議申立人が勤務先の県立学校の上司の対応について平成21年11月24日及び平成22年1月14日に苦情相談を行った際に、実施機関において指名された職員(以下「職員相談員」という。)が作成した苦情相談報告書である。

(2)苦情相談制度及び苦情相談報告書について

 ア 苦情相談制度は、職員の勤務条件、勤務環境等に関する不平・不満・苦情等を解消することにより、職員が意欲を持って、安心して職務に専念できるようにして、公務能率の維持・向上を図っていくことが人事管理上重要であることから、これら勤務条件等に関する日常的・一般的な不平・不満や苦情について相談に応じ、内容に応じて制度の説明や助言を行い、必要に応じて職員と、任命権者及び所属長等(以下「当局」という。)との間をあっせんするなどして、適切な解決を図るための制度である。

 イ 苦情相談報告書は、職員からの苦情相談に関する規則(平成17年千葉県人事委員会規則第16号)第6条の規定により、相談に応じた職員相談員が作成した記録を実施機関に報告するものであり、苦情相談を行った職員(以下「申出人」という。)の所属・職・氏名、相談内容・要望、処理状況等を記載する。これに相談内容や対応状況等の詳細を記載した苦情相談カード及びその他の資料(申出人から実施機関に提出された書面等)を添付する。

(3)不開示理由について

 ア 不開示部分について

  平成21年11月24日付け苦情相談報告書に添付された苦情相談カードのうち、教育委員会の担当者へ事情確認を行った際及び異議申立人へ電話連絡を行った際の処理経過の一部については、当該部分を開示することにより、苦情相談事務若しくは将来の同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正若しくは円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、条例第17条第6号ハに該当するとして、不開示としたものである。

 イ 条例第17条第6号該当性について

  苦情相談の円滑な処理や適切な解決を図っていくためには、関係者の詳細な事情確認や意見・判断を踏まえて、あわせて関係者間に信頼関係や協力関係を築きながら、個別の事案ごとに応じて段階的に検討・調整を図っていくことが必要である。このため、相談途中の記録には、当局の担当者の調査状況、個人的見解、今後の方針や職員相談員の判断、今後の方針が含まれることとなり、これらを開示することとした場合には、今後、次のようなおそれが考えられる。

  • (ア)当局の担当者が申出人からの誤解や非難等を恐れることで、実施機関が詳細な事情確認や意見聴取ができなくなる。
  • (イ)職員相談員が具体的な意見・今後の方針を相談記録に記載することに躊躇するおそれがあるなど、記録が一般的・抽象的なものとなり、個別の事案に即して具体的な記録から適切な検討・調整を行うことができなくなる。
  • (ウ)苦情相談の当事者(実施機関・申出人・当局)の間で円滑な信頼関係や協力関係を築けなくなる。

  よって、本件の不開示部分を開示した場合には苦情相談業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため、条例第17条第6号に該当するものである。

(4)異議申立ての理由について

  異議申立人は、非開示部分の非開示の理由について納得のいく説明が得られないと主張するが、不開示とした部分は上記(3)のとおり条例第17条第6号ハに該当するものである。

5.審議会の判

(1)対象文書について

  実施機関は、上記4(1)のとおり、対象文書は平成21年11月24日及び平成22年1月14日に苦情相談を行った際に、職員相談員が作成した苦情相談報告書(以下「本件報告書」という。)であるとしている。

  しかし、審議会が当該「本件報告書」を見分したところ、実施機関が対象とする文書は、正確に言えば平成21年11月24日及び平成22年1月14日に異議申立人が実施機関に対して行った各苦情相談に係る「苦情相談の報告について(供覧)」(人委給第378号及び人委給第451号)の起案用紙、苦情相談報告書及び苦情相談カード(以下「本件文書」という。)である。

(2)不開示情報について

  実施機関は、条例第17条第6号(事務事業情報)に該当するとして、平成21年11月24日の苦情相談に係る苦情相談カードNo.13-1の2ページ中、30行目から36行目まで、41行目から48行目まで及び54行目の3文字目以降を不開示とした。そして、不開示部分には、

 ア 職員相談員が教育委員会の担当者に電話連絡をした際における

  • (1)教育委員会の担当者の調査状況、見解及び今後の方針
  • (2)職員相談員の今後の方針

 イ 職員相談員が異議申立人に電話連絡をした際における職員相談員の具体的な判断

に係る情報が記載されている。

(3)条例第17条第6号ハ該当性について

 ア 本号は、県の機関や他の地方公共団体等の事務又は事業に関する情報であって、開示することにより当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについて不開示とすることを定めたものである。

  実施機関は、本号該当性について、開示することによって、(1)当局の担当者が相談者の誤解や非難等をおそれることにより実施機関が当局から詳細な事情確認や意見聴取をできなくなること、(2)職員相談員が具体的な意見や今後の方針を相談記録に記載するのを躊躇し、実施機関が個別の事案に即した適切な検討・調整をできなくなること及び(3)実施機関が申出人・当局との円滑な信頼関係や協力関係を築けなくなることを理由として、今後の苦情相談業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張する。

 イ しかし、上記4(2)のとおり、苦情相談制度は、職員が意欲を持って安心して職務に専念できるようにして公務能率の維持・向上を図っていくことが人事管理上重要であることから、勤務条件等に関する不平・不満や苦情について相談に応じ、適切な解決を図るための制度であり、また、苦情相談カードは、申出人が行った相談内容やこれに対する対応状況等の詳細を記載する文書である。

  とすれば、申出人の苦情について適切な解決を目指すという観点からは、実施機関は、申出人及び当局の双方と情報を共有した上で、説明・助言・あっせんをしていくことが必要であると考えられる。

 ウ 以下、実施機関の主張について検討する。

   (ア)当局からの詳細な事情確認・意見聴取について

  •   実施機関は、不開示部分を開示すると、当局の担当者が相談者の誤解等をおそれるため、実施機関が当局から詳細な事情確認や意見聴取をできなくなると主張する。
  •   しかし、苦情相談に関する規則第5条により、実施機関には、関係者に対して事情聴取その他の調査を行う権限が与えられている。しかも、その調査は、申出人と当局の間のあっせん・調整等により問題を解決するために行うのであり、その趣旨に沿った形で調査が行われている限り、実施機関が当局から詳細な事情確認や意見聴取をできなくなるということは考えにくい。それにもかかわらず、そのおそれがあるとする実施機関の主張について、具体的な説明はなされていない。また、審議会が本件文書を見分したところ、実施機関の主張に沿うような記載があるとは認められない。さらに、実施機関が不開示とする情報の中には、本件決定において開示されている情報や申出人本人に既に伝達された情報も含まれている。
  •   これらの状況を考慮すると、実施機関の主張は、当局から詳細な事情確認等ができなくなる可能性を指摘するにとどまり、そのおそれが客観的にあるとまでは言えず、不開示とすべき特段の事情があることは認められない。

   (イ)職員相談員が具体的な意見・今後の方針の記載を躊躇するおそれについて

  •   実施機関は、不開示部分を開示すると、職員相談員が具体的な意見や今後の方針を相談記録に記載するのを躊躇するため、個別の事案に即した適切な検討・調整ができなくなると主張する。
  •   しかし、職員相談員は、適切かつ迅速に問題の解決を図るため、実施機関において指名され、申出人に対する助言等のほか、必要に応じて申出人と当局との間のあっせん等を行うものとされている。とすれば、申出人や当局にたとえ不利な意見等であっても、それを申出人や当局に示すことが職員相談員の職責であり、しかもそのような意見等こそが問題の解決に役立つことは確かである。したがって、自分に不利な意見等を提示された申出人や当局が不快感を抱くことが予想されたとしても、そのことが具体的な意見等を記載するのを躊躇することにつながるとは考えにくい。それにもかかわらず、そのおそれがあるとする実施機関の主張について、具体的な説明はなされていない。また、審議会が本件文書を見分したところ、実施機関の主張に沿うような記載があるとも認められない。
  •   これらの状況を考慮すると、実施機関の主張は、職員相談員が具体的な意見等の記載を躊躇する可能性を指摘するにとどまり、そのおそれが客観的にあるとまでは言えず、不開示とすべき特段の事情があることは認められない。

   (ウ)当事者間の円滑な信頼関係・協力関係の構築について

  •   実施機関は、不開示部分を開示すると、当事者(実施機関・申出人・当局)間の円滑な信頼関係や協力関係を築けなくなると主張する。
  •   しかし、実施機関は申出人と当局の両者に対し中立的な立場から説明・助言・あっせんを行うという苦情相談制度の趣旨に沿った形の運用が行われている限り、本件文書の開示により実施機関が申出人・当局との信頼関係等を損なうことは考えにくい。それにもかかわらず、そのおそれがあるとする実施機関の主張について、具体的な説明はなされていない。また、審議会が本件文書を見分したところ、実施機関の主張に沿うような記載があるとは認められない。
  •   これらの状況を考慮すると、実施機関の主張は、当事者間の円滑な信頼関係・協力関係を築けなくなる可能性を指摘するにとどまり、そのおそれが客観的にあるとまでは言えず、不開示とすべき特段の事情があることは認められない。

(4)結論

  以上のことから、「1審議会の結論」のとおり判断する。

  異議申立人のその他の主張は、本件決定の適否に関する審議会の判断に影響を及ぼすものではない。

6.附

  本件決定において、実施機関は自己情報部分開示決定通知書の所定欄に「苦情相談報告書」と記載している。しかし、実施機関が本件請求の対象として確認した文書は、苦情相談報告書だけでなく、起案用紙及び苦情相談カードも含めた本件文書であり、現に実施機関はこれらの文書について部分開示を実施している。

  したがって、本件の決定通知書には「平成21年11月24日及び平成22年1月14日の各苦情相談に係る「苦情相談の報告について(供覧)」(人委給第378号及び人委給第451号)」と記載すべきであったことは明らかである。今後実施機関においては、正確な事務の執行に努められたい。

7.審議会の処理経

  審議会の処理経過は、下記のとおりである。

審議会の処理経過

年月日

処理内容

平成22年3月3日

諮問書の受理

平成22年4月5日

実施機関の理由説明書受理

平成22年9月13日

審議(第189回審議会)

平成22年10月18日

審議(第190回審議会)実施機関口頭理由説明

平成22年11月15日

審議(第191回審議会)

平成22年12月20日

審議(第192回審議会)

平成23年1月24日

審議(第193回審議会)

 


答申第111号(平成23年3月28日付け)(PDF:185KB)

お問い合わせ

所属課室:総務部審査情報課個人情報保護班

電話番号:043-223-4628

ファックス番号:043-227-7559

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