答申第293号
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答申の概要(答申第293号:諮問第384号)
実施機関
事案の件名
特定建築物に関する文書の開示不開示を決定した処分に係る異議申立てに対する決定について
対象文書
- 種類 建築関係図書等
- 情報 起案文書、報告書、申請書等
請求に対する決定
不開示条項
原処分
- 不開示部分
建築工事届の具体的な記載部分(1号)
住所・氏名・資格等(2号)
法人の代表者印の印影、建築確認申請書等のうち設計に係る数値及び具体的な材料・機器等の名称(3号)
- 不開示理由
統計法に定められている指定統計であり、目的外に使用することが禁止されている情報であるため。(1号)
個人に関する情報であって特定の個人を識別できる情報であるため。(2号)
法人の事業活動における内部管理に関する情報またはノウハウに関する情報が記録されており、開示することにより、当該法人の事業運営上その他正当な利益を害するおそれがあるため。(3号)
申立年月日
諮問年月日
答申年月日
審査会の判断
実施機関は、不開示とした情報のうち、別表の「開示すべき情報」欄に記載した情報は、開示すべきである。
条例第8条第1号の該当性について
- 建築工事届は、建築基準法第15条第1項の規定により、建築主が建築物を建築しようとする場合等に、建築主事を経由して、その旨を都道府県知事に届け出なければならないものである。また、同条第4項の規定により都道府県知事は、当該届出に基づき建築統計を作成することとされている。
- 建築動態統計調査規則(昭和25年建設省令第44号。以下「統計調査規則」という。)の規定から建築工事届を受理したときに行う統計調査は、建築着工統計調査であり、当該統計調査は、昭和25年3月2日付け統計委員会告示第8号により指定統計第32号の指定を受けている。
- 統計調査規則第7条は、都道府県知事は建築工事届に基づいて別記第一号様式の調査票を作成し、国土交通大臣に送付しなければならないとしており、建築工事届とは別の調査票の存在が認められる。よって、建築工事届は、指定統計の調査票には該当せず、本号には該当しないものと判断する。
条例第8条第2号の該当性について
(1)法人の担当者名について
これらの情報は、個人に関する情報であって、特定個人を識別することができるものであり、本号本文に該当する。
また、法人の担当者であり、公にすることが予定されている情報ではないとする実施機関の説明を覆す特段の事情も認められないことから、同号ただし書イに該当せず、同号ただし書ロ、ハ及びニのいずれにも該当しない。
(2)印影について
担当者個人の印影は、個人に関する情報であって、特定個人を識別することができるものであり、本号本文に該当する。
また、法人の担当者の印影であり、公にすることが予定されている情報ではないとする実施機関の説明を覆す特段の事情も認められないことから、同号ただし書イに該当せず、同号ただし書ロ、ハ及びニのいずれにも該当しない。
(3)工事施工者品質管理窓口責任者氏名及び印影並びに品質管理責任者氏名について
これらの情報は、個人に関する情報であって、特定個人を識別することができるものであり、本号本文に該当する。
また、法人の従業者であり、公にすることが予定されている情報ではないとする実施機関の説明を覆す特段の事情も認められないことから、同号ただし書イに該当せず、同号ただし書ロ、ハ及びニのいずれにも該当しない。
(4)工事現場責任者の住所及び資格
- 建築士の種別、建築士名簿に登録した者
建設業の登録申請書及び添付書類には法人の社員のうち国家資格者及び監理技術者である者の氏名や資格の区分を記載した「国家資格者・監理技術者一覧表」には、国家資格者・監理技術者の氏名、生年月日、今後担当する工事の種類等及び有資格区分が記載され、建設業法第13条の規定により公衆の閲覧に供されている。
よって、建築士の種別、建築士名簿に登録した者については、本号ただし書イに該当するため、開示すべきである。
- 建築士の登録番号について
本件再決定時の平成19年3月29日には少なくとも建築士法等の一部を改正する法律(平成18年法律第114号)による改正建築士法の施行前であったことが認められる。
よって、本件再決定時点では登録番号は本号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しないものと認められ、実施機関が登録番号を不開示としたことは妥当である。
なお、改正建築士法施行後の建築士法第6条第2項により既に建築士名簿が閲覧に供されており、本件再決定により開示されている情報から登録番号を確認することは容易であると考えられること、建築物の安全性及び建築士制度に対する国民の信頼を回復するという観点から建築士法が改正されたことをかんがみると、現時点においては登録番号についても開示されることが望ましいと考える。
- 住所
文書を見分したところ、住所については、個人の住所を記載したものと認められる。
よって、特定個人を識別することができるものであり、本号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しない。したがって、不開示とすることが妥当である。
(5)測定者の資格、登録番号及び氏名
測定者の資格については、これを開示したとしても特定の個人を識別することができる情報には該当しない。よって、本号本文に該当しないため、開示すべき情報である。
登録番号及び氏名は個人に関する情報であって、特定個人を識別することができるものであり、本号本文に該当する。
また、公にすることが予定されている情報ではないとする実施機関の説明を覆す特段の事情も認められないことから、同号ただし書イに該当せず、同号ただし書ロ、ハ及びニのいずれにも該当しない。よって、不開示とすることが妥当である。
条例第8条第3号該当性について
- 法人の代表者印の印影
確認申請書等に押印されたものであり、当該文書に記載された内容が真正なものであることの認証的な意味があるものと認められる。また、法人の契約書類等の重要書類にも使用するものとして、特別な管理をしている印鑑の印影と推認される。
よって、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められ、本号イに該当するものと判断する。
- 確認申請書(建築物)、計画変更確認申請書(建築物)及び建築工事施工計画報告書に記載された情報
実施機関は、建築主から依頼を受けた建築士事務所が行った設計に係る情報であり、建築士事務所は、建築基準法の範囲内で、建築主の需要に応え、間取りや外観等について経済性及び安全性等を考慮し、建築士の経験、技量に基づいて設計するもので、これらの情報が明らかになれば、建築士事務所に所属する建築士の持つデザイン上、設計技術上のノウハウが明らかになり、当該建築士事務所の競争上又は事業運営上の地位に不利益を与えると説明する。
さらに、実施機関は口頭理由説明において、不開示とした情報は建築物のコスト等に係る情報であり、建築士事務所のノウハウに該当するものと考えているため、建築計画概要書など建築基準法第93条の2の規定により閲覧させている情報以外を不開示としたとの説明もしており、その理由は首肯できるものである。
よって、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものと認められ、本号イに該当するものと判断する。
条例第8条第3号ただし書該当性について
- 条例第8条第3号ただし書は、本号本文に該当する場合であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報は開示しなければならないと規定している。これは、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康、生活又は財産の利益と、当該情報を公にしないことにより保護される法人等の利益を比較衡量し、前者の利益が後者のそれを上回るときにこれを開示する趣旨である。
- 異議申立人は、建築計画に関わる法人等の情報には、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが公益上必要であり、本号ただし書に該当するものもあると主張する。
しかしながら、実施機関は、これまでも法令等の規定により公表すべき情報や偽装に係る情報については、安全の確保と所有者の財産権の保護等を比較衡量した上で原則として事実関係を公表しているところであり、実施機関が、本号に該当するとした情報が、法人の不利益を考慮してもなお公にすることが必要な情報とまでは認められないものと判断する。
文書不存在について
- 実施機関は、請求5の趣旨を満たす行政文書は、特定建築物に係る国土交通省から受けた行政文書であると解釈し当該文書を検索したが、対象となる行政文書は存在しないと判断したと説明する。
- しかし、実施機関が行った審尋に対し異議申立人は、国土交通省の指示により、実施機関が国土交通省に返答した行政文書が存在すると考えられるとの回答をしており、国土交通省が実施機関に指示した行政文書の存在が考えられるため、実施機関に改めて行政文書の存否について確認したが、請求5の趣旨を満たす行政文書を確認することはできなかった。
また、実施機関は、請求4の「国土交通省宛の文書」として文書を特定し、再決定しているが、文書11は、国土交通省の口頭での指示に対する国土交通省との打合せ時の資料であると説明しており、これをもって国土交通省からの文書による指示があったとまでは認め難い。
- したがって、行政文書を保有していないとする実施機関の説明は、これを覆すに足る事情も見いだし難く請求5に係る行政文書は存在しないものと判断する。
文書の特定について
- 当審査会で、文書11を見分したところ、文書11にはあて先、発信者、文書番号等の記載はなく国土交通省との打合せ時の資料であるとする実施機関の説明に特段不合理な点は認められなかった。
- 実施機関は、請求4の「国交省宛の文書」を「国土交通省宛に発した行政文書」と解釈したため、本件決定において不存在を理由とした行政文書不開示決定を行ったものと考えられるが、実施機関の対応が不適正であったとまではいえないものと判断する。
異議申立人の主張について
異議申立人は、条例第8条第5号の不開示部分について主張しているが、文書4、文書6及び文書7において本号に該当するとして不開示とした情報については、本件再決定においてすべて開示されている。
また、異議申立人は開示された文書にはあまりにも黒塗りの部分が多いと主張するが、当審査会の判断は前記3のとおりである。
その他、異議申立人は種々主張しているが、審査会の判断に影響を及ぼすものではない。
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