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更新日:令和6(2024)年11月1日

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ナシ「幸水」の樹体ジョイント仕立て法の初期収量及び果実品質

1.はじめに

ニホンナシの慣行の仕立て法である4本主枝整枝は、栽培管理に高度な技術が必要で、成園化まで時間がかかります。神奈川県の特許技術「樹木の樹体ジョイント仕立て法(以下、ジョイント仕立て)」は、主枝を1本とした複数樹を連続して接ぎ木し、直線的な樹形に仕立てる方法です。早期成園化や省力化につながる技術として期待されていますが、千葉県においては知見が乏しいのが現状です。今回、「幸水」のジョイント仕立てについて、初期収量と果実品質を調査しましたので紹介します。

2.調査樹の管理方法

平成27年12月に「幸水」の2年生大苗を、株間1.5m×列間3.6m(栽植密度185本/10a)で、約30年生の「豊水」を抜根した改植園に定植しました。翌3月に接ぎ木し、5本1ユニットについて平成28年から令和5年まで調査しました。肥料は、定植後1年間は1月に高度化成、3月に緩効性肥料270日タイプを年間窒素量11kg/10a、定植後2~3年は12月に有機配合肥料、4月に高度化成を年間窒素量22kg/10aとなるように施用し、その後は「幸水」成木の本県施肥基準(年間窒素量23kg/10a)に準じた施肥を行いました。側枝は基部の肥大を抑制するため、定植後4年程度は、新梢管理時に棚面に誘引して延長しました。

ジョイント栽培の様子の写真

写真ジョイント栽培の様子(令和6年9月撮影 定植後約9年)

3.ジョイント仕立ての樹冠の拡大

ジョイント仕立てにおける総側枝長の目標値に対する実測値の割合は、定植後3年で86%とおおむね目標とする樹冠の大きさに達しました(図1)。一方で、主枝の枝勢を保つように側枝を棚面に誘引しながら延長して樹冠拡大を図ったため、側枝齢が揃い、定植後6年目に更新する側枝数が多くなりました。それに伴い、一時的に樹冠面積が縮小しました。また、側枝数の推移をみると、定植後1年で主枝片側1m当たりの側枝数が5.8本に達し、その後も適正とされる3本程度を維持できました(図2)。

「幸水」ジョイント仕立ての目標総側枝長に対する側枝長の割合のグラフ

図1「幸水」ジョイント仕立ての目標総側枝長に対する側枝長の割合
注1)目標総側枝長に対する割合は、側枝間隔を35cmとして目標総側枝長を170cmとした場合の調査時点の側枝長の達成割合
 目標総側枝長に対する割合=調査時点の側枝長(cm)/170(cm)×100
注2)目標総側枝長に対する割合(%)が100%に到達した時点を「成園化」と定義した

「幸水」ジョイント仕立ての主枝片側1メートル当たりの側枝数の推移のグラフ

図2「幸水」ジョイント仕立ての主枝片側1m当たりの側枝数の推移

4.ジョイント仕立ての初期収量

ジョイント仕立ての収量は、定植後6年で2.7t/10aと慣行仕立ての成園並みになりました(図3)。千葉県が開発した「ナシ改植意思決定支援システム」では、慣行仕立ての2倍植えで改植した「幸水」の標準収量は、定植後6年で0.6t/10aと試算しており、今回のジョイント仕立ての収量が大幅に上回りました。翌年の定植7年後は側枝を多く更新したため、一時的に収量が低下しましたが、定植8年後には収量が3.3t/10aと回復しました。

「幸水」ジョイント仕立ての収量のグラフ

図3 「幸水」ジョイント仕立ての収量

5.ジョイント仕立ての果実品質

定植4~6年目のジョイント仕立てと慣行仕立て成木の果実品質を比較すると、1果重はジョイント仕立てが20g程度小さくなりましたが、硬度、糖度、pHには差がみられませんでした(表1)。
ジョイント仕立ての果実重について年度別の平均値をみると、定植4年後(着果2年目)及び定植5年後(着果3年目)にそれぞれ280g、271gとなり、他の年度と比較して小果の傾向でした(表2)。
植栽面積当たりの着果数は段階的に増加させたものの、この2年間は着果過多であった可能性が考えられました。ジョイント仕立てでは早期に樹冠が拡大し、着果数を多くすることが可能ですが、樹体が小さい定植後数年間は着果過多にならないように注意が必要であると考えられました。

表1「幸水」ジョイント仕立て及び慣行仕立ての果実品質

仕立て法 1果重(g) 硬度(lbs.) 糖度(Brix%) pH
ジョイント仕立て 337.1 5.0 13.2 5.6
慣行仕立て 356.8 4.9 12.7 5.4

注1)令和元年度から3年度に各仕立て法15果を調査した
注2)慣行仕立ては4本主枝整枝の約15年生の成木

表2 「幸水」ジョイント仕立ての平均果実重と着果数

- 

3年目

(平成30年)

4年目

(令和元年)

5年目

(令和2年)

6年目

(令和3年)

7年目

(令和4年)

8年目

(令和5年)

果実重(g) 347 280 271 358 340 427
着果数(果/10a) 2,259 5,222 7,556 7,481 6,074 8,926

 

初掲載:令和6年10月
農林総合研究センター
果樹研究室
研究員:井上 雄樹
電話番号:043-291-9989

お問い合わせ

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