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更新日:令和6(2024)年3月14日
ページ番号:646062
千葉県南部において温州ミカンは秋から冬にかけての重要な観光・直売品目です。千葉県における温州ミカンは、ほとんどが千葉県南部で栽培されています。主力品種は「興津早生」ですが、極早生から晩生までの品種が幅広く用いられています。
温州ミカンは結果数が多い「表年」と少ない「裏年」を繰り返す隔年結果性が強く、毎年の生産量が不安定となる傾向があります。この習性をうまく利用した「隔年交互結実法」が、西日本のいくつかの産地で取り組まれています。この方法では、図1のように樹を着果させる「生産樹」と着果させない「遊休樹」に分け、毎年交互に結実させます。その結果、ほ場全体として毎年の収量が安定するとともに、生産樹への管理作業の集約による省力化や遊休樹への農薬散布量の低減が見込めます。
一方、千葉県ではこの方法の導入は進んでいません。そこで、「興津早生」を用いて、導入した場合の遊休樹の効率的な摘果方法と生産樹の収量性について明らかにしました。
図1隔年交互結実法の模式図
初年度に遊休樹とする樹は全摘果を行う必要があり、作業負担が大きくなります。この作業の省力のために、暖地園芸研究所の約50年生の樹を用いて、植物生育調節剤の効果試験を行いました。
令和元年及び2年に摘果剤フィガロン乳剤(日産化学(株式会社)、以下フィガロン)を満開18~20日頃散布しました。貯蔵養分が多いと推測される樹においても、図2のように着果数低減効果が高く、導入初年度の全摘果では、フィガロンの利用が適していると考えられました。ただし、注意点として、フィガロンは「全摘果」で登録のあるエスレル10との混用により摘果効果が高まりますが、旧葉の落葉を助長することがあるので、樹勢の悪い樹には散布しないようにしましょう。
一方、ジベレリン(ジベレリン粉末、住友化学(株))の冬期(12~1月)散布では、前年に全摘果した貯蔵養分が多い樹で花数が著しく多くなるなど、2か年の試験ではその花数抑制及び着果数低減の効果は安定せず、隔年交互結実法では不適と判断しました。(データ略)
図2 貯蔵養分量が多と推測された樹における植物成長調整剤散布による旧葉100枚当たりの着果数(令和2年)
注1) 調査日:旧葉の枚数は令和2年4月22日、着果数は令和2年6月22、23日
注2) 枝の先端50cmを調査
注3) ジベレリン2.5ppmを展着剤スカッシュを混用して令和2年1月15日に散布
フィガロンは1,000倍をエスレル10の2,000倍と混用して同年5月25日に散布
注4) 前年に全摘果し遊休樹として管理した樹を供試
隔年交互結実法では、生産樹は慣行栽培樹の2倍の収量を得る必要があります。そこで、手作業による摘果を一切行わずに管理し、この樹を生産樹と想定して、規格別収量を調査しました。
慣行栽培樹の目標収量を10アール3トンとした場合、栽植密度が10アール28.5樹の調査ほ場では、1樹当たり210キログラムが生産樹の目標となります。表のように、供試した7樹の平均収量は1樹当たり227キログラムでしたので、目標を達成することができました。ただし、2S以下の果実割合が3割近くあったため、8月に行う仕上げ摘果や10月の樹上選果による小玉果や極大玉果の除去は必要です。
表 無摘果樹における規格別収量(令和2年度)
注1)7樹を供試、樹齢は約50年生
注2)カッコ内の数値は全収量に占める割合(%)を示す
隔年交互結実法では、導入初年度に生産樹と遊休樹に分けることで、翌年以降は隔年結果性によりそれぞれが裏と表を交互に繰り返すことになり、着果管理の省力化を図ることができます。しかし、温州ミカンの着果量は樹齢や樹勢等も影響します。導入する場合は、まずは小規模で試験的に取り組み、各自の圃場と樹体における生産樹の収量性や遊休樹の着果抑制状況を確認してから実施してください。
初掲載:令和6年3月
農林総合研究センター
暖地園芸研究所
特産果樹研究室
研究員:横山 瑛
電話番号:0470-22-2961
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