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更新日:令和6(2024)年6月26日

ページ番号:675526

水稲生育予測システム「でるた™」を活用した暑さに負けないイネ作り

1.はじめに

近年は水稲生育期間にあたる3~8月の気温が上昇傾向であり、水稲の生育や米の品質にも大きく影響を及ぼしています。

【参考資料】(クリックすると記事が開きます。)

フィールドノート(令和2年) 温暖化が水稲に及ぼす影響

試験研究成果普及情報(令和元年) 水稲における高温登熟障害の発生条件と軽減対策(PDF:256.1KB)

試験研究成果普及情報(令和元年) 温暖化による気温上昇が「コシヒカリ」の生育等に及ぼす影響(PDF:160.3KB)

高温環境下では、茎数の増加や稈長が長くなり、籾数過剰や倒伏が発生しやすくなります。また、千粒重の低下やくず米の増加、乳白粒や背白、腹白粒等が増加する傾向にあります。

2.米の千粒重の低下やくず米が増加する原因

要因のひとつとして、登熟期間中の夜温が高いことがあげられます。稲は光合成によって生産した糖を、籾に送ることで、玄米を大きくしていきます。しかし、稲は呼吸する際に、この糖を消費しており、特に夜温が高いほど籾に送る分の糖を消費してしまうと考えられているからです。

水稲の籾への糖の転流の図

3.玄米品質の低下について

近年の登熟期間の高温条件により、乳白粒(胚乳面積の2分の1以上が白濁)、基白粒、背白粒等が増加し、玄米品質が低下することが多くなっています。(写真1から5を参照)

品質が悪い玄米の写真
写真1品質が悪い玄米 

品質が良好な玄米の写真
写真2品質が良好な玄米

 

乳白粒の写真
写真3乳白粒

基白粒の写真
写真4基白粒 

背白粒の写真
写真5背白粒

 

乳白粒の切断面
写真6乳白粒の切断面

玄米のデンプンは胚乳中心部→その周辺部→腹側→背側→基部の順で蓄積します。上の乳白粒の切断面の写真(写真6)では、玄米の中心部が白濁し、その外側は透明化していることから、中心部のデンプンの蓄積時(登熟初期~中期)に高温等の何らかの問題があり、その後は順調に登熟が進んだと考えられます。
また、デンプンの蓄積を阻害する要因として籾数過剰、土壌の窒素や水分の不足による玄米の充実不足等も考えられます。

4.対策は健全な稲体を維持すること

これらの千粒重や玄米品質の低下について、完全に対処するのは困難ですが、収穫直前まで稲体(地上部及び根)を健全に保つことで、ある程度は改善できると考えられます。そのためには、以下の点を留意しましょう。

(1)適切な水管理

移植以降の高温条件下では地力窒素が早く発現するため、幼穂形成期までの生育量が多くなりがちです。籾数の過剰や倒伏は千粒重や玄米品質の低下を助長します。対策としては基肥量を少なくする方法も考えられますが、基肥施用時にはその後の気温がどのように推移するかはわかりません。このような場合は、中干しによって生育を調節するのがよいでしょう。
中干しには、生育前半の茎数を抑える効果、倒伏を回避する効果、根を痛める硫化水素の発生を抑え、酸素を供給する効果、有機物の分解を促進し地力を上げる効果、土壌を固めて収穫時の作業をしやすくする効果等があります。また、登熟期間が高温となる場合、湛水条件のままだと土壌中の酸素が不足し、逆に早期に落水すると、水分が不足して、枯れあがりが発生し、収量や外観品質が低下します。このため、出穂期後14~25日は間断灌漑を行い、登熟後半まで酸素、水分を供給します。
中干し、間断灌漑ともにあまり地面を固め過ぎると根を痛めて後半の生育に悪影響を及ぼしますので、注意しましょう。

(2)生育に応じた追肥の施用

穂肥は出穂期18日前に行うのが基本ですが、生育が過剰気味になっている場合は出穂期10日前くらいまで施用を遅らせると、倒伏と籾数過剰のリスクが低下します。逆に登熟期間の葉色が淡すぎる場合は、出穂期7~5日前に1kg/10a程度の追肥を行い、葉色を維持することで、玄米品質を低下させる基白、背白粒を減少させる効果があります。
適切な施肥は登熟期間の光合成能力の維持に役立ち、玄米品質の低下を回避することにもつながると考えられます。

5.水稲生育予測システム「でるたTM」を活用して適切な栽培管理を

登熟期間中の水管理や追肥等は生育ステージに応じて行うことが重要です。そのためには多くの管理作業の基準となる出穂期を予測する必要がありますが、生育調査等を行う必要があるため、一般の生産者には困難です。そこで、千葉県が開発した水稲生育予測システム「でるたTM」を活用しましょう。以下の支援システムのページをご覧ください。

支援システム(農林)水稲生育予測システム「でるたTM (クリックするとページが開きます)

【参考資料】
フィールドノート(令和4年)水稲生育予測システム「でるたTM」の大規模運用試験を開始 (クリックするとページが開きます)

これにより、圃場に入らずとも出穂期の予測が的確に行え、多くの管理作業のスケジュールが組みやすくなります。
「でるたTM」は、品種、移植日の情報を入力すると気象データから幼穂形成期と出穂期を予測して、そこから追肥等の作業適期、高温登熟障害危険期等を計算します。
近年は極端な気象条件となることが多く、栽培暦に準じた管理作業では対応が難しくなっています。「でるたTM」を上手に活用し、暑い夏でも収量・品質ともに良好となる栽培を目指していただきたいと思います。

初掲載:令和6年6月
農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
水稲温暖化対策研究室
室長 平井 達也
電話番号:043-292-0016

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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