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更新日:令和6(2024)年11月1日

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スプレーストック切り花の出荷調整を可能にする一時保管技術

1.はじめに

ストックは秋から春にかけて芳香のある花を咲かせ、切り花、花壇や鉢物に利用されています。花色も豊富で、桃、白、紫、淡黄などがあります。南房総地域が主な産地で、千葉県は産出額7億円(令和4年)で全国第1位の産地となっています。
切り花ストックは収穫適期となった個体を順次収穫しますが、気温が高い日が続くと一気に開花が進み、計画的な出荷ができない、収穫・調整作業が集中する、出荷量が増えて価格低下を招いてしまうことが課題となっています。このような中、収穫後に、生産者の冷蔵庫で品質を低下させることなく一時保管できれば、計画的な出荷や作業分散が可能となります。
そこで、スプレーストック切り花において、一時保管のための技術開発を目指しました。

2.一時保管時の温度

一時保管の温度について、 2℃、5℃、8℃、10℃の区を設定し、保管開始時~4週間後まで個々の切り花の開花小花数をそれぞれ調査しました。試験方法は、1~2輪開花で収穫した切り花を、切り口を水道水に浸した状態で保管する湿式とし、容器ごと湿度改善包装資材(商品名:フレッシュライナー(クリザール・ジャパン株式会社))で包みました。品種は「カルテットホワイト」(株式会社サカタのタネ)を用い、収穫後の切り花長を60cmとし、下葉を30cm除去して供試しました。

保管温度5℃では開花小花数の増加は少なく、保管後4週間まで障害はみられませんでした。保管温度8℃及び10℃では、保管期間中に開花小花数が増加し、この温度は一時保管には不適でした。一方、2℃で保管した区では、開花小花数の増加はみられませんでしたが、吸水が悪く、葉の萎れなどの障害がみられました(写真1)。このことから、保管温度は5℃が適当と判断しました(表1)。

表1.一時保管温度の違いがスプレーストック切り花の開花小花数に及ぼす影響
一時保管温度の違いがスプレーストック切り花の開花小花数に及ぼす影響の表(PNG:12.6KB)

2℃で一時保管後のストック切り花に生じた葉の萎れの様子の写真
写真1.一時保管後(2℃)のストック切り花に生じた葉の萎れの様子
注)開花は進まないものの、吸水が悪く、葉が萎れる障害が生じた

3.品質保持剤の有無と保管期間

切り花の保管期間を1週間、2週間、3週間、4週間の4区とし、保管開始時に品質保持剤(商品名:ミラクルミストff(クリザール・ジャパン株式会社)を噴霧する区と噴霧しない区を組合せ、保管終了後の日持ち日数を調査しました。保管方法は切り口を品質保持剤(商品名:フラワーフード(クリザール・ジャパン株式会社))に浸した状態としました。
品質保持剤を噴霧処理した区は処理しない区と比較して日持ち延長効果が認められました(表2)。このように、一時保管をする際は品質保持剤の噴霧処理が必要です。日持ち日数が20日間以上得られれば十分とした場合、5℃条件下では2週間まで一時保管が可能と考えられました。

表2.保管期間、品質保持剤処理の有無がストック切り花の日持ち日数に及ぼす影響
表2保管期間、品質保持剤処理の有無がストック切り花の日持ち日数に及ぼす影響の表(PNG:25.2KB)

4.湿度改善包装資材の使用

収穫、調整した切り花について、保管開始時に3と同様の品質保持剤(商品名:ミラクルミストff(クリザール・ジャパン株式会社)を噴霧処理し、保管温度は5℃、保管期間は2週間とし、保管中の切り花を2と同様の湿度改善包装資材(商品名:フレッシュライナー(クリザール・ジャパン株式会社))で包む区と新聞紙で包む区を設定し、保管終了後の日持ち日数を調査しました。保管方法は、湿式の他、水あげ後の切り花を段ボール箱に入れて保管する乾式の2つを検討しました。
一時保管時に乾燥を防ぐ目的で使用する包装資材として、乾式であれば湿度改善包装資材や新聞紙を用い、湿式条件では新聞紙を用いることで、日持ち日数が比較的長くなりました。(表3)

表3.湿度改善包装資材がストック切り花の日持ち日数に及ぼす影響
表3湿度改善包装資材がストック切り花の日持ち日数に及ぼす影響の表(PNG:20.7KB)

5.まとめ

以上の結果から、スプレーストック切り花の出荷調整を目的に一時保管を乾式の状態で行う場合、切り花全体に品質保持資材の噴霧処理を行ってから、湿度改善包装資材で包み(写真2)、5℃で保管します。2週間保管した後でも、約12日間の日持ち日数を得られます。

写真2湿度改善包装資材を用いた保管の様子の写真
写真2.湿度改善包装資材を用いた保管の様子
注)包装資材:フレッシュライナー(クリザール・ジャパン株式会社)

初掲載:令和6年10月
農林総合研究センター
野菜・花き研究室
上席研究員 金子 洋平
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