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更新日:令和6(2024)年9月18日
ページ番号:692863
千葉県館山市神戸地区は戦後から続くレタスの産地です。栽培において、本ぽでは保温を目的としてビニールトンネルによる被覆を行いますが、設置解体作業に係る時間及び肉体の負担が大きいことが問題になっています。そこで近年、トンネル栽培に代わる省力的な方法として、べたがけ栽培が導入されてきました。
本稿では、令和4年度に実証試験を実施した3月以降に収穫する春どりレタスのべたがけ栽培について紹介します。
被覆資材として、PVA製割繊維不織布「ダイオベタロンDT-550」を使用しました。本資材は、耐久性に優れること、適度な通気性と透水性があることが特長の資材です。
春どりレタスの定植は低温期に行われることから、基本的に定植直後に被覆します。
資材を畝上に展張し、裾をUピンにより約2m間隔で固定します。片付けの際はUピンを抜き、資材を巻き取るか折りたたむことで回収します。
被覆後、レタスの生育に伴って資材が押し上げられます。そのため、畝の短辺方向には余裕を持たせて被覆します。一方、畝の長辺方向は、資材を引っ張りながら余裕を持たせずにUピンで固定し、風で巻き上げられないようにします。
べたがけ栽培では、レタスと被覆資材が接しているため、風により資材が動くと、苗にスレが発生することがあります。強風対策として資材の裾を折って固定し、短辺方向は余裕をなくすとスレの発生は少なくなります。しかし、この場合はレタスの肥大時に正常な球形成が妨げられるため、生育状況を見ながら、折った部分を伸ばして張り直す必要があります。
写真1べたがけ栽培の様子
トンネル栽培では、定植直後に被覆せず、雨水に当てたり、かん水を行ったりして活着を促すことがあります。この間、強風が吹くと苗が傷んでしまいます。一方、べたがけ資材は雨水を通すため、定植直後に被覆した場合でも、乾燥による活着不良は発生せず、早期の被覆により苗を強風から保護できました。
また、トンネル栽培との差異として、収穫時期の斉一性が挙げられます。通常、レタスは4条植えで栽培します。トンネル栽培の場合、畝の内側と外側の条で温度差があるために、生育差が生じて収穫適期がずれることが多く、往々にして同じほ場で収穫作業を複数回行います。一方、べたがけ栽培では生育差が生じにくく、ほ場の一斉収穫が可能でした。ただし、収穫時期そのものはトンネル栽培と比較して数日程度遅れました。
最後に収穫物の品質は、同時期の慣行のトンネル栽培と同等のものが得られました。外葉には資材との接触によるスレと考えられる縁の変色が発生しましたが、調製時に除去されるため、特に問題にはなりませんでした。
被覆作業(展張・片付け)で比較すると、べたがけ栽培はトンネル栽培の約31%に削減されました(下表)。被覆方法によって所要時間が変わる他の作業(収穫、農薬散布)も合計した場合は、約56%に削減されました。
表 各作業の平均時間(h/10a、作業者2名の場合)
栽培方法 | 被覆設置 | 収穫 | 農薬散布 | 被覆解体 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
べたがけ栽培 | 3.3 | 18.6 | 0.2 | 1.4 | 23.5 |
トンネル栽培* | 7 | 25 | 2 | 8 | 42 |
*野菜経営収支試算表(令和4年度千葉県作成)より引用
べたがけ栽培では、トンネル栽培と比較して生育が緩慢になり、収穫時期がやや遅れます。これは保温効果の違いによるものと考えられることから、今後、べたがけ栽培に適する品種、栽培時期の選定を進め、栽培スケジュールを確立する必要があります。
なお、本実証試験の成果は『春どり神戸レタス グリーンな栽培マニュアル』(クリックすると別ページに移ります)にまとめ、レタス生産者に周知するとともに千葉県ウェブページ上(上記ページ)でも公開しています。
春どりレタスにおいて本ぽでべたがけ被覆を行うことにより、定植直後の生育を安定させ、かつ慣行のトンネル栽培から作業時間を削減し、慣行と同等の品質のレタスを生産できることが明らかになりました。高齢化、労働力不足が深刻化する中、省力的なべたがけ栽培の導入が産地の維持拡大に資すると考え、今後も技術の普及と改善に取り組んでいきます。
なお、本稿で取り上げた実証試験及びマニュアルの作成は、農林水産省「みどりの食料システム緊急対策交付金のうち『グリーンな栽培体系への転換サポート』」を活用して実施されました。
初掲載:令和6年8月
安房農業事務所
改良普及課 館山グループ
普及指導員
池田 尚平
電話番号:0470-22-8132
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