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更新日:令和6(2024)年9月18日

ページ番号:692843

ニホンナシにおける一芽腹接ぎ及び芽接ぎの実施時期

1.はじめに

ナシ樹において、結果枝は通常は3から5年で更新します。高い生産性を保つためには側枝を樹冠内に均等に配置することが理想ですが、適切な場所に発生しないことも多いです。このような場合、高接ぎの一種である腹接ぎで側枝を確保する方法があります。
腹接ぎにはいろいろな方法がありますが、今回、一芽腹接ぎ及び芽接ぎについて、「幸水」を供試し、実施時期が活着率等に及ぼす影響を調査したので紹介します。

2.一芽腹接ぎの実施時期

一芽腹接ぎは、一芽のみ付いた穂木を台木にはめ込むように接ぎ木を行う方法で、穂木は冬季に採取した1年生枝を冷蔵庫等で保存して用います。ポリエチレンフィルムに密封して、3から5℃で冷蔵保存した穂木を6月下旬に接ぎ木したところ、100%活着しました。一方で、10℃で保存した穂木は、黒変などの異常がみられ、6月には使用できませんでした。
また、穂木の新梢伸長量は早い時期に接ぎ木するほど大きくなり、3月下旬に接ぎ木した場合、平均で約86センチメートル伸長しましたが、6月下旬では10センチメートル程度でした。
このことから、一芽腹接ぎは、3から5℃で冷蔵保存した穂木を用いると、台木の表皮が剥離できる3月下旬から6月下旬頃まで活着しますが、早い時期に実施するほど穂木の新梢伸長量が大きくなると考えられました。

一芽腹接ぎの手順(PNG:848.4KB)
図1一芽腹接ぎの手順

3.芽接ぎの実施時期

芽接ぎは発育枝の一芽を剥がし、台木に接ぎ木する方法で、一般的には、8月下旬から9月中旬が適期とされています。今回の試験では、6月中旬、6月下旬、7月下旬、8月下旬、9月下旬に芽接ぎを行いました。その結果、活着率は、6月中旬から8月下旬まで差がみられませんでしたが、9月下旬は台木の表皮の剥離が困難となり、芽接ぎを行うことができませんでした。
一方で、翌年の発芽率は6月中旬が50%、6月下旬が48%と、7月下旬の92%と比較して低くなりました。「幸水」の発育枝の腋芽の発育は、6月下旬の新梢伸長停止期以降進むとされており、穂木採取時の腋芽の発育程度が翌年の発芽率に影響している可能性が示唆されました。
このことから、芽接ぎは7月下旬以降で、表皮の剥離が困難となる9月下旬より前に、発育枝から充実した腋芽を選んで穂木を採取することで、効率的に実施できると考えられました。

芽接ぎの手順(PNG:825.1KB)
図2芽接ぎの手順

図3芽接ぎにより発芽しなかった穂木と発芽した穂木の写真
図3芽接ぎにより発芽しなかった穂木(左)と発芽した穂木(右)

表 芽接ぎの実施時期が活着に及ぼす影響

芽接ぎの実施時期が活着に及ぼす影響の表

注1)芽接ぎは令和2年に実施し、活着率は令和3年1月、発芽率は令和3年11月に調査した
注2)異なる英小文字間はTukey法により5%水準で有意差あり
注3)9月29日は活着率のみ調査した

 

4.おわりに

一芽腹接ぎや芽接ぎなどの接ぎ木法は栽培品種を更新する際に、改植をするより早く、品種更新を行えるという利点があります。
また、令和5年8月に火傷病の感染源となるナシの花粉の、中国からの輸入が停止されたこともあり、花粉採取用品種の更新や増殖に積極的に接ぎ木を利用いただければと思います。
なお、接ぎ木は各品種の品種登録に注意した上で行ってください。

初掲載:令和6年8月
農林総合研究センター
果樹研究室
研究員:井上 雄樹
電話番号:043-291-0151

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

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