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更新日:令和6(2024)年2月14日

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トマトにおける炭酸ガスの効果的な施用について

1.はじめに

近年の促成トマト栽培では、中小規模ハウスにおいても環境制御技術を導入することで多収を実現する経営体が増加しています。中でも炭酸ガス施用機は導入コストが低く、費用対効果が大きいこと、また、施用時の設定等が容易で、栽培管理に組み込みやすいことから、初めて環境制御を導入する際に選ばれる傾向があります。
その一方で、資材価格や燃油価格の高騰から、効果的な炭酸ガス施用が行われていない場合、かえって所得にマイナスの影響を及ぼす可能性も考えられます。
このことから、本資料では現地での取組事例から炭酸ガス施用機の活用方法と注意点についてまとめました。

2.炭酸ガス施用機の活用方法

(1)まずは外気の炭酸ガス濃度(400ppm)を切らないための施用

換気が少ない時期のハウス内の炭酸ガス濃度は、植物の呼吸によって夜間は上昇するものの、日の出とともに光合成が始まることから、日中は著しく低下します(図1)。太陽が出ている間は、炭酸ガスの濃度が高いほど光合成は促進されますが、500ppmを超えたあたりから、その効果はだんだんと低減していきます。また、密閉状態のガラス温室であっても、1時間程度で温室内の空気はすべて入れ替わってしまうことから、過剰な炭酸ガス施用は燃油の無駄使いとなってしまいます。まずは炭酸ガス濃度が常に400ppm~500ppmに収まるよう、効率的な施用を行いましょう。
また、天窓が閉まっている朝の時間帯であれば、炭酸ガスはハウス外に漏れにくいため、600ppm程度を目標に施用することで、更に光合成効率を高めることができます。その場合は、天窓が開く前に徐々に施用量を減らし、解放時には500ppmになるよう調整することで、燃料の無駄使いを減らせます。

炭酸ガス施用の有無による炭酸ガス濃度の変化のグラフ

図1炭酸ガス施用の有無による炭酸ガス濃度の変化

(2)循環扇等による気孔付近の空気の攪拌

植物は気孔から炭酸ガスを吸収し、酸素を排出します。そのため、気孔が多く存在する葉の周囲には酸素が溜まり、炭酸ガス濃度が低くなった薄い空気の層が発生してしまいます(葉面境界層)。この層を循環扇による空気の流れによってかき混ぜると、葉の周囲の炭酸ガス濃度がハウス内の炭酸ガス濃度に近づき、より効率的に炭酸ガスを吸収させることが可能になります。ただし、あまりに風速が大きいとトマトにとってストレスになるため、よく観察すると葉が揺らいでいることが確認できる程度に留めると効果的です。

(3)局所施用による効率的な施用

炭酸ガスの施用時は、株の近くに局所施用することで、施用機から出たばかりの高濃度の炭酸ガスを植物に供給できます。局所施用の方法としては、炭酸ガスを暖房機吸気口に向けて施用し、暖房用の有孔ダクトを活用する方法(写真1)、および炭酸ガス施用機専用の有孔ダクト(かん水チューブ等でも代用可)を利用する方法があります。後者の場合は使用する機器や面積に応じてダクトファンが必要になりますが、施用する高さの調節が可能なため、光合成が最も盛んに行われている上位葉への局所施用も可能になります。

暖房機の吸気口に炭酸ガス施用機の吹き出し口を向けた写真

写真1暖房機(右)の吸気口に炭酸ガス施用機(左)の吹き出し口を向けた例

*千葉県農林総合研究センター『トマト・キュウリにおける炭酸ガス施用の技術指導マニュアル』1)より引用

3.炭酸ガス施用時の注意点

(1)効果的な湿度管理

現在主流となっている炭酸ガス施用機は、灯油を燃料としているため、炭酸ガスと同時に水が発生して相対湿度を上昇させます。湿度が95%を超えると葉かび病等の多湿が原因で発生する病害のリスクが高まるため、適度な換気や暖房機の使用により相対湿度を低下させる必要があります。一方で急激に相対湿度が低下するとストレスから気孔が閉じて炭酸ガスの吸収が行われにくくなります。そのため、外気が乾燥している日中に換気を行う際は、天窓の開度を抑えたり、風下のみ換気を行ったりする等、徐々に相対湿度を低下させていくよう心掛けましょう。

(2)光合成量に合わせたかん水

光合成は炭酸ガス、光、水の3つを原料にして行われます。そのため、炭酸ガス施用によって光合成量が上がると、それに合わせて水の必要量も増加します。しかしながら、一回のかん水量を増やしすぎると根腐れの要因にもなるため、水不足が発生する場合は自動かん水装置と点滴チューブを活用した「少量多かん水」の実施が有効です。少量多かん水が難しい場合、炭酸ガス施用によって活発になった光合成に対してかん水が追い付かず、生育バランスが崩れることが想定されます。その際は、施用時の設定値を常に400ppm付近に設定し高濃度の施用を控えることで、燃油代を考慮した際の費用対効果の面においても、効果的な炭酸ガス施用が行えます。

引用文献
1)千葉県農林総合研究センター野菜研究室(2019)トマト・キュウリにおける炭酸ガス施用の技術指導マニュアル(PDF:614.9KB) 農林水産技術会議技術指導資料

初掲載:令和6年1月
海匝農業事務所 改良普及課
旭グループ
普及技術員 高橋 大和
電話番号:0479-62-0334

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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