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更新日:令和4(2022)年9月26日
ページ番号:525928
ラビットアイブルーベリーは、他のブルーベリー栽培種と比較して樹勢が強く栽培が容易で、収穫期も夏休みに当たることから観光農園等で導入されています。ラビットアイブルーベリーでは、夏季に新梢を剪定することにより切除部の下位の節に花芽が着生することが報告されていますが、本県における適切な剪定時期や方法については明らかになっていませんでした。そこで、ラビットアイブルーベリーにおいて、収穫しやすい位置に花芽を着生させるための夏季剪定技術を検討しました。
ラビットアイブルーベリー品種「ティフブルー」において、8月下旬、9月中旬及び10月上旬に、主軸枝から上向きに伸長している新梢を、先端から約4分の1の位置の腋芽の上部で剪定しところ、9月中旬と10月上旬では、剪定した位置の下の3節程度に花芽が着生しました(図1、表1)。8月下旬に剪定した新梢では、下位の節から新梢が再伸長し、花芽は1節程度にしか着生しませんでした。今回の試験結果から、花芽を着生させることを目的とした新梢の剪定時期は、9月中旬から10月上旬が適していると考えられました。
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図1.9月に剪定した新梢の花芽着生状況
剪定日 | 8月26日新梢長(センチメートル) | 剪定前新梢長(センチメートル) | 剪除した新梢長(センチメートル) | 花芽着生節数(1枝あたり) | 花芽着生枝率(パーセント) | 2次伸長枝率(パーセント) | 2次伸長数(1枝あたり) | 2次伸長枝の伸長量(センチメートル) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8月26日 | 118 | - | 29 | 1.3 a | 17 a | 96 a | 3.7 a | 13.8 a |
9月16日 | 118 | 122 | 30 | 3.0 b | 96 b | 38 b | 2.8 a | 3.9 b |
10月6日 | 116 | 125 | 31 | 2.5 ab | 100 b | 0 c | 0 b | 0 b |
分散分析 | n.s. | * | ** | ** | ** | ** |
注1)花芽着生節数は、花芽が着生した新梢の花芽が着生した節数の平均とした。
2)花芽が着生した新梢数/調査枝数×100を花芽着生枝率とした。
3)2次伸長した新梢数/調査枝数×100を2次伸長枝率とした。
4)2次伸長数は、2次伸長した新梢の2次伸長した芽の数の平均とした。
5)分散分析は、*は5パーセント水準で、**は1パーセント水準で有意差があることを、n.s.は5パーセント水準で有意差がないことを示す。
6)異なる英小文字間には、Tukey法により5パーセント水準で有意差あり。
7)花芽着生枝率及び2次伸長枝率は角変換後に多重比較を行った。
品種「ティフブルー」において、新梢を剪定する長さが花芽着生に及ぼす影響を検討しました。9月中旬に新梢の全長の4分の1もしくは2分の1の長さで剪定したところ、切除部位の下位の節に、4分の1では5節程度、2分の1では3節程度に花芽が着生し、芽の着生位置を下げる効果が確認されました(表2)。
区 | 新梢長(センチメートル) | 剪除した新梢長(センチメートル) | 花芽着生節数(1枝あたり) | 花芽着生枝率(パーセント) |
---|---|---|---|---|
50パーセント剪定区 | 76 | 38 | 2.7 | 76 |
25パーセント剪定区 | 81 | 20 | 4.8 | 79 |
無剪定区 | 84 | - | 9.7 | 65 |
分散分析 | n.s. | n.s. | n.s. |
注1)令和2年9月14日に夏季剪定し、令和3年1月に花芽着生節数を調査した。
2)花芽が着生した新梢数/調査枝数×100を花芽着生枝率とした。
3)分散分析のn.s.は5パーセント水準で有意差がないことを示す。
表3に示した早生から晩生までのラビットアイブルーベリー4品種において、9月中旬に新梢先端を新梢の全長の4分の1に剪定したところ、「ティフブルー」では3節程度、「クライマックス」では4節程度、「ブルーベル」では6節程度、「デライト」では2節程度に花芽が着生し、いずれの品種でも切り返し位置の下の節から花芽が着生することが確認されました(表3)。
表3.夏季剪定が各品種の花芽着生に及ぼす影響
(PNG:16.1KB)
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注1)「クライマックス」、「ティフブルー」及び「ブルーベル」は令和2年9月10日、「デライト」9月17日に夏季剪定し、令和3年1月に花芽着生節数を調査した。
2)t検定は、*は5パーセント水準で、**は1パーセント水準で有意差があることを、n.s.は5パーセント水準で有意差がないことを示す。
以上の結果から、ラビットアイブルーベリーの主軸枝から上向きに発生した新梢先端を、9月中旬頃に4分の1から2分の1に剪定することにより、切り返した下位の節から花芽が着生して、着果位置を下げる効果が確認できました。9月中旬を中心に処理を行うことで、観光園等で活用できる技術であると考えられます。
初掲載:令和4年8月
農林総合研究センター
果樹研究室
研究員 井上 雄樹
電話番号:043-291-9989
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