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更新日:令和4(2022)年1月5日
ページ番号:466386
観光農業が盛んな南房総地域において、パッションフルーツは集客力向上に役立つ品目として導入が進んでおり、栽培面積は1.5ヘクタール、収穫量は13.0トン(平成29年産特産果樹生産動態等調査)で、収穫量では全国で第4位の産地となっています。
パッションフルーツは露地や無加温施設では越冬が困難と考えられることから、1年生苗木を育成し毎年植え替える栽培が行われていますが、耐寒性の詳細については不明です。そこで、主力品種「サマークイーン」を用いて、寒害が発生する温度について明らかにしたので報告します。
パッションフルーツ「サマークイーン」の2年生鉢植え樹を用いて、平成29年度及び30年度の冬季に-1度、-3度、-5度の温度に4.5時間遭遇させる低温処理を行いました(写真1)。
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写真1.人工気象器での低温処理の様子
低温処理を行った株を5月に露地圃場に定植して栽培したところ、落葉しても主幹が健全であれば収量の低下はみられませんでした。一方、主幹の一部が褐変した株は低温処理しない株と比べて、7から8月の収量は少なくなり、10月の収量は多くなったものの、総収量では3割ほど少なくなりました(図1)。これらから、「サマークイーン」では主幹が褐変する程度の寒害を受けると定植後の収量が低下することが分かりました。
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図1 低温処理後に露地栽培した「サマークイーン」の収穫時期別収量
注1)所定の温度に4.5時間遭遇させる低温処理を行った樹を供試し、平成30年5月に露地圃場に定植し逆L字仕立てで栽培した
注2)寒害発生程度
総収量の低下がみられる主幹の一部が褐変する寒害の発生と、主幹表面最低温度との関係をロジスティック回帰分析で分析したところ、主幹表面最低温度が概ね-2.5度以下となると寒害発生率が急激に高くなると推定されました(図2)。
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図2 人工気象器での低温処理時の主幹表面最低温度と主幹が寒害を受ける確率の関係(平成29年度、平成30年度)
注1)ロジスティック回帰におけるパラメータ推定値:主幹表面最低温度 -6.75(p=0.05)、切片 -20.53(p=0.05)
注2)寒害発生率の100は寒害程度2以上のプロット、0はそれ未満とした
最低気温が氷点下の日における露地圃場の気温と、主幹表面温度を調査した結果、主幹表面温度が-2.5度となった場合の露地圃場の気温は-0.2度から-2.1度であり、気温より主幹表面温度の方が低いことが明らかとなりました。これは冬の晴天で風がない夜にみられる放射冷却によるものと考えられます。
館山の年最低気温(アメダス)は、過去50年間において最も高い年でも-2.4度であり、現状では露地圃場での越冬は困難と言えるでしょう。
一方、施設栽培においては、氷点下にならない程度の加温を行えば、燃料費が抑えられ比較的低コストで越冬させることができると考えられます。
初掲載:令和3年10月
農林総合研究センター暖地園芸研究所
特産果樹研究室
研究員小野瀬優哉
電話:0470-22-2961
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