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更新日:令和4(2022)年9月26日

ページ番号:536055

湿地性カラー新品種「Brilliant・Bell(ブリリアント・ベル)」の育成と品種特性

1.はじめに

君津地域は全国有数の湿地性カラー産地ですが、昭和63年頃から発生したカラー疫病のため、従来の主力品種「チルドシアーナ」から疫病抵抗性を持つ「ウェディングマーチ」に品種転換を余儀なくされました。しかし、「ウェディングマーチ」は開花が春に集中し、需要期の10月から12月に切り花の収穫が少ないこと、花茎が太いこと等の問題があります。また、「ウェディングマーチ」と「チルドシアーナ」を交配した県育成品種「アクアホワイト」(平成14年品種登録)は、花(苞)の色が純白で切り花品質が優れるものの、草勢が弱く、圃場によっては生育が劣ります。そこで、安定した疫病抵抗性と早期開花性を持ち、産地としてバリエーションを増やせるような新たな特徴を持つ湿地性カラーの育成が生産者から望まれていました。今回、「アクアホワイト」以来、20年ぶりとなる新品種「Brilliant・Bell」(写真1)を育成したので紹介します。

写真1「Brilliant・Bell」の花(苞)(JPG:425.3KB)
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写真1 「Brilliant・Bell」の花(苞)

2.「Brilliant・Bell」の育成経過

農林総合研究センター暖地園芸研究所(千葉県館山市)にて、平成21年度から22年度にかけて様々な組み合わせで交配を行い種子を得ました。これらの種子約8万粒を播種し、平成23年度から24年度に疫病抵抗性を持つとみられる177系統を選抜しました。さらにこの中から平成25年度に生育程度や収量性に優れる有望な13系統を選抜しました。これら13系統について、平成26年度から27年度に君津市内の生産者圃場2か所で現地試験を行い、開花期が早く、切り花品質が良好な3系統に絞り込みました。3系統はいずれも種子親を「ウェディングマーチ」、花粉親を「マジョリーホワイト」とする系統でした。生育状況や収量性の調査を続けた結果、3系統のうち「千葉C2号」が有望とされ、令和元年6月12日に品種登録出願に至りました。

デビューに向けて、令和2年に新品種の愛称を一般公募したところ、全国から1,952点の応募がありました。生産者、花の流通関係者、農業関係団体、消費者等で構成する愛称選考委員会で、応募作品の中から品種の特徴、親しみやすさ、インパクトなど、様々な視点から選考した結果、愛称は「Brilliant・Bell」に決定しました。白いベルのような花からのイメージで、未来を輝かせる新しい門出に、お祝いの鐘の音が響きますように、という祈りが込められています(愛称名の「Brilliant・Bell」は令和3年5月11日に商標登録済み)。

3.「Brilliant・Bell」の品種特性

(1) 花は小ぶりで、茎は細い

「Brilliant・Bell」の切り花は、慣行品種「ウェディングマーチ」や「アクアホワイト」に比べて、花(苞)の長さがやや短く、花茎は細いです(表1)。このため、冠婚葬祭等の業務需要のみならず、小型のアレンジやブーケにも使いやすく新たな需要が期待されています。

「Brilliant・Bell」の花(苞)の色は、「ウェディングマーチ」と同色(RHSカラーチャートNN155A)で、純白の「アクアホワイト」(同NN155C)と比較した場合は、ややクリーム色に見えます(表1)。

表1.「Brilliant・Bell」及び慣行品種の切り花品質
品種 切り花長(センチメートル) 花(苞)の長さ(センチメートル) 花茎中央部の太さ(センチメートル) 花(苞)の色
RHSカラーチャート
Brilliant・Bell 70.6 10.4 1.0 NN155A
アクアホワイト 66.4 11.2 1.2 NN155C
ウェディングマーチ 78.8 13.1 1.7

NN155A

注)君津市内の現地2か所で定植2年目に得られた切り花を調査した平均値。
切り花長は得られた切り花全てを、花(苞)は平成28年4月15日以降の切り花を調査。

(2)疫病に強く、収穫本数が多い

「Brilliant・Bell」は、疫病に汚染された現地圃場においても問題なく生育し、圃場に定植して2年目の収穫開始から終了までの株当たり収穫本数は、「ウェディングマーチ」の9.6本に対して「Brilliant・Bell」は25.7本でした。同様に定植して3年目の収穫本数は、「ウェディングマーチ」の13.2本に対して「Brilliant・Bell」は37.4本でした。よって、「Brilliant・Bell」は「ウェディングマーチ」の2.5倍以上の収穫本数が期待出来る多収性品種です。

(3)収穫開始時期が早い

「Brilliant・Bell」は早生性を有しており、定植して2年目及び3年目の10月から12月の株当たり収穫本数は、「ウェディングマーチ」及び「アクアホワイト」に比較して多く推移します(図1、図2)。一般的に10月から12月はカラー切り花の需要期であり、高単価が期待できます。

図1「Brilliant・Bell」及び慣行品種の月別株当たり収穫本数(定植2年目)
図1 「Brilliant・Bell」及び慣行品種の月別株当たり収穫本数(定植2年目)

図2「Brilliant・Bell」及び慣行品種の月別株当たり収穫本数(定植3年目)
図2 「Brilliant・Bell」及び慣行品種の月別株当たり収穫本数(定植3年目)

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4.おわりに

「Brilliant・Bell」の栽培に当たっては、県と品種利用許諾契約の締結が必要であり、許諾契約先の生産者にのみ原原種苗の有償配付が行われます。現在、君津市の生産組合2組織が契約を結んでいます。なお、「Brilliant・Bell」は、令和3年10月から切り花の市場出荷が始まっています。

初掲載:令和4年8月
農林総合研究センター
暖地園芸研究所 野菜・花き研究室
室長 種谷 光泰
電話番号:0470-22-2603

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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