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更新日:令和4(2022)年9月1日
ページ番号:525802
近年、千葉県内でも収益性を向上させるため、促成トマトの養液栽培が増えてきました。この作型は8月に定植し翌年7月まで収穫するため、栽培期間が長く、春以降の草勢低下が問題となっています。養液栽培では、土耕栽培のように土壌病害に強い台木を用いる必要はありませんが、草勢がなるべく強く維持できる台木を利用すると草勢低下を抑えることができます。
強草勢台木とは、根張りが良く、栽培後半まで草勢を維持できる台木のことをいい、大きく分けて栽培種(トマト種)と種間雑種の2種類があります。栽培種台木は青枯病などの土壌病害抵抗性を持ち、どちらかと言えば土耕栽培向きです。種間雑種台木は、トマト近縁種との交雑種で、栽培種台木よりもさらに草勢を強く維持できることを目的に育成されたもので、根域が制限され、根詰まりや根傷みが起こりやすい養液栽培に向いています。促成トマトの養液栽培において、この種間雑種台木に接ぎ木をすると、自根で栽培した場合と比較して、栽培後半まで茎径があまり細くならず、草勢を適切に維持することができます(表1)。また、春先の収量が増加し、最終的に自根と比較して29パーセント増収した結果が得られています(図1)。
試験区 | 第1花房 | 第5花房 | 第11花房 | 第18花房 | 第25花房 |
---|---|---|---|---|---|
自根 | 14.6 | 10.4 | 13.9 | 10.2 | 9.4 |
栽培種台木 (グリーンフォース台) |
13.1 | 9.8 | 13.7 | 10.8 | 8.6 |
種間雑種台木 (TTM079台) |
14.2 | 11.3 | 15.0 | 11.8 | 11.7 |
注1)グリーンフォース、TTM079はどちらもタキイ種苗(株)
注2)穂木「麗容」、定植8月20日、栽植密度10a当たり2,469株、炭酸ガス施用は12月~3月において、10a当たり1時間につき3kgを日の出1時間後~日没2時間前まで行った。
注3)調査日:平成30年7月31日
図1.異なる台木における可販収量(平成30年度)
注)表1と同じ栽培
一方で、種間雑種台木の利用により初期から草勢が強くなりすぎてしまい、空洞果の発生や糖度の低下が起こりやすいという問題点があります。
空洞果は、日射不足等により果実が十分な量の同化産物を得られないと、ゼリー部の発達が悪くなり発生します。特に冬季に発生しやすく、草勢が旺盛となり果実が大きくなる種間雑種台木を利用すると、自根に比べて空洞果率が高まる傾向が見られます(図2)。
図2異なる台木における空洞果率の推移(平成30年度)
注)表1と同じ栽培
対策としては、炭酸ガス施用の実施、外張りフィルムの洗浄や汚れにくいフッ素系フィルムへの交換による光量の確保が有効です。また、栽培初期~冬季までの培養液濃度を慣行の70から80パーセントに設定し草勢を抑えることで、空洞果の発生が最も多い第4から9果房で空洞果を減少させることができます(図3)。さらに、過繁茂とならないよう冬季の摘葉を早めに行い、果実肥大期に同化産物を果実へ転流させることで、空洞果の発生と糖度の低下を抑えることができます。
図3.異なる培養液管理による冬季(第4~第9果房)の空洞果率(令和元年度)
注1)穂木「麗容」、台木「TTM079」、定植8月29日、栽植密度10アール当たり2,371株、炭酸ガス施用は12月から3月において、10アール当たり1時間につき3キログラムを日の出1時間後から日没2時間前まで行った。
注2)培養液はOAT-A処方を用い、定植から徐々に濃くし、
初掲載:令和4年7月
農林総合研究センター
野菜研究室
研究員 橋本 奈都希
電話番号:043-291-9987
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