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更新日:令和4(2022)年12月12日
ページ番号:549162
近年は、集中豪雨が多くなっていること、また水田を利用した野菜等高収益作物の取り組みが増えたことから、ほ場における湿害が多く発生しており、ほ場排水対策が必要です。
ほ場が冠水することは、農作物への大きな被害につながります。地下では水の移動が非常にゆっくりであるため、まずは地表の水(以下「表面水」)を作物の周囲から排出することが、ほ場排水の第1歩です。
明渠とは、地上に出ている部分を開け放した水路で、ほ場の排水対策の中で最も基本となるものです。設置は、ほ場の周囲に沿って20から30センチメートルの深さに溝を掘る額縁明渠を基本とし、ほ場の広さ、土質等に応じてほ場内を貫くようにほ場内明渠を設置します。その際、掘り上げた土で明渠の内側に壁を作らないよう、注意します。
次の作業(畝立てや播種)を円滑にするため、額縁明渠は、前作が終わったらすぐにおこない、圃場の表面水を少しでも早く除去して乾きぐせをつけます。また降雨などで明渠が崩れたら、すぐに修繕し、排水性を維持します。
写真1.崩れた明渠はすぐになおしましょう
水はけの悪い圃場では、ロータリ成形機で畝を立て、排水性のよい根域を確保します。
高畝の設置に当たっては、畝間と額縁明渠を確実につないで、畝間の湛水を迅速に排除します。畝が長い場合は途中で畝を切り、額縁排水口につなぐように施工します。
畝と排水口の落差が大きいほど効果的です(10から20メートルごとにうね間を連結させると理想的です)。
写真2.成形ロータリーで高畝形成
写真3.キャベツの高畝栽培
写真4.畝間と額縁明渠を接続する
レーザーレベラーは、田面・耕盤の凹凸をなくし、排水路に向かって傾斜均平することで、地表の排水を良くする効果があります。レーザーレベラーの使用前に、プラウやスタブルカルチで耕起して圃場を乾燥させておくと、土の移動が容易になり、作業が効率的に行えます。1000分の1(100メートルで10センチメートル)の傾斜でも、排水効果が確認されています(この時も額縁明渠は有効です)。
基盤整備事業により水田等ほ場に敷設されている本暗渠は、地下排水の主軸となる技術です。敷設後、時間の経過によりモミガラ等の疎水材が劣化し、渠溝内へ泥が入り込むことで本暗渠の排水性が低下していきます。そうした場合は、排水性維持のため、暗渠直上を掘削し、疎水材を追加充填しましょう。暗渠の場所が正確にわからなければ、暗渠に直交した方向にトレンチャで掘削し、モミガラを充填しましょう。またモミガラが十分確保できなければ、オーガ等で暗渠直上に5メートルおきに穴を空け、モミガラを充填しましょう。
写真5.モミガラが劣化する前は排水性が高い
写真6.モミガラが劣化すると排水性が悪化
写真提供:千葉県農林総合研究センター
営農側で施工できる地下排水技術として、補助暗渠があります。トラクターに取り付けて施工するものが多く、その効果、性質、価格は多様です。
本暗渠があるほ場は、その方向と直交した方向に施工し、排水効果を高めます。また、額縁明渠を深く掘ることができれば、明渠と補助暗渠孔が接続するように施工すると効果的です。
サブソイラーは、地中にナイフを入れ、心土破砕を行うと共に、ナイフの先端に弾丸の形をしたモールドレーナを取り付けて引っ張ることで土中に水が流れる孔を作ります(弾丸暗渠)。心土破砕と弾丸暗渠の施工を同時に行うのが一般的です。
土を反転させず上下に動かす「くの字型ナイフ」により、下層の土を表に出さずに土を膨軟にし、透排水性の向上を促します。
土質を選ばず、特に耕盤層による排水不良のほ場における効果が高いです。一方、翌年復田を予定している圃場では、漏水過多となる危険があります。
土層をブロック状に切断して動かすことで、暗渠と同程度までの深さに約10cm四方の穴を開け、排水のための「水みち」を作ります。この穴は粘質土では1年以上保持されますが、壌質土や砂質土では短期間で崩壊します。
掘削した溝にモミガラを充填し、簡易的な暗渠を形成する機械です。土壌形状の保存性が悪い砂質土、壌質土に適します。
写真7.サブソイラー
写真8.カットドレーンmini
写真9.モミサブロー
機種名 | 排水機作 | 適応土質 | 適応馬力 | 導入コスト(※) |
---|---|---|---|---|
サブソイラー | 丸状補助暗渠孔形成・心土破砕 | 暗渠孔形成は粘土質向き | 15から170馬力 | 123,000円から692,000円 |
パラソイラー | 心土破砕・土壌膨軟化 | 不適土質なし | 100から230馬力 | 457,000円から825,000円 |
カットドレーンmini | ブロック状の補助暗渠孔形成 | 粘質土向き | 30から60馬力 | 約820,000円 |
モミサブロー | 籾殻埋設溝形成 | 砂質土・壌質土向き | 30から60馬力 | 約510,000円 |
※導入コストは令和3年調べ。現在は変化している可能性があります。
ほ場の排水対策は、明渠の設置を基本として、補助暗渠、暗渠の設置、排水路への接続、周囲の水位等、ほ場から地域外への排出まで、すべて一気通貫して接続されてはじめて効果を発揮します。また、技術によっては、大型機械を使用する必要があり、施工コストや労力が大きな負担となることがあります。事前に土質や排水環境、必要な技術を確認し、施工に当たってはしっかりと計画を立てましょう。
ほ場に設置された明渠や、経年劣化で疎水材が腐植・消失することによる地中の空洞は、乗用作業機等の転倒につながる可能性があります。作業機の経路を確認し、十分な枕地の確保、ブリッジの活用などにより、転倒事故を防ぎましょう。
初掲載:令和4年12月
担い手支援課
専門普及指導室
主任上席普及指導員 吉野 裕一
電話番号:043-223-2913
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