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更新日:令和4(2022)年10月31日
ページ番号:536138
サツマイモでは、ウイルスの感染による収量・品質の低下を防ぐため、ウイルスフリー苗が利用されています。ウイルスフリー苗の元になる株(基核株)は、年月の経過とともに変異が生じ、特性が劣化していくことが知られています。JA全農ちばが産地に供給していた「べにはるか」の系統「07-5」は、「べにはるか」の配付開始から約10年が経過し、変異や栽培条件の変化が原因と考えられる“細長いいも”の発生が目立つようになり、A品率の低下が問題となっていました。そこで新たに、いもが短く、揃いの良い優良系統の作出に取り組み、令和2年度に優れた形質を持つ新系統「S-3」(写真1)を選抜し、令和4年度より「07-5」と置き換わる形でJA全農ちばから各JAを通して、県内の農家向けに供給が始まっています。今回は、この新系統「S-3」の特性について紹介します。
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写真1 べにはるか新系統「S-3」
平成27年度にサツマイモの主要病害であるつる割病と立枯病の抵抗性について検定を行った結果、「S-3」のつる割病抵抗性は“強”、立枯病の抵抗性は“やや弱”で、いずれも現在、配付されている主要系統の「07-5」と同程度であることが分かりました。「べにはるか」は系統に関係なく、立枯病にやや弱いので、同病の多発圃場での作付は控えましょう。
平成30年度から令和2年度に成田市と香取市の現地圃場で、令和2年度に農林総合研究センター畑地利用研究室(香取市)の場内圃場で行った栽培試験の結果、「S-3」の収量、平均いも1個重、株当たりいも数は「07-5」と同程度であり、収量に当たる総いも重に差はなく、同等の収量が認められました(図1)。イモの形状については、イモ長が短くなったことで “細長いいも”の発生率は大幅に減少し、A品率が高くなりました(図1、図2)。
図1.「S-3」と「07-5」の総いも重とA品重
注1)栽培は畝間90センチメートル株間30センチメートルの斜め植えとし、令和2年5月28日に植付け、10月14日に収穫した。
注2)A品は100から699グラムの範囲で外観の優れるものとした。
注3)1区10株、3反復。
図2.「S-3」と「07-5」の細長いイモの発生率
注1)図1の注1と同じ
注2)イモの長さが直径の5倍以上を細長いイモとした
令和元年度の現地5圃場に供試したいもを翌年の6月まで貯蔵して、腐敗状況と蒸しいもの糖度を調査しました。「S-3」、「07-5」ともに腐敗率は5パーセント未満で「べにはるか」の特長である優れた貯蔵性が維持されていました。蒸しいもの糖度についても同程度でしっかりとした甘みがありました。
「S-3」は、「07-5」と同じ栽培条件で系統特性が発揮されており、着いも数や肥大性にほとんど差がないことから、施肥、栽植密度や植付け方法等を変更せずに導入が可能です。
初掲載:令和4年9月
農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
畑地利用研究室
研究員 山下 雅大
電話番号:0478-59-2200
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