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更新日:令和4(2022)年10月31日
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千葉県では、「3X ブラックジャック」(ナント種苗、以下、ブラックジャック)が6月中旬から7月収穫における黒皮種なしスイカの優良品種として選定され、主要品種の一つになっています。しかし、出荷期間が短く、生産量も少ないためにまだ消費者にはあまり知られていません。また、本県における栽培方法が確立されておらず、安定生産に課題がありました。そこで、良食味の黒皮種なしスイカを5月中旬から8月までの長期間安定的に出荷するための栽培方法を確立しましたので、そのポイントを解説します。
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写真1.黒皮種なしスイカ「ブラックジャック」
スイカは通常3番花に着果させますが、平成30 年の5月どりで3番花に着果させたところL玉(5から6キログラム)以下の果実が多くなる傾向がありました(表1)。令和元年は5番花に、令和2年は4番花に着果せたところ交配後50日程度で5月中下旬からL玉以上の果実を収穫することができました。
栽培年 | 定植日 | 着果位置 | 平均交配日 | 収穫開始日 | 交配から収穫までの日数 | 果実重(キログラム) | 中心糖度(Brix) | 空洞果率(パーセント) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平成30年 | 2月15日 | 3番花 | 3月28日 | 5月11日 | 48 | 4.6 | 12.3 | 25 |
令和元年 | 2月15日 | 5番花 | 4月11日 | 5月24日 | 49 | 6.6 | 12.9 | 5 |
令和2年 | 1月29日 | 4番花 | 3月27日 | 5月15日 | 52 | 6.5 | 12.8 | 0 |
注1)子づる4本整枝2果どり、2倍体の雄花で手交配。
注2)平成30年は1月3日播種、1月12日接木、令和元年は1月4日播種、1月11日接木、令和2年は12月13日に播種、12月20日接木。
ハウス栽培では、生育をコントロールするためのかん水管理が重要となります。そこで、5月下旬から6月収穫のハウス栽培において交配前のかん水方法の影響について調査しました(表2)。交配前のかん水頻度の比較では、かん水多頻度区はつる新鮮重が重く生育が旺盛になり、かん水少頻度区に比べて果重が重くなりました(1回あたりのかん水量は1株あたり8から9リットルで同じ)。ハウス栽培においては交配まで多頻度のかん水により株を十分に生育させることで、果実が肥大しやすくなります。
表2 ハウス栽培における交配前の潅水と交配後収穫日数が果実品質に与える影響(令和元年)
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「ブラックジャック」は、通常の種あり品種と比較して、梅雨時期の日照不足による着果不良が発生しやすい傾向があります。そこで、交配期に日射量が少なかった令和元年7月に、交配時に雌花の着果節位から3節目で摘心する「摘心区」を設け、摘心が着果率に及ぼす影響を調査しました。その結果、摘心なしの慣行区では果実が全く着果しなかった株が20パーセント、着果数が1果の株が44パーセントとなりましたが、摘心区では1果株は同等であったものの全く着果しなかった株は6パーセントと少なく、50パーセントの株で正常に着果し、摘心による着果率の向上が確認できました(表3)。摘心区の果実重や中心糖度には慣行栽培と比較して、差はみられませんでした(データ略)。
表3.日照不足年での露地トンネル栽培における摘心が着果率に与える影響(令和元年)
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注1)トンネル栽培(ベッド幅150センチメートル、長さ20メートル、株間90センチメートル、農ビでトンネル被覆)
子づる4本整枝2果どり、2倍体の雄花で手交配。
注2)令和元年5月10日に播種(台木5月7日)、5月16日接木、6月5日追肥及びマルチング、6月10日定植、7月18日手交配。
図1に5月中旬から8月収穫の「ブラックジャック」栽培暦と栽培のポイントを示しました。台木の播種は穂木よりも0~3日程度早く行い、特に低温期は早めます。日焼け対策としてパスライト等を用い、着果後25日頃からトンネル南西側を遮光します。
5から6月どりハウス栽培では、かん水は交配までは多頻度で行い、4番花以降に着果させること、7から8月どり露地トンネル栽培では、梅雨時期の低日照時による着果率の低下が予測される際には、摘心により着果を促進させることで長期の安定生産につながります。
積算温度1,100℃(ハウス栽培で交配後50日、露地トンネル栽培では交配後40日程度)が収穫目安です。
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図1 「ブラックジャック」の栽培暦
初掲載:令和4年9月
農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
東総野菜研究室
研究員 芹川 誉
電話番号:0479-57-4150
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