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更新日:令和4(2022)年6月8日
ページ番号:510241
酪農経営は、輸入飼料の価格高騰や流通量の減少、周年拘束性の高い労働条件、環境問題等、経営を取り巻く様々な問題によって大きな影響を受けています。
このような環境下にあっても、特徴的な取組によって諸問題に対処し、安定とゆとりある経営を実践している山武地域の酪農経営事例を紹介します。
経産牛38頭、育成牛20頭、フリーバーン牛舎(牛が自由に歩き回って寝ることが出来る構造の牛舎)による家族経営(家族3名+パート1名)です。また、飼養の過程で発生する家畜糞尿は堆肥化処理を行い、貴重な有機肥料資源として自給飼料の生産(デントコーンとソルゴーの混播8ヘクタール)に利用しています。
最大の特徴は、種雄牛による自然交配(まき牛)を取り入れた繁殖管理システムと、自家産生乳を利用した六次産業化に取り組んでいることです。
自然交配を取り入れた高い繁殖性とカウコンフォート(乳牛の快適性)によって、年間を通じて安定した高乳量を維持しながら、生乳の一部を利用したアイスクリーム製造を行うことにより、収益性の向上を図っています。
牛群改良のための後継牛の確保以外は、全ての経産牛を自然交配の対象としており、繁殖作業に係る諸経費と労働時間を大幅に削減しています。体型や種雄牛との相性によって、自然交配がうまくいかない一部の経産牛については、牛群検定成績表とスマート農業技術である発情発見装置を併用した発情発見に基づく人工授精を行い、牛群全体の繁殖性を高めています(令和3年の分娩間隔404日)。
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写真1.自然交配に供されている種雄牛
牛舎屋根と壁面への遮熱塗料の施工とトンネル換気によって、猛暑期の牛への影響を最小限に抑えています。
また、乳牛の生産性を大きく低下させる蹄病の予防を徹底しており、病原微生物の農場への持ち込みを防ぐため預託や外部導入は行わず、削蹄も年に2回全頭実施しています。
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写真2.暑熱塗料施工牛舎
年間3,500キログラムから7,000キログラムの生乳を利用し、アイスクリームを製造・販売しています。自家産生乳の付加価値を高めることができるため、収益性の向上に大きく貢献しています。
地域で収穫された野菜や果物を原料にしたアイスクリームを製造し、地域の直売所や道の駅等で販売しています。これまでに製造したアイスクリームは50種類を超え、現在は、常時約10種類のバリエーションに富んだアイスクリームが楽しめます。
また、大手のアイスクリームメーカーでは受託できない小さなロットにも柔軟に対応できるため、地域の農業者等からアイスクリームの受託製造も請け負っており、地域農業の活性化に大きく貢献しています。
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写真3.地域の野菜や果物を利用したアイスクリーム
独自の繁殖管理システムと、牛を快適・健康に飼養し、生産性を高く維持する飼養管理体制によって、経産牛1頭当たりの年間乳量は、令和3年実績で10,000キログラムを超えており、組合、千葉県、都府県の平均を大きく上回っています。
土地条件等の制約により規模拡大が難しい酪農経営にあっても、6次産業化による経営の多角化によって所得の向上を実現しています。
周年拘束性が高いとされる酪農経営にあっても、特徴ある取組によって生み出された時間と収益を、自給飼料の生産やTMRの購入に充てることにより、さらなるコスト削減と省力化を生み出すという好循環経営を達成しています。
初掲載:令和4年3月
山武農業事務所
改良普及課
普及指導員 花本威士
電話番号:0475-54-0226
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