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更新日:令和5(2023)年7月24日
ページ番号:594164
観賞用樹木の繁殖では、遺伝的に同一の個体が大量に得られるため、挿し木が一般的に行われています。しかし、オリーブは他の樹種と比べ挿し木後の養生が難しいため、人気の割に取り組みにくい品目となっています。そこで、オリーブの安定生産を可能とする挿し木の適期や養生時の光条件、かん水方法について明らかにしたので紹介します。
オリーブは難発根性樹種として知られています。挿し穂が発根するまでに4~8週間かかりますが、その期間のわずかな環境変化に敏感で、条件が悪いと簡単に枯死してしまいます。そのため、挿し木の時期の選択は重要です。母樹の栄養状態が優れるため、挿し穂が得やすい6月以降の時期で比較したところ、真夏と比較して気温が落ち着いてきた9月の発根率が約80%と最も高く、この時期が挿し木の適期であることが分かりました。
挿し穂は、根が無く、葉も少ない状態ですが、光合成は行われています。光合成で作られた糖類は根の発育に使われるため、挿し木中も一定の光を当てることが重要です。人工気象室で光量を変えて調査したところ、光条件0~1,700luxと比べ、12,000luxの発根率が61%と高くなりました(表1)。この光量は9月の自然光下の概ね80%の遮光率に相当し、遮光率70-80%の遮光ネット下で養生するのが適当と考えられました。
光条件 | 発根率(%) | 根数 | 最大根長(mm) |
---|---|---|---|
12,000lux | 61.1 | 2.7 | 74.6 |
1,700lux | 52.8 | 3.0 | 55.3 |
0.3lux | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
挿し木床の温度が高すぎると挿し穂が水分を失いやすくなってしまいます。床温が30℃を超えないように、育苗温室は十分な換気を行い、必要に応じて外部遮光も併用してください。
挿し穂が枯死する原因の1つが雑菌等の発生です。雑菌は濡れ時間が長いと繁殖しやすく、湿度の高い挿し木床では注意が必要です。頭上散水すると助長されますので、底面給水トレイなどを使い、セルトレイの底面から給水させることで挿し穂の濡れを回避できます。底面給水を行うと、発根率が高くなり、根数が多くなるメリットもあります(写真1)。
写真1灌水方法別の挿し木の様子(左:底面給水、右:頭上散水)
今回の試験結果を組み合わせて挿し木を行うことで写真2のように良好な苗を得ることができました。オリーブは観賞用の庭植木や観葉植物として需要が高まっています。安定した挿し木繁殖を行うことでさらなる生産拡大が期待されます。
写真2好適環境下の挿し木繁殖
初掲載:令和5年6月
農林総合研究センター
花植木研究室
研究員 髙橋 玄
電話番号:043-291-9988
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