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更新日:令和4(2022)年7月21日
ページ番号:518717
稲ホールクロップサイレージについて、酪農家からは籾が少なく茎葉の割合が多い品種が求められており、茎葉型専用品種である「たちあやか」「リーフスター」「たちすずか」の3品種が香取地域に定着しました。
ただし、この3品種は収穫が8月中旬以降となるため、現在栽培されている主食用米品種から専用品種への転換や収穫作業の分散を考えた場合、梅雨明けの7月下旬からお盆前の8月上旬にかけて収穫可能な茎葉型品種が必要となります。
そこで、令和2年に農研機構より発表された茎葉型の早生品種「つきはやか」について、令和3年に試験栽培を行いました。対照として、この時期に稲ホールクロップサイレージ用として栽培される主食用米品種「コシヒカリ」と比較しました。
3月28日は種、無加温出芽で、コシヒカリと同じ管理で育苗できることが確認できました。なお、は種する籾の大きさについては調査していませんが、「令和4年播種用 飼料用イネの栽培と品種特性」にあるとおり、籾千粒重は「つきはやか」24.5グラム、コシヒカリ24.7グラムであり、「つきはやか」の籾は「コシヒカリ」より若干小さいと考えられます。は種する際は、品種切り替え時に、は種機からの種の落ち具合を確認してください。
「つきはやか」「コシヒカリ」とも、植え付け本数は1株あたり5本、栽植密度は坪45株で移植しました。「つきはやか」の茎数は「コシヒカリ」の半分程度で推移し、出穂前は1株あたり16.5本となることから、「つきはやか」は分げつが少ない品種と考えられます。幼穂形成期以降の生育を見ると、「つきはやか」は「コシヒカリ」より草丈が高く、葉色が濃く生長しました。
収穫時の草丈は、「つきはやか」は約120センチメートル、「コシヒカリ」は約100センチメートルでした。収量について10アールあたり「つきはやか」は2,100キログラム、「こしひかり」は2,500キログラムと大きな差が出ました。これは茎数の不足が原因と考えられます。
は種日 | 移植日※ | 幼穂形成期 | 出穂期 | 8月2日時点 | |
---|---|---|---|---|---|
「つきはやか」 | 3月28日 | 5月1日 | 6月21日 | 7月23日 | 乳熟期 |
「コシヒカリ」 | 3月28日 | 4月30日 | 6月20日 | 7月18日 | 糊熟期 |
は種日について「コシヒカリ」と「つきはやか」を同日に揃えた場合、令和3年の調査結果から、移植日と幼穂形成期はほぼ同日、出穂期は約5日「つきはやか」が遅い結果となりました。生育ステージで考えた場合、「つきはやか」は7月下旬には乳熟期を迎え、収穫可能となるため、「つきはやか」による収穫の前進化は可能と考えます。
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写真1 令和3年8月2日収穫時調査の姿(赤白の棒の間隔は20センチメートル)
(JPG:303.5KB)
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写真2 令和3年8月6日「つきはやか」収穫
虫害について、イネミズゾウムシやイネドロオイムシ等が「つきはやか」「コシヒカリ」ともに発生していましたが、生育に影響が無い程度でした。
病害について、紋枯病が「つきはやか」「コシヒカリ」ともに発生していました。紋枯病が毎年発病するほ場では被害を拡大させないため薬剤による防除が必要と考えます。
なお、いもち病について「コシヒカリ」には発生していましたが、「つきはやか」には発生が確認されませんでした。
多収を求めた場合、「つきはやか」は分げつが少ないため、坪45株植えでは茎数が足らず収量は低くなると考えます。面積当たりの茎数を確保するには、田植機の設定で株間を詰めるなど、栽植密度を上げたほうが収量は増えると考えます。
穂については、「つきはやか」「コシヒカリ」とも穂の長さが約20センチメートルあります。ただし、収穫調査時に刈り取った株をつかむと穂の重さが手に取ってわかるほど「つきはやか」は軽く、籾が見た目でも少ないため籾数を数えたところ、「つきはやか」は1穂あたり50.4粒、「コシヒカリ」は1穂あたり72.7粒でした。「つきはやか」は、穂は長くても籾が少ないと考えます。
「つきはやか」の令和3年作付けは試験栽培で1ほ場20アールでした。「つきはやか」の種子は令和4年は種用から販売が始まり、「つきはやか」の種子の注文量から香取地域では約5ヘクタールに栽培が拡大したと予測します。今後、良質な稲ホールクロップサイレージが生産されていることを期待します。
参考資料
「令和4年播種用飼料用イネの栽培と品種特性」一般社団法人日本草地畜産種子協会
初掲載:令和4年5月
香取農業事務所
改良普及課
主任上席普及指導員
清宮宏貞
電話番号:0478-52-9195
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