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更新日:令和4(2022)年6月15日
ページ番号:516665
(1)早期栽培では、気温が低い時期に代かき、田植えを行うため、雑草の発生が長期にわたり続きます。
(2)発生量が多い草種は、コナギ、ノビエ等の一年生雑草、種子繁殖するイヌホタルイ等の多年生雑草です。
(3)多年生雑草の中でオモダカ、クログワイ、コウキヤガラは防除が難しいので、水田に侵入させないよう徹底した管理が必要です。
以上の雑草発生の特徴を踏まえ、除草剤を使用しない栽培では、耕種的抑草技術だけでなく、水田用除草機による中耕除草を組み合わせた除草対策が必要であり、除草対策の期間を長くとることが必要です。
ノビエ
コナギ
ホタルイ
写真1.水稲有機栽培の主な雑草
必ず、耕種的抑制技術と水田用除草機による中耕除草を組み合わせます。
農研機構によって高能率水田用除草機が開発され、みのる産業株式会社(4条、6条、8条用)、株式会社オーレックス(6条、8条用)の2社から水田用除草機が市販されています。
農研機構の作成した「有機栽培の手引き」による基本的な機械除草の方法は、次のとおりです。
(1)中耕除草は移植後3回行います。
1回目の除草作業は移植後7日以内に必ず行います。
2回目は1回目の7から10日後に作業を行います。
3回目は2回目の7から10日後に作業を行います。
(2)除草時の水深は、3から5センチメートルとします。
(3)除草機の除草部(フロート)の高さは、中耕後にイネ苗が少しなびく状態になるように調整します。
(4)除草作業開始時に、イネ苗の状態や雑草の浮き上がりを確認します。
雑草が浮き上がらない場合やイネ苗が起き上がらない場合は、ローターやレーキの高さ、深さ、速度を調節します。
千葉県農林総合研究センターでは、水稲品種「コシヒカリ」の中苗を5月中旬に移植した有機栽培において、ノビエ、コナギ及びホタルイに対して除草効果が高く、収量性に問題ない中耕除草時期及び回数を明らかにしました。
(1)従来の方法:3回行う中耕除草の時期は、移植1週間後、2週間後、3から4週間後です。
(2)研究成果:2回で済む中耕除草の時期は、移植1週間後とその10日後頃です。
水稲有機栽培における「コシヒカリ」中苗の5月中旬移植では、無除草時の主要雑草の積算発生率が90パーセントに達するまでの日数は、ノビエで2週間程度であるのに対し、コナギ及びホタルイでは移植4週間程度と発生が遅くなります(図1)。
これまでの機械除草の方法である移植1週間後及び2週間後の2回中耕除草では、コナギ及びホタルイの残草がみられますが、移植4週間後に3回目の中耕除草を行うと残草したコナギ及びホタルイに対しても高い除草効果を示しました。2回中耕除草でも、2回目の中耕除草を3から4日遅らせて移植1週間後とその10日後(移植2.5週後)に行うと、3回中耕除草と同程度の除草効果が得られました(図2)。
これまでの移植1週間後、2週間後の2回中耕除草では、雑草害により3回中耕除草よりも籾数が減少しました。一方で、2回中耕除草でも、2回目の中耕除草を移植2.5週後に遅らせることにより中耕除草3回と同程度の除草効果を得られ、籾数も同程度となり、中耕除草3回に匹敵する精玄米重を得られました。
なお、この試験結果は、中耕除草機として、和同産業株式会社製MSJ(本機)及びSC4(作業機)を使用した結果です。クログワイ、オモダカ、コウキヤガラ等の多年生雑草が多発する水田では検証が不十分であるため、事前に発生する雑草に留意してください。
写真2.動力型中耕除草機を用いた移植1週間後の中耕除草の様子
注1)深水状態(8センチメートル程度)で中耕することにより、雑草と水に浮遊させて防除する(写真2-1作業の様子、写真2-2中耕除草中の作業機)
注2)移植1週間後の中耕除草後、水上に浮遊する雑草(写真2-3)
注3)使用した中耕除草機は和同産業株式会社製MSJ(本機)及びSC4(作業機)
初掲載:令和4年4月
農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
水稲温暖化対策研究室
主任上席研究員 藤代 淳
電話番号:043-292-0016
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