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更新日:令和5(2023)年1月26日

ページ番号:7389

砂質土を用いた輸出用植木類の生産技術

1.はじめに

EU諸国や中国における日本庭園ブームを受けて、全国的に植木・盆栽類の輸出が急増しています。植木輸出の最も大きな課題は、輸出相手国における植物検疫時に土壌から植物寄生性線虫が検出され、輸入が差し止められることです。対策としては、根洗いによって土壌を除去し、ピートモスを使っての鉢上げする方法が有効ですが根洗い作業には多くの労力と時間を要することが新たな問題点としてあげられています。根洗いが容易となる植木類の生産方法として、砂質土壌を用いる栽培が考えられました。そこで、砂質土壌の種類や適正な施肥量を検討し、従来の黒ボク土による栽培と同等の生育を確保できる生産技術を開発したので紹介します。

2.輸出用植木類の生産に適した砂質土壌

植木生産に利用が可能な山砂と川砂を用いてイヌマキ、イヌツゲ及びキャラボクを植栽して生育を比較したところ、いずれの樹種も山砂の方が川砂より生育が旺盛で、根洗することを前提とした輸出用植木類の生産に適していました(表1)。山砂は、掘り上げ時の根鉢の大きさに合わせて植え穴に客土します。

表1土壌の種類の違いと各樹種の生育
樹種 投影面積増加率(パーセント)
黒ボク土 山砂 川砂
イヌツゲ 200 183 115
イヌマキ 153 105 59
キャラボク 39 61 23

注1)投影面積=樹高×樹幅
注2)投影面積増加率=(試験終了時影面積-試験開始時影面積)/試験開始時投影面積×100
注3)山砂は香取地域の成田層から採取した

 

3.山砂に植栽した植木類への適正施肥量

山砂は、黒ボク土に比べて窒素肥沃度が低いことから、黒ボク土並の植木類の生育を維持するためには、施肥量を考慮する必要があります。施肥時期は4月から5月とし、イヌマキでは緩効性肥料を用いて黒ボク土の標準量(窒素成分100平方センチ当たり0.5から0.7グラム)の2倍量を、イヌツゲ・キャラボクでは黒ボク土の標準量と同量を根の張っている範囲の土壌表面に、年1回均一に施用します(写真1、表2)。

写真1山砂における施肥量の違いとイヌマキの生育

注1)左から黒ボク土:標準施肥量、山砂:0.5倍、標準、2倍、3倍施肥
注2)標準施肥量(窒素成分100平方センチ当たり年間0.5から0.7グラム)
注3)山砂は香取地域の成田層から採取した

表2山砂における施肥量の違いと各樹種の生育
樹種 投影面積増加率(パーセント)
黒ボク土 山砂
標準 0.5倍 標準 2.0倍 3.0倍
イヌツゲ 296 156 221 285 287
イヌマキ 197 118 202 292 290
キャラボク 285 203 234 213 229

注)投影面積,投影面積増加率,標準施肥量,山砂の採取地は,表1と同じ

4.山砂で栽培した植木類の根洗い時間

山砂で栽培したイヌマキ、イヌツゲ及びキャラボクは根洗いが容易で、根洗い時間は黒ボク土に比べて30パーセント程度短縮されます(図1、写真2)。

図1山砂で栽培したイヌマキ造形樹の根洗い時間

写真2根洗いを行ったイヌマキ造形樹(樹高2メートル,根鉢直径60センチメートル)

5.終わりに

山砂を用いて輸出用植木類を栽培することにより、線虫対策である根洗い・鉢上げの作業効率の向上が可能になります。また、根鉢土壌の洗い残し等が減るため、線虫汚染のリスクが軽減されて安全な輸出が可能となり、千葉県産植木の安全性と品質への信頼性が高まります。

初掲載:平成28年12月
農林総合研究センター
花植木研究室
室長加藤正広
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お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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