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更新日:令和5(2023)年12月21日
ページ番号:3103
地域社会においては、障害のある人への誤解や偏見が今なお見られ、障害のある人は日常生活の多くの場面で不利益を余儀なくされている、という現実があります。そのような中において、平成25年6月に障害のある人への差別を禁止する障害者差別解消法が成立し、平成26年1月に障害のある人の基本的自由の尊重を確保し、障害のある人の固有の尊厳を尊重することを目的とした障害者権利条約が批准されました。今、障害のある人の権利擁護に関して大きな転換期を迎えています。障害者権利条約を批准するために、国内において障害者基本法の改正、障害者総合支援法の施行といった制度改革も行われたところです。
なお、千葉県においては、障害者差別解消法の施行に先駆け、障害のある人への差別を禁止した全国初となる障害者条例が平成18年に制定、翌19年に施行されました。しかし、その認知度は、直近の世論調査において約20パーセントであり、今後も、この条例の周知がより一層求められています。
障害のある人への差別の背景として、障害のある人への理解不足が挙げられます。そこで、障害のある人に対する理解を促進する取組がより重要となります。子どものころから「障害」に関する知識を持つことで、差別を減らすことができる可能性があると言われています。そこで、福祉教育への取組等を進める学校を福祉教育推進校として毎年20校程度新たに指定し、その活動を支援しています。また、障害者条例に基づき、16障害保健福祉圏域に1名ずつ配置された広域専門指導員が学校を訪問するなどの広報・啓発活動を行ってきました。さらに、県立学校については、学校関係者の会議などにおいて、障害者条例に関する啓発活動を行ったところです。今後は小中学校に対象を広げつつ、教育関係者への広報や連携のあり方について検討をしていく必要があります。
また、差別事案の中には制度や慣習等が背景にあり、構造的に繰り返されているものがあります。例えば、障害のある人に対する不動産の賃貸に関する問題があります。これについては、障害者条例に基づく障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり推進会議(以下「推進会議」という)において検討を行いました。
平成28年4月から施行される障害者差別解消法では、障害のある人に対して合理的配慮を行うことが、国や地方公共団体においては法的義務とされました。同法が円滑に施行され、障害のある人に対する合理的な配慮が行われるように、障害者条例と併せて周知を行うことが必要です。
ナンバー | 項目 | 25年度実績 | 27年度 | 28年度 | 29年度 |
---|---|---|---|---|---|
1 |
障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例を知っている県民の割合(%) | 18.3 |
23.0 |
25.8 |
28.0 |
障害のある人が地域の一員としてその人らしく生活するためには、障害のある人に対する権利擁護の体制が構築されている必要があります。これには、虐待が発生したときなどに対応する緊急的な場合と、日常生活の中で、金銭管理や財産管理、意思決定・自己決定の支援等を行う場合があり、いずれの場合も支援者一人だけでは対応できるものでありません。障害のある人の周囲にいる関係者・関係機関の連携・ネットワークづくりが重要になります。
特に、権利侵害の最たるものである虐待については、平成24年10月に障害者虐待防止法が施行され、障害のある人の尊厳を害する虐待の防止に関する法的整備がなされました。これは、障害のある人の権利擁護の観点からみると大きな流れの一つと言えます。障害のある人は「障害があるから」という理由で、他の人に比べて不利益を強いられることがあり、それは障害のある人に対する「差別」や「虐待」といった行為に結び付いています。
障害のある人への虐待をいかに未然に防ぐか、ということも課題の一つとなります。特に、千葉県袖ヶ浦福祉センターで発生した虐待事件の検証結果によると、施設虐待の防止には施設の閉鎖性の解消が重要であるとされています。
また、虐待が発生してしまった場合には、各関係機関が迅速に連携し、対応する必要があります。その結果、虐待を受けた人が被る身体的、精神的な傷を最小限度に抑えることができます。しかし、障害のある人は虐待を受けていてもなかなか自分から被害を訴えられないことが多いため、いかに早く支援員や施設従事者、家族等の周りの人が、異変に気づくことができるかが重要となります。そこで、地域社会で障害のある人に関わるすべての人が、権利侵害に対する意識を高く保つことができるようになれば、虐待を発見できる可能性は格段に高まります。
養護者による虐待は、家族が介護に疲れてしまったこと等を原因とし、家庭内で発生することから、表に現れにくいケースもありますが、障害者虐待防止法の施行により18歳以上の障害のある人に対する虐待についての市町村への通報が義務付けられ、通報を受けた市町村は、安全確認や事実確認のための立入調査や養護者による障害のある人への虐待の防止及び被虐待者の一時的な保護などの措置を講ずることができるとされました。
施設従事者等による虐待については、虐待防止の制度が整っていても、虐待に関する情報がしかるべき機関に提供され、適切に対応がされなければ機能しないことが、千葉県袖ヶ浦福祉センターで発生した虐待事件の教訓として示されました。また、施設従事者等による虐待については、監査等の取り締まりだけでは限界があり、生活空間の開放性を高め、地域社会との交流の充実を図る必要がある、との指摘もあります。
使用者による虐待は、通報・届出の全体に占める割合は多くはないものの、労働基準法等の労働関係法規の違反について、地方労働局が中心となって対応しています。
権利擁護体制には日常的な権利行使の支援という異なる側面があります。意思決定・自己決定の支援や金銭管理、財産管理などは、障害のある人が日常生活を送る上で必要な支援となりますが、これに関しては、障害のある人によってどの程度支援が必要なのか、見極めて支援を行う必要があります。その際、支援の決定には行政機関のみならず、普段から本人と接している支援者、家族、施設職員等の関係者が連携して取り組んでいく必要があります。特に、本人の支援を決定するには、本人が日常的に信頼している支援者や家族等の協力がないと、本人の希望に沿った支援が難しく、周囲の意見に左右されることなく、本人の立場に立って本人を代弁することのできる人を含んだ、関係者間のネットワークづくりが必要です。
また、成年後見制度は、判断能力が不十分な人の意思決定を後見人が補う制度です。しかし、この制度は、障害のある人の権利を擁護する一方で、使い方によっては、障害のある人自身の権利を制約し、後見人に多大な権限を与える側面もある制度です。本人の財産等を守るために必要である反面、制度の使い方によっては障害のある人の権利を侵害してしまう恐れもあります。後見人が障害のある人の金銭を流用してしまう経済的虐待に該当する事例もあります。障害のある人の成年後見は高齢者に対する成年後見と異なり、支援期間が長く、成年後見人の負担は重く、いわゆる親亡き後、後見人が亡くなってしまった後、残された被後見人の支援はどうするのか、どのように引き継いでいくのか、という問題もあります。
ナンバー | 項目 | 25年度実績 | 27年度 | 28年度 | 29年度 |
---|---|---|---|---|---|
2 |
虐待防止アドバイザー派遣数 | 6 |
8 |
10 |
13 |
障害のある人が地域において生活する上で、相談することができる場所は欠かすことができません。しかし、障害のある人やその家族からは、何をどこに尋ねたらいいかわからないという声があります。そこで、障害のある人がそれぞれ生活する地域において相談支援が受けられるよう、体制を整備することが必要です。千葉県には、障害者条例に基づき市町村単位で配置されている約600名の地域相談員と、その相談員に対して専門的見地から助言・指導を行うために、障害保健福祉圏域ごとに配置されている16名の広域専門指導員がいますが、その存在について十分知られていない状況にあります。
そこで、あらためて市町村の協力を得ながら周知活動を行い、指導員や相談員が住民にとって、身近に相談できる地域に密着した相談先として認知されるよう努める必要があります。また、障害のある人から相談があった場合に、相談の窓口を広げ、どこの窓口に相談が入っても、関係者間で情報の共有が行われ、必要に応じて県の地域相談員が障害保健福祉圏域にとらわれず活動できる等、適切な対応ができる仕組みを整えることが重要です。
ナンバー | 項目 | 25年度実績 | 27年度 | 28年度 | 29年度 |
---|---|---|---|---|---|
3 |
千葉県相談支援アドバイザー配置数 | 32 |
32 |
32 |
32 |
4 |
障害者条例に係る相談件数のうち地域相談員が関わった件数の割合(%) | 15.5 |
33 |
35 |
38 |
「人材」を育成・確保することは、サービスの質を維持する上で不可欠なことです。
障害のある人とのコミュニケーションを支援する人材としては、手話通訳者、要約筆記者、点訳・朗読奉仕員、盲ろう者通訳・介助員がいます。これら人材の確保、育成が求められています。
現在、千葉県においては、障害のある人との意思疎通を支援する人材の育成・派遣事業を行っています。しかし、今後は、従来の枠組みにとらわれない意思疎通支援の拡充や、事業の強化が必要となります。
手話通訳者・要約筆記者については、聴覚障害のある人とのコミュニケーションを支援する担い手として養成研修を行っていますが、障害者総合支援法の施行により、手話奉仕員養成研修が平成25年度より市町村実施となったことから、県の取組についてあらためて検討していく必要があります。
盲ろう者向けの通訳・介助員については、盲ろう者の社会参加と自立に役立つように、年1回、定員20名の研修を行っています。しかし、今後は研修内容のより一層の充実が求められています。
点訳・朗読奉仕員の養成については、近年、中途失明者が増加していることから、よりニーズが高まっているものの、養成講座の受講希望者が定員を下回るという状況となっています。
ナンバー | 項目 | 25年度実績 | 27年度 | 28年度 | 29年度 |
---|---|---|---|---|---|
5 |
手話通訳者・要約筆記者養成研修事業の実養成講習終了見込者数 | 98 |
80 |
100 |
60 |
手話通訳 |
44 |
40 |
40 |
40 |
|
要約筆記 |
0 |
0 |
20 |
20 |
|
要約筆記移行研修(平成28年度まで実施) |
54 |
40 |
40 |
0 |
|
6 |
盲ろう者向け通訳・介助員養成研修事業の実養成講習終了見込者数 | 13 |
16 |
16 |
16 |
7 |
手話通訳者・要約筆記者派遣事業の実利用見込み件数 | 396 |
375 |
375 |
375 |
手話通訳 |
271 |
236 |
236 |
236 |
|
要約筆記 |
125 |
139 |
139 |
139 |
|
8 |
盲ろう者向け通訳・介助派遣事業の実利用見込み件数 | 1,062 |
1,066 |
1,066 |
1,066 |
9 |
点訳・朗読奉仕員の養成人数と研修回数(養成人数) | 46 |
46 |
46 |
46 |
点訳・朗読奉仕員の養成人数と研修回数(研修回数) | 2 |
2 |
2 |
2 |
現代社会において情報は、日常生活を送る上で大変重要なものとなっています。障害の有無に関わらず情報には得る権利のみならず発信をする権利があるため、情報に係るバリアの解消に努めなければなりません。そのため、合理的な配慮の普及に重点を置き、障害のある人もない人も、「知る権利」「話す権利」の保障された情報・コミュニケーションバリアフリー社会の実現に向けた取り組みが必要です。また、情報の伝達に限らず意思の疎通やお互いに理解をし合うことが双方向のコミュニケーションにおける重要なポイントを担います。
特に、情報機器の発達に伴い、機器の操作方法を理解し適切に使用できなければ、いわゆる「情報弱者」となる可能性があります。障害のある人がこの「情報弱者」にならないように、技術進歩に伴った支援サービスの充実が求められています。
また、障害のある人への情報提供、とりわけ災害時においては、迅速かつ適切に情報が提供されなければ、生命・身体の危機につながる恐れがあります。緊急時に、障害のある人へいかに情報提供を行うか、大きな課題となっています。他にも例えば視覚障害におけるロービジョン支援といった、障害のある人それぞれのレベルに沿った支援が求められます。
さらに、障害のある人が政治参加するためには、情報・コミュニケーションバリアフリーに向けた取組や投票所における投票環境の向上などが必要となります。
情報機器の使用に関しては、障害のある人を対象として、パソコン教室の開催やITサポートセンターの設置を行っています。さらに、視覚障害のある人、聴覚障害のある人の情報支援の拠点として、点字図書館1か所、聴覚情報提供施設1か所を県内に設置しています。しかし、継続した情報提供を行うためには、施設の安定した運営が必要となります。
平成28年4月から施行される障害者差別解消法では、障害のある人に対して合理的配慮を行うことが、国や地方公共団体においては法的義務とされました。また障害者条例では、情報の提供に関し障害を理由として不利益な取り扱いを行うことは、障害のある人に対する「差別」とされています。このようなことからも、障害のある人がコミュニケーション手段を確保し、情報を受信・発信できるようにすることは、障害のある人とない人双方が互いの意思疎通を図る上での支援につながります。
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