ここから本文です。
ホーム > しごと・産業・観光 > 農林水産業 > 農業・畜産業 > 普及・技術 > 千葉県農業改良普及情報ネットワーク > フィールドノート履歴一覧 > フィールドノート令和2年 > 紫外光照射と光反射シートによるイチゴに発生するうどんこ病及びハダニ類の防除
更新日:令和5(2023)年11月6日
ページ番号:389599
イチゴの栽培は長期間にわたり、その間にうどんこ病とハダニ類の防除のため頻繁な薬剤散布が必要です。そこで、夜間の紫外光照射と光反射シートによるイチゴのうどんこ病とハダニ類に対する農薬散布を削減できる技術(写真1)を紹介します。
写真1.夜間の紫外光照射のようす
紫外光ランプはパナソニックライティングデバイス社から市販されているUV-B電球形蛍光灯反射傘セット、紫外光を葉裏に照射するための光反射シートはデュポン社のタイベック®400WPが適します。土耕栽培の場合、ランプを畝から1.8メートルの高さに3メートル間隔で設置し、午後10時から翌午前1時までの3時間照射します。イチゴ株上の照度は平均1平方メートル当たり0.12ワットになります。また、光反射シートはイチゴの定植後に、黒マルチの上からイチゴの畝の両裾までと条間に設置します(写真2)。
写真2.土耕栽培における紫外光ランプと光反射シートの設置例
紫外光の中でもUV-Bは、人に日焼けを引き起こす光とされ、この紫外光(UV-B)を照射されたイチゴではうどんこ病に対する防御関連遺伝子が働くことが知られています。また、夜明けの3~4時間前までに、この光を2~3時間、ハダニ類の卵に当てるとふ化を抑制します。光反射シートにより紫外光を葉の裏側にも当てることで、葉裏に寄生するハダニを抑制することができるほか、うどんこ病に対する効果も高まります(図1)。
図1.紫外光(UV-B)と光反射シートによる効果のイメージ
注1)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業研究センター発行(2019)「紫外光照射を基幹としたイチゴの病害虫防除マニュアル~技術編~」を元に改変
土耕栽培において、紫外光(UV-B)を照射し、光反射シートを組み合わせた区では、慣行区と比べてうどんこ病の発生を抑制しました。殺菌剤散布回数は慣行の14回に対して4回と、大幅に削減することができました(図2)。また、ハダニ類の発生も抑制し、殺ダニ剤の散布回数は慣行の6回に対して1回に削減することができました。
図2.紫外光(UV-B)照射+光反射シート区と慣行区におけるうどんこ病(左)とハダニ類(右図)の発生と農薬散布時期
注1)品種:とちおとめ
注2)H30年9月25日定植、10月11日黒マルチ設置、10月12日光反射シート設置、紫外光照射開始
注3)下向き矢印はうどんこ病を対象とした殺菌剤(左図)または殺ダニ剤(右図)の散布日を示す
イチゴ品種別の特性とこれら導入技術による影響をまとめました(表1)。
表1.品種の特性と技術導入による影響(平成26~30、SIP実証試験)
注1)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業研究センター発行(2019)「紫外光照射を基幹としたイチゴの病害虫防除マニュアル~技術編~」より
注2)12月~3月上旬に裂皮果の発生が助長され著しく青果率が低下
注3)部分被覆を推奨、地温低下により生育が抑制
注4)地温低下により生育が抑制
注5)栽培体系により光反射シートの使用なし
注6)地温低下により生育が抑制され、収穫初期の収量が少なくなるケースがある
紫外光(UV-B)の照射により、「紅ほっぺ」等の品種では葉焼けが生じます。厳冬期の照射を2時間程度に短くすることで葉焼けを抑えることができます。また、他県の試験では、果実の果色が濃く、果皮が固くなる傾向も認められています。
土耕栽培では、光反射シートを敷くことで地温が約2℃低下し、「とちおとめ」では生育の遅延が見られました。対策として、光反射シートの幅を短くして畝の被覆面積を7割程度にすることで、ハダニの抑制効果を維持したまま、地温の低下を半分程度に抑えることができます。また、光反射シートを設置せずに、天敵のカブリダニを放飼してハダニ類を防除することもできます。紫外光によるカブリダニの働きへの悪影響は少さく、紫外光照射は天敵と併用できる技術です。
本技術を導入するための10アール当たりの資材費として、紫外光ランプ48,000円(60球を6年間使用)、光反射シート100,000円(500メートル使用)等がかかります。
高設栽培で紫外光ランプを設置する場合、土耕と異なり1.8メートルの高さを確保できません。ランプの反射傘には小さい皿型のタイプを用い、畝から高さ1.2メートルの位置に3メートル×2.8メートルの間隔で配置し、株上のUV-B照度が1平方メートル当たり0.05~0.15ワットになるように設置します。また、照度の低いところからハダニが増えるため、天敵カブリダニとの併用が推奨されます。
注)資材費は令和2年時点の価格です。
本研究は内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」(管理法人:農研機構生研支援センター、平成26~30年度)で実施しました。本技術の詳細については、農研機構のHP「紫外光照射を基幹としたイチゴの病害虫防除マニュアル」をご参照下さい。
初掲載:令和2年8月
農林総合研究センター
暖地園芸研究所生産環境研究室
室長大谷徹
電話:0470-22-2963
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください