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更新日:令和5(2023)年9月20日
ページ番号:389598
千葉県は全国でも有数のナシの生産地であり、「幸水」や「豊水」が主に栽培されています。このうち、「幸水」の適熟果での日持ちは常温で5日程度と短いのが問題です。そこで、果実の鮮度保持に効果がある1-MCP処理を冷蔵しながら行うことにより、「幸水」の適熟果を10日以上鮮度保持する技術を開発したので紹介します。
1-MCP剤は、果実の成熟・老化を促進する植物ホルモンであるエチレンの作用阻害剤です。収穫後の果実にくん蒸処理することで、果実のエチレンに反応する部分をブロックし、果実の老化や劣化を遅延させる作用があります。
1-MCP処理は常温下で行うのが一般的で、「幸水」適熟果では2日程度日持ちを伸ばす効果がありますが、リンゴでは予冷して果実の温度を下げた後に1-MCP処理することでその効果が向上するとの報告があります。そこで、ナシでも同様な効果があるのか検討をしました。
「幸水」を出荷箱に詰め、併用区は10℃に設定した冷蔵庫内で、1-MCP区は常温で、いずれも14時間1-MCP処理を行い、その後は常温で保存しました。冷蔵区は、10℃に設定した冷蔵庫内で14時間冷やし、その後は常温で保存しました。無処理区は収穫後常温で保存し、収穫12日後の果実品質を比較しました。
併用区と1-MCP区は無処理区と比較して表面色及び地色の値が低く維持され、硬度は高く保たれました。さらに併用区では障害果の発生もなく12日後でも鮮度が保たれました(表1、写真1)。また、冷蔵区でも1-MCP区には劣るものの、無処理区と比較して表面色の変動を抑制でき、鮮度を保つ効果があることが明らかになりました。
表1.1-MCP処理が「幸水」の果実品質に及ぼす影響
注)併用区は10℃で冷蔵しながら1-MCP処理、1-MCP区は常温で1-MCP処理、冷蔵区は10℃で14時間冷蔵
写真1.保存12日後の果実断面(左から併用区、1-MCP区、冷蔵区、無処理区)
以上のように、1-MCPを冷蔵しながら処理することで、「幸水」の適熟果を常温で10日以上鮮度保持できることがわかりました。また、収穫した果実を14時間程度冷蔵庫に入れておくだけでも、やや効果は劣りますが表面色の変動を抑制するなど鮮度保持が可能です。なお、1-MCP処理は現在のところ業者委託となり、生産者が自ら処理することはできません。
初掲載:令和2年7月
農林総合研究センター
果樹研究室
上席研究員戸谷智明
研究員印南一生
TEL:043-291-9989
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