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更新日:令和5(2023)年11月6日

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農業用ハウスの補強対策について(強風対策)

1.はじめに

令和元年の令和元年房総半島台風及び令和元年東日本台風により、千葉県内のパイプハウスやガラス温室等において、未だかつてない甚大な被害が発生しました。今後、災害に強い生産基盤を築くには、被害事例を教訓にして必要な補強対策をとることで、今後の防災・減災につなげていくことが大切です。

2.被害事例

強風によるパイプハウスの被災パターンには、一定の傾向が見られ、以下の4つのパターンに分類されます。

(1)風上側の肩部分から屋根にかけて押しつぶされた状態(図1)

台風通過後、風上側から大きく押されたようにつぶれているパイプハウスが多く見られます。これは風上側の肩の部分に大きな力がかかるためです。連棟ハウスの場合には、風上の棟が破損しても、2棟目以降は被害が見られないことが多く観察されます。

施設図1

図1.風上側の肩部分から屋根にかけて押しつぶされた状態

(2)下から吹き上がるようにパイプが変形(図2)

出入口や側面または被覆資材の一部が破損し、ハウス内に風が吹き込んだ場合には、ハウスの内側から外側に向けて圧力が高まり、アーチパイプが内側から外側に跳ね上がるような破損が見られます。

施設図2

図2.下から吹き上がるようにパイプが変形

(3)妻面が奥行き方向に倒壊(図3)

強風が妻面から奥行き方向に吹き、ハウスに補強が無い場合は妻面から奥に向かってアーチパイプが将棋倒しのように倒される被害が見られます。

施設図3

図3.妻面が奥行き方向に倒壊

(4)真上から屋根が押しつぶされたように陥没(図4)

周辺の地形やハウスの回りに建築物等がある場合には、風の方向や強さが変化し、連棟ハウスの中央部分が上部から押しつぶされたようにアーチパイプが破損する場合が見られます。

施設図4

図4.真上から屋根が押しつぶされたように陥没

3.補強対策

コストを抑えながら、効果的な補強対策をするためには被害事例や施設の立地条件、強風時の風向き等に留意し、「効率かつ局所的に補強」することが有効です。

(1)風上側の肩部分から屋根の破損に対する補強(図1に対する補強)

(ア)タイバーによる補強

タイバーをアーチパイプ4本ごとに1か所取り付けた場合(図5)には、取り付けてないハウスと比較して1.23倍程度、限界風速が上昇します。また、X型補強の場合(図6)は取り付けていないハウスと比較して、1.37倍程度、限界風速が上昇します。

施設図5

図5.タイバーの設置

施設図6

図6.X型補強の設置

(イ)側面の補強

強風による横からの圧力が1か所にかからないように、外径48.6mmの足場用の直管をパイプハウスの肩部分に取り付けます。さらに側面が傾きにくいように、1.6mにカットした直管を3m間隔で打ち込んで固定します(図7)

施設図7

図7.側面の補強事例

(2)風の吹き込みによるハウスの浮き上がりに対する補強(図2に対する補強)

(ア)妻部への防風ネットの展張による補強

妻部に近い3スパン分と側面部の風当たりの強い部分には防風ネットなどを張ります(図8)。このように防風ネットを張ることで被覆資材が破れにくくなります。

ハウス側面部分はハウスバンドの緩みや側面換気の巻上げ用直管パイプのバタつきによる被覆資材の損傷が多く見られます。そこでスプリングやパッカー等を使用し、被覆資材をしっかりと押さえましょう。

施設図8

図8.パイプハウスの妻部への防風ネットによる補強事例

(イ)施設の基礎部分の強化

整地して間もなかったり、水はけが悪い土地など基礎近くの地盤が緩んでいると強風時にハウスに上方向に力がかかった場合に基礎が抜けやすくなります。スクリュー杭を地中に埋め込んでマイカー線などで上から固定することにより、抜けにくくしてやります(図9)。

施設図9

図9.パイプハウスの基礎の強化事例

(3)妻面の奥行き方向への倒壊を防ぐ補強(図3に対する補強)

(ア)筋交い直管による補強

筋交い直管はパイプハウスの妻面が桁行方向及び間口方向へ倒れるのを防止する役目を担っています。筋交い直管の端はしっかり地中に埋めるようにします。

(4)複数の効果が期待できる補強

(ア)アーチ構造骨材の組み込み(図1、図4に対する補強)

既存のハウスの内側にアーチ構造の骨材を組み込んで補強します(図10)。パイプハウスの骨材が二重のアーチ構造になることにより、非常に強度が高まります。

施設図10

図10.パイプハウスの基礎の強化事例

(イ)太めのパイプに交換、アーチパイプの追加(図1、図3、図4に対する補強)

強風の受けやすい妻面に近い部分や地形的に被害を受けやすい位置のハウスはアーチパイプを追加したり、太めのパイプに交換することにより補強します(図11)。

施設図11

図11.太いパイプに交換強化

(ウ)風の通り道となる部分への防風ネットの設置(図1、図2、図4に対する補強)

風上方向となる場所に防風用ネットを張った柵を設置することで風を弱めます(図12)。

防風ネットの設置により、強風時の気流の流れが変わり、風上側のハウスが受ける風圧を軽減する効果が期待できます。設置上の注意点としては、防風ネットの高さはハウスの屋根面よりも高くするようにします。

施設図12

図12.防風ネットの設置

4.最後に

千葉県では生産者自らが被害防止対策を実践するために農業用ハウスの保守管理や補強技術の習得、関連情報の収集の基礎資料として「千葉県農業用ハウス災害被害防止マニュアル」を作成しました。今回紹介した被害状況や補強対策の詳細がマニュアルに掲載されていますので、御興味のある方はそちらも御覧いただければ幸いです(図13のコードよりダウンロードが可能です)。

千葉県農業用ハウス災害被害防止マニュアルコード

図13.千葉県農業用ハウス災害被害防止マニュアルコード

 

初掲載:令和2年9月
担い手支援課専門普及指導室
主任上席普及指導員
武田雄介
電話番号:043-223-2911

 

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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