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更新日:令和5(2023)年2月27日
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「プール育苗」は、これまで主に育苗パイプハウス内で実施されてきましたが、「露地プール育苗」は、ハウスを使用せずに育苗する技術です。
昨年の台風15号によって、県内の育苗用パイプハウスが数多く倒壊しており、育苗時期までに再建が間に合わない場合、「露地プール育苗」は緊急措置的に活用できる育苗技術です。ここでは、県内の農家の実践事例を紹介します。千葉県で作成した技術資料『露地プールを用いた「コシヒカリ」稚苗育成技術』も、併せて参考にしてください。
パイプハウスを使用せずに育苗が可能で、かん水作業が大幅に削減できます。
一方で、露地で育苗することから、気温の影響を受けやすくなるため、通常のパイプハウスでの育苗より日数がかかります。
露地プール育苗では、育苗器等で出芽させた苗箱をプールに並べていきます。加温出芽させることで、揃いが良好となり、苗の品質も安定します。
日当たりと排水が良好で、水源がある場所を選定します。また、風当りが少なく、水源以外から水が流入しない場所を選ぶことで、作業効率が高まります。
耕起した後、レーザーレベラー、バックホウ、レーキ等で均平にします。
均平にする際に、もみ殻などを用いて水平を調整することができます。
苗の搬出入を効率的に実施するため、トラクターやバックホウで鎮圧しておきます。
枠作りでは、水糸を引いて、設計した長さと高さを正確に測り、枠を地面に垂直に設置します。枠の高さは10センチメートルを確保します。一般的には貫板などの木枠を使用しますが、塩ビ管などでの作成例もあります。
木枠の場合、水漏れがないように、貫板の継ぎ目を補強しておきます(図1)。
また、プールは、苗箱を並べたとき、両脇に10から15センチメートル程度の隙間ができるように設計することで、水の循環を良好にします。
なお、1.8メートル×20メートルのプールで、約1ヘクタール分(165枚程度)の育苗が可能です。
図1.木枠つなぎ目の固定
雑草で、底に穴が空かないよう、防草シートなどを敷きます。その上にポリシートと、ポリシートの破れを防止するためにラブシート(黒)を敷き、パッカー等で枠に固定します(図2)。また、プールの外に垂らすシート部分は、短いと風に煽られることがあるため、ある程度余裕のある長さとします。
図2.シート張り(参考事例)
図3.苗箱被覆(参考事例)
緑化後に入水します(図4)。
深めに水を張り、少なくとも覆土が露出しないようにします。
図4.入水時の様子(参考事例)
こまめに水位を確認し、必要に応じて入水しますが、水位の減少が急激な場合は、ポリシートの破損を疑います。早生品種は、伸長しにくい傾向であるため、葉先が少し出るくらいの深めの水深にし、苗丈を伸ばします。
また、降霜や低温が予想される場合も葉先が少し出るくらいの深めの水深で管理し、気温上昇とともに排水します。
移植の2から3日前を目途に排水します。事前にプール周辺に排水路を施工しておくことで、スムーズに排水できます。
「露地プール育苗」は気温の影響を受けやすく、温度管理に細心の注意が必要です。最低気温が5度を上回る頃から露地に苗箱を並べることが可能であると考えられ、県内事例では、4月10日以降に露地プールへ苗箱を設置する事例が多いようです。本技術は、無理のない育苗計画を立てた上で実施しましょう。
初掲載:令和2年3月
千葉農業事務所
改良普及課
千葉・習志野グループ
上席普及指導員 清原 玲子
電話番号:043-300-0950
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