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更新日:令和5(2023)年2月13日
ページ番号:343549
EU諸国や中国における日本庭園ブームを受けて、植木・盆栽類の輸出が増えています。イヌマキは、中国では羅漢松と呼ばれ、幸福・繁栄を呼ぶ樹として知られており、輸出用植木類の主力品目ですが、輸出には枝ぶりの良いものが求められます。そこで、イヌマキの枝ぶりを改善するために、盆栽類で用いられている腹接ぎ、呼び接ぎをイヌマキに用いた際の接ぎ木の適期及び取り木の時期についてご紹介します。
腹接ぎは、穂木を台木の幹側面に接ぎ木する方法です(写真1)。枝を着けたい場所に短時間で多数の穂木を接ぐことができます。
穂木の葉を摘除し調整
腹接ぎした状態
写真1.腹接ぎの接ぎ木方法
3月にイヌマキの新梢を採穂し、長さ4センチメートル程度に調製し3月、4月、6月、7月に接ぎ木を行うと高い活着率が得られます(図1)。
図1.腹接ぎの接ぎ木時期の違いと活着率
注1)穂木:穂木長4センチメートル、枝径3ミリメートル、台木:樹高250センチメートル、幹径3から4センチメートル
2)接ぎ木日平成27年:4月21日、5月22日、6月19、22日、7月29、30日、8月21、27日、平成28年:3月18日、4月19日、5月19日、6月15日、7月28日、8月18日、平成29年:3月29日、4月19日、5月19日、7月6日
呼び接ぎは鉢植えの苗木を穂木として台木の樹幹に接ぎ、穂木の活着後に根鉢を切り離す技術で(写真2)、腹接ぎで穂木が枯死しやすい樹種の接ぎ木に用います。
台木に溝を作る
穂木の削った部分と台木の溝を接合
活着後の穂木
写真2.呼び接ぎの接ぎ木方法
3から8月に樹高40センチメートル程度のイヌマキ苗木を台木に接ぎ木し、根鉢を9月以降に切り離すと安定して活着します(表1)。また、呼び接ぎは接ぎ木時期が早いほど穂木の伸長量が大きくなる傾向があるため(データ省略)、3から4月に接ぎ木し、9月以降に根鉢を切り離すことが望ましいです。
表1.呼び接ぎの接ぎ木時期及び根鉢切り離し時期と穂木の活着数
取り木は樹木の幹を環状剥皮し、ミズゴケで包んで養生することで剥皮部分から発根させ、幹を切断・鉢上げ(取り木)する技術で(写真3)、枝ぶりの悪い造形樹であっても枝ぶりの良い部分だけを取り木することによって再利用できます。
環状剥皮した幹
剥皮部をミズコケで保湿
剥皮部からの発根
写真3.イヌマキの環状剥皮及び取り木・鉢上げ方法
3、4月にイヌマキの主幹を木部が露出するまで環状剥皮し、9月以降に取り木すると、鉢上げ時の発根本数が多くその後健全に生育します(表2)。
環状剥皮日 | 取り木鉢上げ日 | 鉢上げ時発根本数 | 調査時点の障害程度 |
---|---|---|---|
3月28日 | 9月11日 | 144 |
0.0 |
3月28日 | 10月20日 | 320 | 0.5 |
3月28日 | 11月17日 | 308 | 0.5 |
4月17日 | 9月11日 | 208 | 0.3 |
4月17日 | 10月20日 | 210 | 0.3 |
4月17日 | 11月17日 | 203 | 0.5 |
5月19日 | 9月11日 | 86 | 5.0 |
5月19日 | 10月20日 | 68 | 5.0 |
5月19日 | 11月17日 | 100 | 0.5 |
6月30日 | 9月11日 | 11 | 4.0 |
6月30日 | 10月20日 | 24 | 1.5 |
6月30日 | 11月17日 | 111 | 0.5 |
8月3日 | 9月11日 | - | - |
8月3日 | 10月20日 | 24 | 1.8 |
8月3日 | 11月17日 | 57 | 2.3 |
注1)台木:樹高200センチメートル、幹径4センチメートル
2)調査日:平成30年1月19日
3)障害程度:葉身の枯死の程度を0(障害なし)から10(枯死)とした
4)-:試験実施無し
接ぎ木や取り木は、養生期間中に接合部が乾燥すると活着や発根ができず枯死します。接ぎ木後は接合部を養生テープ等で密着させ、呼び接ぎや取り木は環状剥皮後、鉢が乾かないようかん水します。
初掲載:令和2年2月
農林総合研究センター
花植木研究室
研究員 下江 憲
電話番号:043-291-9988
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