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更新日:令和5(2023)年11月6日
ページ番号:389603
近年は高温や台風の影響も大きくなってきており、令和2年度から千葉県で新たに育成した品種「粒すけ」等の耐倒伏性に優れる品種への変更を検討される方もいると思います。
品種を変更する場合に問題となるのが、漏生イネとなります。ここでは、どうして漏生イネが発生するか、どのように対策をしていくかを以下に記載していきます。
漏生イネとは、収穫時等にほ場に落ちた籾が翌年に生育しているものを指します。倒伏した稲を起こしながらの刈取や高水分時の刈取を行うと、脱穀されなかった籾が稲わらに残りやすくなり、翌年の漏生イネの原因になります。また、収穫後に発生してくるひこばえを残したままにしておくことも、同様に翌年の漏生イネの原因になります。
漏生イネは水田を代かきした後から出芽が始まります。およそ30~40日にわたって発生し続けますが、ほとんどの籾が4月下旬までには出芽します。
水田で芽を出すため、植え付けた稲と1ケ月程度の大きな生育差がありますが、段々と見分けが付きにくくなります。また、漏生イネも稲であるため、生育の初期を除き、除草剤による対策が難しいのが特徴です。
写真1.条間に発生した漏生イネの例
対策は大きく分けて、1:そもそも芽が出ないようにする、2:芽が出始める時に対策するといった2つの方法があります。ただし、2:は時期を逸しやすいため、1:を実施した上で対策をしていくのが大切です。
時期ごとの対策は以下のとおりです。
収穫を終えてから、20~30日後までには秋耕を行いましょう。このことは、刈取時に落ちた籾を土中に埋めるだけでなく、2番穂の出穂や結実を防ぐこともできます。
秋耕は稲わらの腐熟にも大きい効果があります。稲わらを春にすきこんでしまうと、分解が生育期間と重なるため、生育への影響や食味低下にもつながります。
さらに、ほ場を止水し、天水等を活用しながら土壌水分を高め、土中に埋めた籾の腐敗を促すことで、より効果が上がります。
また、ラウンドアップマックスロード等の非選択性除草剤の散布も有効です。ただし、耕起前に散布し、散布後は一定期間経過してから、耕起しないと効果が十分に発揮されないので、注意が必要です。
生育の特徴にも記載していますが、4月下旬までにはほとんどの籾が出芽するため、4月下旬以降に代かきを行い、土中に埋め込みます。さらに、代かき後にはエリジャン乳剤やユニハーブフロアブル等のプレチラクロールを有効成分に含む除草剤を使用します。
また、特に土壌混和処理は防除効果が高いことが確認されました。土壌混和処理が可能な除草剤にはオキサジアゾン・ブタクロール剤(デルカット乳剤)があり、専用の滴下装置(滴下美人®II)を使用することで代かき時の同時散布(土壌混和)が可能です。
漏生イネは代かき後から長期間にわたって発生するため、上記のような代かき時の散布以外にも、田植え以降も体系的に除草剤を使用することでさらに効果が上がります。しかし、ほとんどの除草剤が、発生始めまでしか効果がなく、防除適期を逃しやすいので、散布時期の見極めが重要です。
※除草剤は、令和5年9月時点で登録されているものです。使用にあたっては、登録内容(対象雑草、時期、量、回数、適用土壌、使用後の止水等の注意事項等)を遵守して使用してください。
田植えの約1ケ月後は、漏生イネと移植した稲の見分けが付きやすく、かつ漏生イネもまだ小さいため抜取に適した時期になります。条間・株間を中心に観察し、抜取を実施しましょう。バケツや使用した肥料袋を活用すると抜取した漏生イネを入れての移動がしやすいです。また、漏生イネは鎌で刈り取ると、そこから再度生長するので、抜き取るようにしましょう。
1つの技術で完全に漏生イネを無くすことは困難です。技術を組み合わせて実施することが重要ですので、秋の耕うんを、まずは実施してみましょう。
初掲載:令和2年9月
君津農業事務所
改良普及課
南部グループ
普及指導員宇津木育実
電話:0438-23-0299
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