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更新日:令和4(2022)年3月28日
ページ番号:7467
印旛地域の肉牛農家が、地域の水稲農家と連携して、飼料用米を活用した、肉牛の飼料を発酵TMR(※1)で生産しています。
この発酵TMRは、飼料米や自給粗飼料の活用手段として期待されていることから、平成29年度に発酵TMR調製方法と品質について調査を行ったので紹介します。
※1 発酵TMR(Total Mixed Ration:完全混合飼料)とは、「密封貯蔵して乳酸発酵させた飼料」をいう
調査した肉牛農家は、飼料用米を地域の稲作農家から玄米で年間約180トンをフレコンバック(1袋750キログラム)で購入しています。フレコンバックの内側には虫の発生予防のため、ビニール袋を入れており、届いた飼料用米は専用倉庫で保管しています。調製方法は玄米では牛が消化しにくいため、粉砕してから粕類(おから、ビール粕)や、自給粗飼料(稲発酵粗飼料、トウモロコシサイレージ)と混合し、フレコンバックに詰込み密封貯蔵し、発酵TMRを生産しています。
写真1.飼料をミキサーに投入
写真2.飼料をフレコンバックに投入
発酵TMRのメリットは飼料の保存性を高くできる点です。飼料メニューに含まれる粕類(おから、ビール粕)は安価で入手できますが保存性が悪いため、運ばれた粕類はすぐに発酵TMRへ調製しています。飼料用米や自給粗飼料に加え、発酵品質を良くするために糖蜜を加えていました。
出来上がった発酵TMRの成分について、調製直後、1カ月後、2カ月後に成分分析を行いました。水分・pH・有機酸の分析結果は、有機酸の中でも乳酸の増加量が大きく、酪酸が無い事から、良質な発酵ができている事が確認できました。pHの低下と有機酸の増加は、調製直後から1カ月後の間が、1カ月後から2カ月より大きいことから、最初の1カ月で急速に発酵が進み、その後の発酵はわずかであると考えられました。(表1)
No. | 飼料名 | 調製日 | 採取日 | 水分(パーセント) | pH | 乳酸(パーセント) |
酢酸(パーセント) | プロピオン酸(パーセント) | 酪酸(パーセント) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 調製直後 | 10月12日 | 10月12日 | 45.6 |
4.76 |
0.60 |
0.29 |
0.03 |
0.00 |
2 | 1カ月後 | 10月12日 | 11月10日 | 47.1 |
4.11 |
2.83 |
1.13 |
0.10 |
0.00 |
3 | 2カ月後 | 10月12日 | 12月12日 | 47.0 |
3.98 |
2.94 |
1.09 |
0.09 |
0.00 |
調査年:平成29年
発酵TMRを生産するために、飼料混合用のミキサー、粉砕機、ホイルローダー等の機械導入が行われていました。発酵TMRの1トン当たり費用を試算した結果、混合した飼料原料18,632円、機械費1,631円、燃料費525円、人件費224円でした。(表2、3)試算した発酵TMRの生産費用と購入している配合飼料価格を比較したところ、TDN(※2)換算で1トン当たり8,000円程度のコスト削減が図られている事が分かりました。(表4)
※2 可消化養分総量。飼料のエネルギー含量を表す単位。
飼料名 | 投入量(キログラム) | 金額(円) |
---|---|---|
飼料用米(粉砕済) | 1,500 |
|
おから | 2,000 |
|
ビール粕 | 600 |
|
配合(1) | 750 |
|
配合(2) | 750 |
|
ふすま | 200 |
|
糖蜜 | 添加あり |
|
稲わら | 120 |
|
コーンサイレージ | 700 |
|
合計 | 6,620 |
123,343 |
(1t当たり単価) | (18,632) |
原料費(円) | 機械費(円) | 燃料費(円) | 人件費(円) | 合計価格(円) |
---|---|---|---|---|
18,632 |
1,631 |
525 |
224 |
21,012 |
算定の基礎情報 | 配合飼料 | 発酵TMR |
---|---|---|
現物単価(1トンあたり円) | 43,000 |
21,012 |
現物TDN(パーセント) | 74 |
42 |
TDN換算単価(1トンあたり円) | 58,108 |
50,029 |
調査した発酵TMRは、飼料用米の粉砕や調製に手間がかかり、飼料設計が難しい事から、一般的に肉牛農家では取り組まれていません。
しかし、調査した肉牛農家では粕類(おからやビール粕)とともに飼料用米や自給粗飼料を有効活用するために、発酵TMRに調製し肥育牛に利用しています。出荷された枝肉の肉質や販売価格は発酵TMR給与前と比較しても遜色がありませんでした。これは、調査農家の適切な飼料設計や管理の成果であり、飼料米を利用した飼料コスト削減による収益性改善事例となります。
初掲載:平成31年2月
印旛農業事務所
改良普及課
普及指導員
小野英吾
電話:043-483-1124
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