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更新日:令和4(2022)年4月28日
ページ番号:7470
ナシ栽培では、春から夏にかけて新梢を加害するチャノキイロアザミウマ(以下チャノキイロ)が発生して問題となることがあります(写真1)。被害葉は表面を巻くように萎縮し、ときには新梢の伸長が止まったり、早期落葉が発生したりするほどの大被害となることもあります。適期に殺虫剤による防除を行えば被害を防ぐことができますが、チャノキイロの発生時期は年により異なるため、その時期を正確に判断することが必要です。ここでは、千葉県農林総合研究センターが開発した発生時期予測システム「チャノキイロなび(ver.1.00)」を用いて、チャノキイロ越冬成虫の活動開始時期とその後の世代の発生時期を推定する方法を紹介します。
写真1チャノキイロアザミウマと被害葉
(左_チャノキイロアザミウマ雌成虫、右_被害葉)
チャノキイロは体長0.8から0.9ミリメートルとアザミウマ類の中でも特に小さな種類です。ナシだけでなくカンキツやブドウといった果樹、チャ、イヌマキやサンゴジュといった樹木類の新芽や葉を吸汁して加害します。主にナシ園内の土の中で成虫が越冬し、春になると活動を始めます。
粘着版トラップを用いた野外調査の結果、春に最高気温18度以上、日照時間5時間以上、平均風速毎秒5メートル未満の日に、成虫が活動を開始していることがわかりました(図1)。また、卵、幼虫、蛹のそれぞれの発育に必要な温度条件を調べることで、成虫の活動開始から何日後に、どのステージが発生するのかが予測できるようになりました。
図1_チャノキイロアザミウマの粘着版トラップへの捕獲数と環境条件(千葉県農林総合研究センター、平成25年)
「チャノキイロなび」は、Microsoft®Excel®上で稼働し、誰でも簡単に利用できるシステムです。気象庁ホームページからアメダスデータ(一時間ごとの気温、日照時間、風速)をダウンロードしてシステムに入力すると、自動的に成虫の活動開始日(飛翔侵入日)や、その後の各発育ステージの発生時期を予測してくれます(図2)。チャノキイロの防除にはトルフェンピラド水和剤やクロルフェナピル水和剤などを利用しますが、薬液がかかりやすいステージである幼虫や成虫の発生時期を狙って散布すれば高い効果が期待できます。逆に、葉の中に産みつけられる卵や、土の中にいる蛹のステージは薬液がかかりにくいため、散布の効果は低くなってしまいます。
(※農薬は初掲載時点の登録内容をもとに作成しております。農薬の使用に当たっては、ラベル及び最新の登録内容を確認し、安全に使用してください。)
図2_「チャノキイロなび」の出力画面の一例
実際に、「チャノキイロなび」を使用して第一世代幼虫と第一世代成虫の発生が予測された時期に防除を行った体系防除と、生産者の判断によって決めた時期に防除を行った慣行防除での、7月に入ってからのチャノキイロの発生数を比較したところ、体系防除ではチャノキイロの発生数を慣行防除の約10分の1に抑えることができました(図3)。
図3_殺虫剤散布履歴の異なるナシ園におけるチャノキイロアザミウマ発生数推移
注)体系防除:「チャノキイロなび」による第一世代幼虫発生予測時期及び成虫発生予測時期に殺虫剤を散布、慣行防除:生産者判断により殺虫剤を散布、矢印はそれぞれの殺虫剤散布日、平成27年
地球温暖化の影響からか、ここ数年は春の気温が平年値よりも高い年が増えています。簡単な気象データからチャノキイロの防除適期が予測できる「チャノキイロなび」ですが、実際の生産現場で使われてこそ、その力を発揮します。「気がついたらチャノキイロの防除適期が過ぎていた!」ということがないよう、「チャノキイロなび」をご活用頂き、春の気温の推移に常に気を配って効果的な防除に努めてください。「チャノキイロなび」は利用申請書の提出により無料で利用できます。詳しくは県庁担い手支援課(電話:043-223-2907)までお問い合わせください。
初掲載:平成31年3月
農林総合研究センター
病理昆虫研究室
研究員 清水 健
電話:043-291-9991
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