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更新日:令和4(2022)年9月30日
ページ番号:7484
千葉県夷隅地域は、太平洋側の海岸地域と森林が広がる緑豊かな里山に囲まれた中山間地からなります。自然を生かした農業が展開されており酪農業も盛んに行われています。
千葉県内には現在、チーズ工房が12軒ほどありますが、そのうちの7軒が夷隅地域に存在しています。チーズの製造は、自家産の生乳を用いている工房や近隣の酪農家の生乳を使って行う工房などいろいろです。
以下に夷隅地域のチーズ工房を紹介します。
(チーズ職人:五十川充博氏、先代は五十川敬記氏)
ホームページアドレス:http://www.cheese-ikagawafarm.com
ジャージー牛3頭を放牧し、搾乳した生乳は全量チーズ製造に用いています。粗飼料は自家生産または地域で生産された飼料を100パーセント給与しています。
先代の五十川敬記氏夫妻が、平成19年にいすみ市へ移住し、平成20年からチーズ製造を開始しました。敬記氏は子供の頃、自然豊かで家畜が身近にいる環境で育ち、成人してからもスイスで暮らしていたことがあるそうです。スイスでは乳牛1頭飼いでチーズを作る極小規模の酪農経営をたくさん見てきました。帰国し、改めて日本の酪農を見直してみると、耕作放棄や農業構造の歪みが見えたそうです。そこで、利潤追求的な酪農ではなく、家族経営で、自然と調和した酪農モデルを実践するために、機械に頼らないで牛を飼養する方法を模索しました。その結果、「生産したものは自分で売る」ことが必要であると考え、スイス暮らしの中でチーズ作りが身近にあった経験を生かしチーズ製造を開始しました。
製造しているチーズは、ムチュリ、モッツァレラ、クリームチーズ、カチョカヴァロ、フロマージュブラン等です。
(チーズ職人:関博・道子夫妻)
ホームページアドレス:http://milkfairy2525.blog115.fc2.com
平成22年にチーズ工房をオープンしました。
チーズ製造を始めた当初は、成牛を20頭ほど飼養し、自家産の生乳でチーズを製造していましたが、現在は牛の飼養をやめ、近隣の酪農家の生乳を用いてチーズ製造を行っています。
六次産業化に取り組んだきっかけは、平成21年10月に夷隅農林振興センターが主催したチーズ研修会でした。その時の講師であった駒形さんや、近隣でチーズ工房を経営している五十川氏に相談しながら工房を建設しました。工房オープン後も地域のチーズ製造の先輩たちに指導を受けチーズの種類を増やしています。
工房名の「よじゅえもん」は屋号に由来しています。
製造しているチーズは、生チーズ、モッツァレラ、カチョカヴァロ、ストリングチーズリコッタチーズ、カッテージチーズ等です。
写真1.よじゅえもんチーズ
(チーズ職人:大倉典之氏、先代は吉見真宏氏)
ホームページアドレス:http://www.takahide-dairyfarm.com
高秀牧場は、乳用牛150頭(うち経産牛90頭)を飼養し、年間900トンの出荷乳量があります。牛群改良に力を入れ、また地域や全国の乳牛共進会に参加し多数の受賞歴がある牧場です。飼料生産にも積極的に取り組んでおり、粗飼料はほぼ100パーセント自給しています。
平成24年にチーズ工房をオープンし、製造したチーズは国内や国際コンクールで最高賞を数多く受賞しています。北海道や海外で修行を積んで工房開始時から製造に携わっていた先代のチーズ職人は独立し、現在は先代の技術とチーズに対する熱い思いを受け継いだ二代目がチーズ製造を行っています。
高秀牧場では平成28年にカフェを併設したミルク工房をオープンしました。牧場で牛を見たり、チーズやジェラートを食べながらくつろげるスペースを提供することで、牛や酪農業への理解が深まることを期待しています。
また、牧場スタッフの意識も向上し、より良い牧場経営につながると考えています。
製造しているチーズは、フロマージュブラン、モッツァレラ、「まきばの太陽」、「いすみの白い月」、「草原の青空」、「ミルクのたまご」、「おぼろ月」等です。
写真2.高秀牧場チーズ工房
(チーズ職人:木下秀雄氏)
平成25年にチーズ工房をオープンし、近隣の酪農家の生乳を用いて、チーズ製造を行っています。
木下氏は元々サラリーマンでしたが、40才代で退職したあと、色々なことを経験したり見て回った中で、チーズ作りに興味を持ち生業とする決心をしました。そして、いすみ市内でチーズ製造を行っている駒形氏や関夫妻を訪ねアドバイスを受けました。工房をオープンしてからは関夫妻に教えてもらったチーズのレシピをアレンジして、種類を増やしてきました。
製造しているチーズは、生チーズ、モッツァレラ、ストリングチーズ等です。
(チーズ職人:柴田千代氏)
ホームページアドレス:http://fromage-sen.com
大多喜町にある飼養頭数45頭の牧場のそばで、平成26年にチーズ工房をオープンしました。
添加物を使わない身体に良い食品を生産したいという思いが、栄養価が高く発酵食品であるチーズ製造を始めるきっかけとなったそうです。
北海道や海外でチーズ製造の修行をした後、知人から紹介された大多喜町の酪農家の敷地内にあった古民家が気に入り、そこを改装して工房としました。
一人で製造しているため工房の営業日は、月に一度、第1日曜日のみです。
チーズ製造では、菌にこだわっており、大多喜産の乳酸菌・酵母を使用し独自のチーズ作りに取り組んでいます。チーズ工房【千】のチーズは、国内のコンクールで多数の賞を受賞しています。
製造しているチーズは、モッツァレラ、和み、竹炭、デザートチーズ結び等です。
(チーズ職人:吉見真宏氏)
ホームページアドレス:http://haru-fromage.com
高秀牧場の初代チーズ職人として従事し、平成30年に独立し現在は夫婦で自家製チーズとガレットを味わえるカフェを営んでいます。
製造しているチーズは、フロマージュブラン、ハル、ブルー、スープル等です。
夷隅地域には、チーズ工房が多数存在しており、どの工房もチーズ作りに対して強い想いを抱いて取り組んでいます。
同じ地域に存在するチーズ工房をライバル視するのではなく、仲間として交流を深め、チーズ製造の技術を教えあう等、相互研鑽に力を注いでいます。
また、NPO法人いすみライフスタイル研究所がいすみ市内のチーズ工房MAPを観光客向けに作成したり、市役所がふるさと納税の返礼品として、いすみ市産のチーズを扱ったりと、関係機関や団体等も加わり地域全体でチーズ工房を盛り上げていこうという機運が感じられます。
このような背景の中で、夷隅地域ではチーズ工房が増加してきたのだと考えられます。また、新たに御宿町の酪農家が、チーズ工房やアイス工房の建設に向けて取り組みを始める等、今後の夷隅地域における酪農の六次産業化のさらなる発展が期待されます。
※取組内容は変更する場合がありますので、詳しくはそれぞれの工房にお問い合わせください。
初掲載:令和元年10月
夷隅農業事務所
改良普及課
普及指導員
三浦千秋
TEL:0470-82-2213
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