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更新日:令和4(2022)年4月28日
ページ番号:7469
通常、養豚場からの排水は汚水処理施設で浄化処理後、河川などに放流されます。なお、浄化処理水を河川などの公共用水域に放流する場合、水質汚濁防止法の規制を受けます。
浄化処理水の多くは茶褐色をしています。色に関しては水質汚濁防止法による規制はありませんが、見かけの汚濁感から地域住民の苦情を招くおそれがあります。
リンは水質汚濁防止法で規制されています。養豚排水にはリンが豊富に含まれていることから、規制対象の養豚場では基準値以下まで低減させる必要があります。
水質汚濁防止法では衛生面の観点から、放流水1ミリリットルあたりの大腸菌群は3000個未満と定められています。通常は塩素系消毒剤が添加されますが、コストがかさむことから、現場での管理が疎かになる可能性があります。
養豚排水の着色およびリンの低減、ならびに衛生対策は重要な課題ですが、汚水処理施設だけですべてに対応することは難しいのが現状です。そこで、当センターではこれら複数の効果を同時に発揮できる簡易技術の開発を目指して、ドロマイト石灰の活用を検討しました。
ドロマイト石灰は畜舎の消毒用途で販売されている資材です(写真1)。この資材は水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムが主要成分であるため、凝集による着色およびリンの低減効果、アルカリ成分による消毒効果が期待できます。
写真1 ドロマイト石灰
処理装置には、土木用タンクとして販売されているノッチタンクを用いました(図1)。このタンクは内部が3つに分かれており(それぞれ第1から第3区画とします)、第1区画に浄化処理水と資材を流入させて高度処理を行います。使い終わった資材は第1および第2区画に沈殿するため、定期的にポンプで回収するとともに、高度処理後の水は第3区画から流出させます。なお、高度処理水は資材の影響でアルカリ化していることから、放流前に炭酸ガスによる中和が必要となります。
図1 処理装置の概要
1)浄化処理水1トンあたりにドロマイト石灰を1.5キログラム添加(添加率0.15パーセント)することで、着色低減率80パーセント、リン低減率99パーセント以上、高度処理水のpHは12程度まで上昇し、高い処理効果を発揮しました(図2)。
2)回収した資材にはリンが30パーセント含まれており、リン肥料として利用できる可能性があることが分かりました。リンは枯渇性資源でもあることから、回収資材は循環資源として利用価値が高いと推察されます。
図2 ドロマイト石灰による処理効果
本技術に用いる処理装置や資材はいずれも市販品であることから導入が容易と考えられます。安定した排水処理と資源循環利用が確立できれば、経営の安定化につながるとともに産業の発展に寄与するものと考えます。
初掲載:平成31年3月
畜産総合研究センター
企画環境研究室
研究員 長谷川輝明
電話番号:043-445-4511
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