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更新日:令和5(2023)年3月17日
ページ番号:7464
パッションフルーツは県南地域特産の観光・直売向け品目として栽培が増加しています。しかし、従来の無加温施設栽培や露地栽培では、収穫盛期が8月下旬から9月になってしまい、夏季の観光シーズンである7月から8月上旬に間に合いません。
そこで、収穫時期を早めることができる新しい整枝法を開発したので紹介します。
パッションフルーツの標準的な整枝法は「吊り下げ型整枝」です(図1)。この整枝法は「逆L字仕立て」とも呼ばれ、苗木を定植後、主幹を地上から180センチメートル程度の高さに設置した棚や架線に到達するまでは直立に伸長させ、その先は主枝として水平に誘引します。主枝から発生する腋芽を結果枝として下に垂らし、そこに着果させます。このように、主枝の育成後に結果枝を伸ばすため、開花や収穫時期が遅くなります。
一方、今回開発した「真横垣根整枝」(図2)では、棚や架線は吊り下げ型整枝と同じものを用いますが、主幹を棚の高さで摘心し、主幹から発生した腋芽を左右にそれぞれ7芽程度、水平に誘引して結果枝とします。主幹から直接結果枝を発生させるため、結果枝の育成を早めることができ、開花や収穫時期も早まります。苗木の育成や定植は吊り下げ型整枝と同様に行います。結果枝は伸長して隣接樹に達した段階で摘心します。着果管理は結果枝の基部側から4果まで着果させ、その先の4節には着果させないことを繰り返し、隣接樹に達するところまで着果させます。
図1.吊り下げ型整枝の模式図
図2.真横垣根整枝の模式図
真横垣根整枝により収穫時期がどの程度早まるか、品種「サマークイーン」で調査しました。
平均草丈が160から170センチメートルの苗木を無加温施設に4月上旬に定植し、吊り下げ型整枝と真横垣根整枝で栽培しました。1樹当たりの総収量は、吊り下げ型整枝が5.1キログラム、真横垣根整枝が5.4キログラムと同程度でしたが、8月上旬までの収量は吊り下げ型整枝の1.2キログラム(総収量の24パーセント)に対し、真横垣根整枝が2.9キログラム(同53パーセント)と多く、収穫時期を早めることができました(図3)。果実品質は、真横垣根整枝が吊り下げ型整枝に比べて、可溶性固形物含量がやや低く酸含量が高い傾向がありましたが、概ね良好でした。
一方、5月上旬に苗木を定植する露地栽培でも、真横垣根整枝は吊り下げ型整枝に比べて収穫時期が早まり、7月から8月上旬の収量が多くなりましたが、総収量はやや減少しました。果実品質は、真横垣根整枝が吊り下げ型整枝に比べて、可溶性固形物含量がやや低く酸含量が高い傾向がみられました。8月上旬までは特に酸含量が高いので、追熟後に販売するなどの対応が必要です。
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図3.無加温施設栽培における整枝法が異なるパッションフルーツの時期別収量
以上のように、無加温施設栽培及び露地栽培で、主幹から発生した結果枝を水平に配置する真横垣根整枝を行うことにより収穫時期が早まり、観光需要の高い7月から8月上旬の収量を増やせることがわかりました。直売所の集客力を高める品目の一つとして、パッションフルーツの導入を御検討ください。
初掲載:平成31年1月
農林総合研究センター
暖地園芸研究所
特産果樹研究室
主席研究員
押田正義
電話:0470-22-2961
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