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更新日:令和4(2022)年5月6日
ページ番号:7471
東葛飾地域では、水田フル活用により大豆が多く栽培されていますが、近年、帰化植物等の難防除雑草が大きな問題になっています。従来の除草剤が効きにくいこれらの雑草に対して、新たに登録された除草剤を使って防除した事例を紹介します。
大豆の雑草防除で最も基本となるのは播種後の土壌処理剤の散布です。その後は雑草の発生状況に応じて、中耕除草、選択性茎葉処理剤の全面散布、非選択性茎葉処理剤の畦間散布などを行います。しかし大規模栽培が多い東葛飾地域では省力的な狭畦無培土による栽培が多く、その場合の雑草防除は、大豆が早期に畦間を被覆することによる効果と、ブームスプレイヤーによる除草剤の全面散布(土壌処理及び茎葉処理)になります。
除草剤による雑草防除が主体となっている東葛飾地域では、近年、マルバルコウなどのアサガオ類やアレチウリ等の帰化植物が多発している圃場が見られるようになりました。これらの雑草は従来の除草剤が効きにくく発生期間が長期にわたります。
大豆生育期に圃場全面に散布できる茎葉処理剤については、これまで「大豆バサグラン液剤」1剤のみであり、さらに栽培期間中に1回しか使えません。このため、最初に発生した雑草を防除しても、その後に発生してくる雑草を抑えきれず圃場に蔓延する結果となっていました。
写真1.圃場に発生するマルバルコウ
写真2.大豆に絡みつくアレチウリ
除草剤「アタックショット乳剤」(成分名:フルチアセットメチル)は、2018年2月に新規登録されました。
表1.アタックショット乳剤の登録内容(2018年11月7日変更登録)
大豆の本葉2葉期から開花前まで使用可能ですが、土壌処理効果が無く後から発生する雑草は抑えられないため、できるだけ雑草が生え揃ってからの使用が望ましいです。ただし、雑草が大きくなり過ぎると効果が劣るので、草丈10センチメートル以下で使用します(草種による効果の違いに留意して使用する。表2を参照)。
東葛飾農業事務所で行った試験では、アレチウリに対しては5葉期までの個体は枯死しましたが、5葉期より大きい個体では、一度、葉は枯れるものの、後日再生しました。
雑草の科名 | 雑草の名称 | アタックショット乳剤 (適用葉令または草丈) |
大豆バサグラン液剤 (処理時期は雑草生育初期から6葉期まで) |
---|---|---|---|
アオイ科 | イチビ | ◎(10センチメートルまで) | ◎ |
スベリヒユ科 | スベリヒユ | ◎(10センチメートルまで) | ◎ |
ヒユ科 | ホソアオゲイトウ | ◎(10センチメートルまで) | △ |
アカザ科 |
シロザ | ◎(10センチメートルまで) | △ |
ナス科 | イヌホオズキ | ◎(5葉期まで) | ○から△ |
ウリ科 | アレチウリ | ○から△(5葉期まで) | 記入がない |
ヒルガオ科 | マルバルコウ | ○(5葉期まで) | ○から△ |
ヒルガオ科 | マルバアメリカアサガオ | ○から△(3葉期まで) | △から× |
ヒルガオ科 | ホシアサガオ | △(3葉期まで) | △から× |
トウダイグサ科 | エノキグサ | △(5センチメートルまで) | △から× |
タデ科 | イヌタデ | △(2葉期まで) | ◎ |
キク科 | アメリカセンダングサ | × | ◎ |
◎よく効く○効く△劣る×効かない
※各除草剤のパンフレットから抜粋
「アタックショット乳剤」は、「大豆バサグラン液剤」と同等かそれ以上に大豆に薬害が発生する可能性があります。
薬液が直接かかった大豆の葉には褐斑や褐変が生じますが、処理後に展開する新しい葉に影響はありません。ただし、展開葉への薬害症状が顕著だと一時的に生育が抑制される場合があります。重複散布や展着剤の加用、安全性の確認されていない他薬剤との混用等は薬害を助長するので避けましょう。
東葛飾農業事務所で行った除草剤試験では、「アタックショット乳剤」は「大豆バサグラン液剤」と同等の効果が認められました。
大豆の本葉3葉期に両剤を処理、処理時の雑草の大きさは、アレチウリが4から5葉期、マルバルコウが5から6葉期でした。処理後は晴れて気温の高い日が続いたことから「大豆バサグラン液剤」の効果も高く、処理1週間後には処理時に発生していた雑草はほぼ防除できました。ただし、両剤とも防除適期よりも葉齢の進んでいた一部のアレチウリと処理後に新たに発生してきたアレチウリが残ってしまいました。
試験の結果、処理時の雑草の葉齢に注意すれば防除効果は高いことが明らかになりましたが、発生期間の長い雑草については処理後にも新たに発生してくることから防除しきれませんでした。
そこで、現地では「アタックショット乳剤」の散布後に発生してきた雑草に対して、「大豆バサグラン液剤」を散布するという体系処理を実施したところ、高い防除効果が得られました。これまでアレチウリが大豆を覆うほど多発して収穫不可能になることもあった圃場で、両剤を体系処理することで、収穫に支障がない程度に雑草を抑えることができました。
これらの結果から、発生期間の長い広葉の難防除雑草が多発する圃場では、両剤の体系処理が有効と思われます。両剤それぞれで効果の高い草種が異なりますので、発生する雑草やその大きさに注意して散布する順や時期を検討する必要があります。
また、両剤の体系処理により大豆への薬害が助長される可能性があるので、雑草の葉齢に注意しつつ、少なくとも1週間程度は期間を空けて散布しましょう。
写真3.圃場全面に発生したアレチウリとマルバルコウ
※農薬は、令和4年4月時点の登録内容をもとに作成しております。農薬の使用にあたっては、ラベルおよび最新の登録内容を確認し、遵守して使用してください。
初掲載:平成31年4月
東葛飾農業事務所改良普及課
北部グループ
上席普及指導員
門倉孝男
電話:04-7162-6151
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