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更新日:令和4(2022)年10月27日
ページ番号:354246
酪農経営の安定には、牛群の生産性と長命連産生が重要であり、そのためには優良な後継牛の確保と高度な飼養管理技術が必要です。しかし、近年では乳生産への供用年数の短さが問題となっています。
これまでの研究から、育成牛の給与メニューなど、育成管理の違いが成牛になってからの泌乳能力や供用年数に大きく関係していることが分かってきました。
本資料では、他6県と共同で実施した育成期の発育と乳生産の試験結果を基に、育成管理のポイントを紹介します。
試験1として、3か月齢から初産種付け時までの日増体重(以下、DG)を日本飼養標準(2017年版)に基づいて0.95キログラム、1.10キログラム及び1.10キログラムで飼料中粗タンパク質(以下、CP)含量を大豆粕で2パーセント高めた3区を設定しました。
また、試験2では高CP飼料におけるバイパスタンパク質の効果を検討するために、DG1.05キログラムの設計で、大豆粕の代替に加熱大豆でCP含量を2パーセント高めた区を設定しました。
表1に結果を示します。DG0.95キログラムと比較してDG1.00キログラム以上の区で350キログラム到達月齢が約1か月、分娩月齢で約2か月短縮しました。種付け回数及び産子体重に差はなく、高増体による繁殖性及び胎子への影響は認められませんでした。
以上の結果から、初産種付けまでのDGを高めることで、21か月齢程度での早期分娩が可能と考えられます。ただし、後述するように、DGを過度に高めると泌乳成績に影響があるので注意しましょう。
区分 | 試験1 | 試験1 | 試験1 | 試験2 | 試験2 |
---|---|---|---|---|---|
項目/区分 (設定DG) |
DG0.95 | DG1.10 | DG1.10 (+CP2パーセント) |
DG1.05 | DG1.05 (+CP2パーセント) |
日増体量(キログラム) | 0.97 | 1.12 | 1.10 | 1.05 | 1.09 |
350キログラム到達月齢 | 11.5 | 10.3 | 10.3 | 10.8 | 10.5 |
初回種付け月齢 | 12.7 | 11.5 | 11.6 | 11.8 | 11.8 |
受胎月齢 | 13.7 | 11.8 | 12.6 | 12.5 | 11.9 |
分娩月齢 | 23.1 | 21.0 | 21.8 | 21.7 | 21.1 |
試験終了時BCS | 3.3 | 3.5 | 3.7 |
3.5 | 3.5 |
種付け回数 | 2.1 | 1.9 | 2.0 | 1.8 | 1.6 |
産子体重(キログラム) | 44.0 | 45.6 | 42.0 | - | - |
DG1.00キログラム以上とした区に対して、試験1では大豆粕、試験2では加熱大豆を用いて飼料中CP含量を2パーセント高めた区を設定しましたが、発育の向上や、初回種付けを早めることができませんでした。
消化試験の結果から、飼料中のCP含量を高めても成長に利用されず、尿中に排泄されたことが分かります(表2)。試験1でも同様のことが起きていたことが推測されます。これらのことから飼料中CP含量は日本飼養標準乳牛(2017年版)で示された量で十分と考えられました。
項目/区分 | DG1.05 | DG1.05 (+CP2パーセント) |
---|---|---|
窒素出納 | ||
摂取量(1日あたりグラム) | 151.2b | 178a |
尿中排泄量(1日あたりグラム) | 43.0b | 67.8a |
体蓄積窒素量(1日あたりグラム) | 47.9 | 49.4 |
生涯生産性 | ||
平均産次数 | 3.6a | 2.6b |
生涯生産乳量(キログラム) | 30,093a | 18,259b |
※異符号間に有意差p<0.05
2つの試験の初産分娩後の泌乳成績を表3に示します。
区分 | 試験1 | 試験1 | 試験1 | 試験2 | 試験2 |
---|---|---|---|---|---|
項目/区分 (設定DG) |
DG0.95 | DG1.10 | DG1.10 (+CP2パーセント) |
DG1.05 | DG1.05 (+CP2パーセント) |
305日乳量(キログラム) | 8,121a | 6,922b | 7,216b | 7,015b | 6,888b |
乳脂率(パーセント) | 3.8 | 4.0 | 3.9 | 3.9 | 4.1 |
4パーセント乳脂補正乳量(キログラム) | 7,853 | 6,924 | 7,116 | 6,871 | 7,000 |
※異符号間に有意差p<0.05、4パーセント乳脂補正乳量は統計未処理
DG1.00キログラムを超える区で初産乳量が減少する傾向がみられます。初産乳量に着目すれば過度な増体に注意し、DG1.00キログラム程度で管理することで乳量を低下させずに分娩を早めることができます。
以上のことから、育成期のDGが1.00キログラム程度ならば、乳生産に影響を及ぼすことはなく、育成期間を短縮することができると思われます。
また、過剰なCP給与は、無駄な飼料コストを増やすだけでなく、乳牛の一生にわたって影響を及ぼすことから、十分に注意しましょう。
初掲載:令和元年11月
畜産総合研究センター
乳牛肉牛研究室
研究員小林大誠
電話:043-445-4511
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