ここから本文です。

ホーム > 教育・文化・スポーツ > 歴史・文化 > 文化振興事業 > ちば海の魅力ポータルサイト > インタビュー企画「海と人」vol.2 鴨川萬祝染鈴染 鈴木幸佑氏 鈴木理規氏

更新日:令和6(2024)年12月17日

ページ番号:711527

インタビュー企画「海と人」vol.2 鴨川萬祝染鈴染 鈴木幸佑氏 鈴木理規氏

千葉県の海に関わる様々な人を取材し千葉の海の魅力を語っていただきます。
今回は鴨川市で千葉県の伝統的な漁師の祝着「万祝(まいわい)」を作り続けている「鴨川萬祝染 鈴染」の鈴木幸佑氏 鈴木理規氏にインタビューを行いました。

表紙の写真です。すずきこうすけさんと息子のりきさんの二人が写っています。

「常に生活の中にあって、楽しさも、恐ろしさも知り、その上で“海”をテーマに芸術をつくっているんです」

祝いの晴れ着、万祝

「この辺では、染め物の歴史が400年近く続いているんです。その中で、漁師の文化として生まれたのが、万祝染です」教えてくれたのは、鴨川萬祝染 鈴染(かもがわまいわいぞめ すずせん)の鈴木幸祐さん。房総から生まれた伝統工芸「万祝染」の技術を受け継ぐ三代目です。

「その昔、大漁の時には手拭いを配っていたんだそう。ですが、中でも特別な、稀にみる大漁の時には、万祝が配られたんだとか。船主から漁師に贈られる、大漁の祝いと労い。それが、この伝統的な染め物の始まりです」

昔から、イワシがよく獲れる房総の海。イワシは干すことで干鰯(ほしか)という良質な肥料に変わります。この干鰯を活用した綿の栽培が盛んになったことも、綿産業、染め物産業が盛んになった要因のひとつだといいます。

すずきこうすけさんとりきさんに話を聞いている様子の写真です。肩越しに万祝が見えます。

万祝は、江戸時代後期に房総半島で誕生して以来、東日本の太平洋沿岸にかけて広がっていきました。北は青森、南は静岡でも万祝の文化が残っているそう。絵柄は地域によって少しずつ異なり、地域ごとの特徴が現れているとのこと。

「地域によって使う型紙の絵柄や、好まれるモチーフ、色使いが違います。元を辿ると同じ絵師さんの場合もありますが、基本はお客様の要望に合わせてオーダーメイドでデザインを作っていきますね」幸祐さんの隣でそう語ってくれたのは、四代目の鈴木理規さん。大学卒業後は一般企業への就職を考えていた理規さんですが、最終的に選んだのは伝統を受け継ぐ職人としての道でした。

万祝が写っています。

「万祝は、あらゆる工程を経て色を定着させていく芸術品。覚えるまでには時間がかかりました。それでも、少しずつできることが増えてきて、そうしたら、自分でこんなデザインをやってみたい、という気持ちも生まれてきて、チャレンジさせてもらって。そうして万祝染の技術を身に着けていきました」

すずきこうすけさんとりきさんに話を聞いている際の写真です。

昔ながらを、今に残す。

万祝染の図柄を塗るための「型紙」。これは柿渋(柿の果汁)を塗って強度を高めた和紙を重ねた、渋紙という素材を使っています。この渋紙自体が手作りで、千葉県指定有形民俗文化財にも登録されている作り方です。デザインの工程は渋紙を小刀で削り、波の飛沫などの細かな柄も含めて、表現していきます。布の上に型紙を乗せて糊を塗り、その上から染料を重ねていくことで、狙った色を狙った場所に定着させて図柄を描いていきます。

「柿渋もそうですけど、糊も自然由来なんです。もち米、米糠、塩、石灰を混ぜてつくります。それから、顔料も大豆の汁、豆汁(ごじる)で溶いて作ります。大豆のタンパク質が顔料と混ざることで、絵の具としての機能を発揮します。もしかしたらもっと効率のいい素材もあるかもしれませんが、先人たちが発見した伝統のつくり方はアイデアに溢れていて面白い!だからそういうことも含めて残していきたいと思うんです」と、理規さんは目を輝かせます。

万祝の型紙の写真です。

きっかけを、ひとつずつ

伝統を伝えていくための活動として幸祐さんの代から、小学生を対象にした体験教室などを開催しているそう。

「決まった型から選んで、小さな布に色をつけてもらうんですが、同じ型でも一人ひとり色の塗り方が違って面白いですよ。そうした体験が思い出となって、一人でも将来万祝に関わってくれる人がいたら嬉しいなと思います」

そんな幸祐さんの想いは、理規さんにも確かに伝わっています。

「技術を繋いでいくことはもちろん大事ですが、まずは風習として知ってほしいんですよね。漁業文化から生まれた芸術って珍しいじゃないですか。あとは、たくさんの人に使ってもらって産業として成り立つことも大切」

すずきりきさんの写真です。

そんな考えを元にWEBサイトやSNSの運用など新しいことにも挑戦しています。長着や半纏だけではなく、万祝の柄を用いたサイクリングジャージやサコッシュなども、並んでいました。「興味がなかった人にも届き、知っていただけることは大切ですよね。私は、製品ができてお客様の手に届き、お客様の喜ぶ顔をみる瞬間が大好きです。職人自身もお客様も、そういう瞬間を積み重ねていくことが、伝統を未来に繋ぐことになるんじゃないかなって思っているんです」

鴨川の島の写真です。

海辺の文化を

万祝は、大漁を祝ってうまれた文化。裏を返せば、常に大漁ではないのが自然を相手にする漁の厳しいところ。「新年の初詣には、漁師さんが万祝に袖を通して一年の大漁と安全を願ったそうです。万祝職人として海をテーマにしていると、そこに先人たちの海への畏怖を感じることがあるんです」

海辺の街で育ち、常に海がそこにあった理規さんだからこそ、そこに親しみと、畏敬の念が共存しているといいます。
「昔から学校でも、釣りの授業があったり、離岸流に飲まれた時の対策を実習で習ったり、海の街ならではの教育を受けてきたと思います。そしてもちろん、その楽しさも、素晴らしさもたくさん味わってきました。ずっとそこにあると、この波音にも飽きると思いますか?実はそんなことないんです。海の家に集まる人、犬を連れて散歩している人、たくさんの人の営みが、海を傍らにおきながら周っている様子が眺めていて飽きない。そして、守り続けたいこの街の原風景です」

 

鴨川 万祝染

海と人をのぞいてみると、

長い時間をかけて

知恵と工夫が染み付いた

愛に溢れる街がありました。

Q.海の街のライフスタイルを教えてください!

なめろうの写真です。

漁師さんから魚や貝をいただけることも!アジフライは正三角形に近いものが肉厚で美味しい!それから、近所の魚屋さんでなめろうを買って、家に帰って一人で晩酌するのも大好きです!とにかく美味しいものをたくさん口にすることができて幸せです!!

お問い合わせ

所属課室:環境生活部文化振興課企画調整班

電話番号:043-223-2408

ファックス番号:043-224-2851

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?