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ホーム > 教育・文化・スポーツ > 歴史・文化 > 文化振興事業 > ちば海の魅力ポータルサイト > インタビュー企画「海と人」vol.4 たまあーと創作工房 主宰 こまちだたまお氏
千葉県の海に関わる様々な人を取材し千葉の海の魅力を語っていただきます。
今回は一宮町で子どもたちにアートを教える「たまあーと創作工房」の主宰で、「千葉アール・ブリュットセンターうみのもり*」のセンター長も務める、株式会社いろだま 代表取締役のこまちだたまお氏にインタビューを行いました。
*「千葉アール・ブリュットセンターうみのもり」は千葉県障害者芸術文化活動支援センターとして、人材育成講座の実施、展覧会の開催、情報収集・発信等を行ってきており、地域における障害者の芸術文化活動を積極的に支援しています。
「見てきたものが、表現になる。海の街で生まれ育って、そう実感しています」
「アートが、人に直接作用するような活動をしたくて、自分自身の表現と同じくらい、自分以外の『人』と『芸術』が関わるような取り組みにも力を入れています」
たまあーと創作工房の主宰こまちだたまおさんは、生まれも育ちも一宮町。ふるさとである一宮町で、子どもたちを中心にアートを教えるスクール・工房を営んでいます。
「昔から絵を描くのは好きでした。そういう意味で、いつからというきっかけは特になく、芸術に関わるようになっていったと思います。絵を描く人として表現することも、もちろん大事ではあるんですが、どちらかと言えば、人と芸術が関わるきっかけを作ったり、それが何か他の影響を与えたりする実感の方が喜びで。美大に在学していた頃から、そんな活動を思い描いて過ごしていました」
大学の先輩から引き継いで、放課後の幼稚園で美術を教える活動を始めたこまちださん。在学時から子どもたちと接する中で、子どもに関われば関わるほど「自然」に触れることの重要性に気づいていったといいます。
「子どものうちにいかに自然に触れるか、自然の中に身を置くかが、大事だと確信するようになりました。そして、私自身が生まれ育った、ここ一宮の環境は、そういう意味で最適だと思ったんです。海のそばで自然が多く、広い空間が得られやすい。一宮に帰って自分の工房を持つようになった理由はそこにあります。落ち着いて創作に取り組めるところが、障がいがある方との表現活動・アート制作の舞台として適しているんだと思います」
「家の近くにあった玉前(たまさき)神社という神社が遊び場でした。そこを拠点に、山に川に、もちろん海に。自然の中でたくさん遊んだ幼少期でした。ただ、同時に海は怖い場所、というのも教えられていて、遊びに行くとしても家族で。小学校高学年くらいになるまでは子どもだけで遊びに行くことはなかったです」
自然が当たり前にある環境で育ったからこそ、その楽しさも、美しさも、怖さも実感しながら過ごしてきたというこまちださん。
「今はもうなくなってしまったのですが、昔は一宮川を下って海岸線の方まで連れて行ってくれる『ぽんぽん船』があって。ぽんぽん音を立てて動く呑気な船でしたが、それに乗って海に行ったことを思い出します」
こまちださんの工房に並べられたイーゼルには1998年の開設から長い時間をかけて染みついたであろう絵の具の跡が見て取れます。この場所で子どもたちが多くの作品を作ってきた証でもありますが、そのシミの多くが青い色の絵の具であることに気がつきました。
「海を描く子は多いですね。私自身も自分の作品を作る時は水平線を入れたくなりますもんね。それはルーツとしてあると思います。たまあーとの子どもたちへのアート教室でも、海や自然をテーマに描いてもらう機会もあります。私は『一宮ウミガメを見守る会』という活動にも参加しているのですが、会と協力して子どもたちと『ウミガメの足跡を探してみよう』というプログラムを行ったこともありました」
ウミガメの北限でもある九十九里の海で、一宮ウミガメを守る会としてウミガメの保護活動にも力を入れているこまちださん。そのきっかけは、ひょんなことだったといいます。
「2015年くらいから、守る会の活動に参加し始めました。うちの教室にきていた生徒の妹さんが、熱心に調査していて。その子が高校受験で活動を続けられないとなった時に、私の娘に声をかけていただいて。最初は娘の夏休みの自由研究になればいいなと思って始めたんです。いざ調査を始めてみると、これはうちの家族だけではなくて、教室にも反映させたいと思ったんです。地元のことを知るって大切だと思うし、芸術を通じた教育を行う身として、これはちゃんと知って伝えたいテーマだと直感的に思いました。それで学会などにも参加して学び、ウミガメのことを知るように努めました」
こまちださんの教室は、学校での授業だけでなく、豊かな人間性を形成する上で必要な芸術を学びたいという親子が門を叩きます。その中には、地元で生まれ育った方もいれば、移住をしてきたご家族もいます。また、障がいのある方を対象としたクラスもあり、多様な背景を持った親子が訪れています。福祉や教育といった、まさに「人」と「芸術」が関わり作用する領域にも、強い思いを持って運営されています。
「この教室を卒業した生徒は様々な道に進んでいきます。例えば、教え子の一人は、免疫学の研究者になりました。彼はコロナ禍でさまざまな情報が流布される中で、正しい情報を伝えたいという思いのもと、絵本をつくったんです。全国の小児科がある病院や児童養護施設などに配布したんですが、その絵本の絵を私が担当しました」
生徒のことを話す時や、生徒の作品について解説する時、こまちださんはとても嬉しそうな口ぶりになります。
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「昔、調査のために、ウミガメに発信機をつけるお手伝いをしたことがあって。そのウミガメが、太平洋を超えて東シナ海まで大きく移動していくのを知った時、改めて、広い海、そして自然とのつながりを実感しましたね」
「人」「自然」「芸術」。取材の中でこまちださんが何度も口にした言葉ですが、その背景には「自分」の外側にある存在へも意識を向け、優しい眼差しで見守る、そんな温かさがあると感じました。教え子も、ウミガメも、この世界で暮らす全ての存在に対する温もりが、この工房に満ちていました。
一宮 海色の散らばる教室
海と人をのぞいてみると、
広い世界とつながり合いながら
身近にある自然を愛し観察する
人の営みがありました。
祖母がよくつくってくれたイワシやアジの料理が好きでした。
なめろう、さんが焼き、イワシのゴマ漬け。アジの寿司も大好きでしたね。アジの内臓をとって塩と酢につけて、お腹にご飯を入れるんです。すごいおいしいですよ。過去には近所の方に、バケツいっぱいいただくこともありました!イワシは足が早いので、下処理をする必要があって、「今日持って行って大丈夫?」とさすがに確認が入りますが!
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