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更新日:令和4(2022)年9月9日
ページ番号:44
平成18年5月1日
県内水道経営検討委員会
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千葉県の水道を量の面から見ると、昭和40年代頃からの飛躍的な経済成長に伴い、これと並行して水需要も激増の一途を示しました。千葉県は平坦な地形で、県内は小規模河川が多く水源としては不十分であったことや都市部を中心に地盤沈下が激しかったために地下水の汲み上げも規制されたことから、水源の多くを利根川に依存せざるを得ませんでした。利根川水系の水資源開発に後発ながら参画して暫定水利権を取得するとともに、その水を県内各地域に届けるのに必要な導・送水管や施設を整備し、県民生活や経済社会活動に必要な水を確保してきました。
この結果、何とか必要な水を安定して供給することができましたが、その反面、こうした広域的な水源の担保に必要であった社会資本等の整備には、特に千葉県は後発の参画であったことや地理的・地形的に不利であったこと等から、多額の費用を水道に必要なコストとして長きにわたって負担しなければなりません。
千葉県全体としても、こうした水資源確保に厳しい土地であることを反映して、高額な投資的経費等が原因となって全国に比べても高いコスト(給水原価)となっており、県内の地域による差も大きくなっています。
また、千葉県の水道を質の面から見ると、生活排水等が影響して水源水質は必ずしも良好ではなく厳しい条件にあり、県内の各水道事業体は高度浄水処理を導入する等の努力をしてきました。
このように千葉県における水道は、量、質の両面において全国的にも極めて厳しい条件下に置かれてきましたが、県・市町村において多大な資金と労力を用いて水道の整備を図ってきた結果、県民の約93%が水道サービスを享受できるようになりました。
【参考1・本文グラフ-15】費用に占める投資的経費の割合(PDF:21KB)
千葉県の水道は、その取り巻く環境の変化から大きな転換期を迎えようとしています。給水人口は今後は大幅な増加が期待できない一方で、水道施設を順次更新・再構築することが必要な時期を迎えようとしています。更新・再構築期においては、投資を行っても給水人口や給水量が増加するものではなく、将来の料金収入の自然増に基づく経営は期待できません。給水人口の減少や市街地の縮小にも対応した計画的な再投資を行うことが必要となります。また、水道職員の高齢化が進んでおり、これらの職員が近い将来定年退職を迎える中、技術の承継を図っていく必要があります。
さらに、これからの水道には、水質や緊急時対策等、より高いニーズに対応していくことも求められます。加えて、これまでの水道の水準を維持し、かつ今後求められる新しいニーズにも対応していくためには、より抜本的に経営基盤を強化していくことが必要となります。
取り巻く環境が変化する中においても、県民の財産である水道を維持していくとともに、より高いサービス水準も実現していくため、全県的には、情報公開と住民参加の推進、災害等への広域的な対応の強化、中長期的な計画に基づく事業経営、原水から給水に至る一貫した水質管理等の取組を進め、自立性の高い事業体として発展していくことが重要です。
住民生活に密接なサービスである水道事業は、地方分権社会における補完性の原理、近接性の原理から、市町村が行うことが原則です。しかしながら、千葉県は地理的に水源の確保に不利な地域であること等から、千葉県における県と市町村の役割のあるべき姿としては、市町村が原則として水道サービスの供給責任を担うとともに、県は広域的な水源の担保に関与することが適当と整理できると考えられます。
現在の千葉県の水道においては、県と市町村の果たしている事務責任が県内の地域によって異なり、また、広域的な水道用水供給事業と末端の水道事業に対する県・市町村の役割が交錯しています。県と市町村の役割が、そのあるべき姿からすると極めて不明確な状態となっています。
千葉県における県と市町村の役割・関係については、これまでの経緯等もあることから、その整理は必ずしも容易ではありませんが、これからの県内水道を考えるにあたっては本来の役割・関係を明確化し、それに沿った姿を目指していくべきであると考えます。
臨海の都市部において水道整備の要望が高まり、当時の市町村では財政上、技術上等の理由で水道事業の実施は困難であったため、昭和9年に千葉県営水道が設立されました。その後数度の拡張事業を経て給水人口が県全体の約5割に及ぶ水源確保から給水までを担う大規模かつ広域的な事業体となっています。
県営水道以外の地域においては、市町村営による水道事業が昭和30年代以降多くの市町村で創設・拡張されました。県営水道地域の市町村においては、自らの行政区域のうち県営水道が給水しない区域について市町村営の水道事業を行っています。なお、市川市、船橋市、鎌ケ谷市及び浦安市の区域においては、全て県営水道が給水を行っています。
また、市町村が共同で構成する企業団(一部事務組合)営を基本とし、昭和46年以降、県営水道地域と香取地域を除く地域に水道用水供給事業体が設立されました。
こうしてつくり上げられてきた現在の県内の水道事業組織の特徴を見ると、県営水道が担う地域、市町村が構成する企業団営の水道用水供給事業と市町村営の末端の水道事業が担う地域、市町村営の水道事業のみの地域に大きく分けることができます。なお、コストの高い市町村営の水道事業に対しては、県・市町村が共同で高料金対策の補助金を交付して経営の支援を行っていることも特徴的です。
末端の水道事業においては、一部の地域を除いて広域化が進まなかったため、事業規模が小さく経営的・技術的に厳しい状況にある水道事業体が見られます。
県と市町村の実際に果たしている役割が県内の地域によって異なること、広域的な水道用水供給事業と末端の水道事業への県と市町村の関与が複雑に交錯していることから、県・市町村の水道事業に対する役割が不明確となっています。
用水供給事業の受水費という形により全体的なコストの内訳が水道事業からは分かりにくくなっていること、コストの高い水道事業に対しては、県・市町村の一般会計が補助を行っていることなどから、各水道事業体における経営努力がその経営状況に直接反映されにくい状態となっています。
千葉県は水資源の担保に不利であることから、広域的な水資源開発や導・送水等の施設整備に要する費用の負担が全国的にも見ても大きくなっており、かつ、県内での地域差が見られます。広域的な水資源の確保における時期や地理的条件の違いから費用負担が地域ごとに異なり、県内でも経営環境に大きな地域差が見られます。
水道にとって新しい時代への転換が求められる中、新しい概念の広域化や水道法の改正による第三者委託制度の導入等これまでよりも経営上の選択肢が広がりつつあります。
第三者委託制度や指定管理者制度、さらには民営化については、効率的な事業経営が実現できる可能性も高いものの、包括的に民間に委ねる場合にはそのリスクも大きくなると考えられます。現時点では、特に大規模かつ包括的な民間活用については慎重な議論が必要です。
現時点での実現可能性が高く、かつ有効と考えられる選択肢である統合・広域化について県・市町村等が具体的な対話を行うのに資するよう、現段階での基本的な考え方を整理します。
これからの統合・広域化は、県内の水道事業の運営基盤を強化し、高い技術力、経営力、財務力を有する事業体をつくり上げることにより、これまでに達成してきた水道の水準を次世代に確保し続け、さらに21世紀に求められるより高いサービス水準の水道を実現することです。
なお、この場合の統合・広域化は、経営や運転管理の一体化等のソフト面を中心としたものを想定しています。
【参考3・本文図―3】統合・広域化により期待される効果
水道事業は原則として基礎自治体である市町村が担っていくものです。その一方で、広域的な水源確保及び用水供給については、県が広域的に関与することも考えられます。県と市町村の役割を明確化した上で、それに整合した姿について検討すべきと考えます。
広域的な水源の担保に必要な費用については、県民全体に水源を公平に担保するため、県民が共同で一定の負担をすることが望ましいと考えます。今後の県の役割については、本来県民が共同負担すべき費用についての考え方を踏まえて検討することが望ましいと考えます。
それ以外の費用については、地域又は市町村単位での自己責任による負担とすることが適当と考えられます。
統合・広域化に伴い水道料金が統一・平準化された場合には、一部地域で水道料金(又は受水料金)が上昇する可能性が懸念される一方で、統合・広域化により効率化が図られることで、料金上昇の抑制や料金引き下げの効果を水利用者が享受できる可能性もあります。
なお、更新・再構築期の水道にあっては、統合・広域化を行った場合においても、サービス水準の維持・向上を目指す上では、料金値上げによって資金確保することに水利用者の理解を得ていくことも考えられます。
また、これからの統合・広域化においては、一律の料金になるという前提で考える必要は必ずしもありません。
統合・広域化の検討にあたっては、水平統合、垂直統合等の姿や枠組みによって効果の現れ方は異なるものですので、地域の実状に即して枠組みを想定し、その効果を具体的に検討すべきと考えます。
末端の水道事業体については、自立性の高い水道として技術及び経営の両面について安定した基盤を確立するため、水道用水供給事業の区域を一つの単位として統合を進めるべきと考えます。特に小規模水道事業体については早急に検討すべきものと考えます。
県営水道については、統合・広域化の効果を既に実現しているものと捉え、組織を一事業体として維持することも視野に検討すべきと考えます。その場合であっても県・市町村の役割を組織運営面でも明確化し、県営水道地域の市町村が経営面・財政面で参画すべきであると考えます。
なお、現行の県営水道について検討するに際しては、同一市町村の行政区域を県営水道と市町村営水道が分割して給水している場合の給水区域の統合についても併せて検討することが望ましいと考えます。
統合・広域化については、県内全域で一斉に進めることが統合効果を県内全域に及ぼす上では望ましいですが、各圏域の事情で一斉に進めることが困難な場合、統合の方向性について全県的に明確に示した上で、その方向性の実現に向けての作業は画一的にせずに各圏域の実情に合わせつつ統合可能な圏域から段階的に統合することも考えられます。
この中間報告を基に、これからの県内の水道事業について、県・市町村が共通認識を持った上で、統合・広域化の具体的な対話を進めることを期待しています。
今後の進め方としては、地域ごとに検討会を開催し、客観的な指標により各水道事業の置かれている状況について共通理解を高めるとともに、統合・広域化の効果について各地域の実情に即して具体的に検討することが望ましいと考えます。
当委員会においては、今後の県内各地域での検討状況を踏まえつつ更に議論し、県・市町村等の関係者の対話と合意形成を促したいと考えています。
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