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更新日:令和5(2023)年12月4日
ページ番号:619664
県内のナシ園では樹齢30年を超える老木が多くなり、改植が喫緊の課題になっています。改植後の早期成園化には2年生以上の大苗の利用が有効です。大苗育苗に従来の架線式施設を用いると施設の設置と新梢の誘引に時間がかかることから、農林総合研究センターではフラワーネットを用いる簡易式大苗育苗施設(以下、簡易式施設)を開発しました。しかし、この施設の利用を前提とした大苗の育苗方法は明らかになっていません。そこで、単年で優良なポット大苗を育成するため、施肥、かん水及びジベレリン処理について適切な栽培条件を明らかにしました。是非御活用ください。
開発した簡易式施設は、高さ5メートルの支柱にフラワーネットを3段に設置した構造です(写真1)。ネットは容易に上下に移動できるように取り付け、植え付け時には切り返した主幹上部の高さにまで下げます。その後、主枝が伸びるに従い、ネットの間隔を広げつつ引き上げます。設備が簡易で設置や撤去が容易なため、小規模な育苗に適しています。詳細は、フィールドノート令和5年1月号「フラワーネットを用いた簡易式大苗育苗」を参照してください。
写真1 簡易式大苗育苗施設
(1)苗数
簡易式施設は、従来の架線式施設に比べると風による新梢の揺れが大きいため、生育が劣る傾向があります。苗は予備を含め6割程度多めに用意してください。
(2)かん水
電磁弁を用いた自動かん水が便利です。4月から11月までかん水し、排水の優れる圃場であれば降雨の有無に関わらず毎日行ってかまいません。1樹当たりの日かん水量は1リットルとし、朝昼夕の3回に分けて行います。これ以上かん水しても生育はよくならず、0.25リットルに減らすと生育が遅れます(表1)。
表1 かん水量と台木の違いが「幸水」大苗の樹体生育に及ぼす影響
注1)各区ともに朝昼夕の3回に等分してかん水した
注2)かん水期間は4月30日から11月15日
注3)同列の英小文字間にはTukey-Kramer法により5%水準で有意差あり
注4)1区1樹10反復とした
(3)施肥
速効性の化成肥料のみ施肥すると降雨による流亡を起こし、育成中に肥切れします。これを防ぐには、窒素成分量の3分の2を緩効性肥料(ハイコントロール13-9-11など)に置き換え、ポット内に4月に施用します。1樹当たりの年間の施肥量は、窒素50グラム、リン酸40グラム及び加里45グラムとします。
(4)ジベレリン処理
新梢基部へのジベレリンペースト剤の塗布は、4月の1回のみでも伸長促進の効果がありますが、4月、5月及び7月の3回処理とすると効果が高まります。
ジョイント仕立てにおいて、1年生苗を直植えする方法と、大苗育苗後に移植する方法について早期成園化効果を比較検証しました。1年生苗の場合、定植翌年にジョイントを行える箇所は全体の約4割に過ぎないのに対し、大苗を用いると移植時に全体の約8割でジョイントできました。一方で、大苗は植え傷みを起こすことがあり、前年に1年生苗を直植えした場合比べると、側枝が短く樹冠の拡大が劣りました。このことから、既存樹からの収穫を続けながら徐々に改植を進めたい場合は大苗、かん水ができない等植え傷みが心配な園では1年生苗とするなど改植の条件によって使い分けましょう。
写真2 大苗利用によるジョイント仕立て(定植4年後)
初掲載:令和5年11月
農林総合研究センター
果樹研究室
研究員:籠橋 駿介
電話番号:043-291-0151
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