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更新日:令和5(2023)年7月24日
ページ番号:588178
千葉県のナシ栽培で最も重要な地上部病害は果実の商品価値の低下をもたらす黒星病です。スコア顆粒水和剤やマネージDFなどエルゴステロール生合成阻害剤(以下、DMI剤)は浸透移行性を有し、黒星病に対して卓効を示すことから、ナシ栽培では基幹防除剤として長らく使用されてきました。しかし、近年、他県でDMI剤耐性菌の発生が報告され、県内でも耐性菌の発生が懸念されるようになりました。今後もDMI剤をナシ栽培で継続使用するには、耐性菌の発生リスクを低減させることが重要であり、代替薬剤の利用を進める必要があります。
写真1ナシ黒星病の発病葉
写真2ナシ黒星病の発病果
現行の「幸水」の防除暦では、果実が黒星病に対して特に感受性が高くなる4月の開花期前後及び7月上旬に、DMI剤が年3回採用されています。代替薬剤として、防除暦に採用済みの薬剤を使用すると、その薬剤で耐性菌発生リスクが高くなってしまいます。そこで、防除暦で未採用の薬剤を取り上げることにし、新規の作用機構(薬剤が病原菌に対して効果を示す仕組み)をもつミギワ20フロアブルを対象に各種病害に対する防除効果試験を実施しました。
その結果、この剤はナシ黒星病に対してDMI剤と同等の高い防除効果を示しましたが、赤星病にはDMI剤より劣る効果でした。このため、赤星病が問題となる4月開花期前後はDMI剤をそのまま使用するのがよいと考えられました。
表1各種薬剤の梨病害に対する防除効果(PDF:135.2KB)
7月上旬は「幸水」果実で黒星病に対する感受性が特に高くなる時期です。この時期のミギワ20フロアブルの散布は、「幸水」果実に対しDMI剤よりも高い防除効果を示しました。
さらに、慣行防除体系と7月上旬のDMI剤をミギワ20フロアブルに置き換えた新規病害防除体系を比較する試験を実施しました。その結果、黒星病の発病程度は両体系区とも同程度であり、果実汚れも大きな差は認められませんでした。
このように表2に示す新規防除体系を導入することで各種ナシ病害に対する防除効果を低減させることなく、DMI剤の使用回数を削減することができることが明らかになりました。
表2DMI剤の使用回数を2回に削減した新規ナシ病害防除体系(PDF:110KB)
なお、耐性菌の発生リスクを低減するには薬剤防除以外の方法も取り入れ、薬剤に頼りすぎないことも大切です。落葉処理や鱗片発病芽の除去など耕種的防除も確実に実施して、圃場内の黒星病菌密度を低く維持するように努めてください。
初掲載:令和5年6月
農林総合研究センター
病理昆虫研究室
研究員:青木 由
電話番号:043-291-9991
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