本文へスキップします

センター紹介

2016年院内がん登録症例

2016年に当院で「がん」と診断した症例、または、他院で診断された後、2016年に当院を受診した症例を登録しています。なお、脳腫瘍については良性腫瘍も含まれています。

集計結果

全登録症例件数(部位別・性別)

2016年症例として登録した全件数を集計したものです。

部位別項目

主要5部位(我が国に多いがんである胃がん大腸がん肝がん肺がん乳がん)に加え、当院で件数の多い子宮がん(頸部、体部)前立腺がん食道がん膵臓がん悪性リンパ腫の計10部位について集計しました。

集計対象は当院で初回治療を行った症例のみになります。なお、初回治療には当院で経過観察を行っている症例を含みます。

集計項目は次の通りです。

  1. 年齢階級別・性別登録数
  2. 治療前ステージ(UICC)別登録数
  3. 治療別・治療前ステージ別登録数

なお、治療は次の通り略します。

略称対応表

略称 治療の分類
手術※1のみ
内視鏡のみ
手+内 手術+内視鏡
放射線のみ
薬物療法※2のみ
放+薬 放射線+薬物
薬+他 薬物+その他※3
手/内+放 手術/内視鏡+放射線
手/内+薬 手術/内視鏡+薬物
手/内+他 手術/内視鏡+その他
手/内+放+薬 手術/内視鏡+放射線+薬物
他の組合せ
治療なし 治療なし
  • ※1外科的治療と体腔鏡的治療のいずれか、または両方
  • ※2化学療法、免疫療法・BRM、内分泌療法のいずれか
  • ※3肝動脈塞栓術、アルコール注入療法、温熱療法、ラジオ波焼灼を含むレーザー等焼灼療法、その他の治療のいずれか
全登録症例件数(部位別・性別)

2016年症例の全登録件数は男性1,885件、女性1,219件、計3,104件です。

男性では前立腺、胃、肺、大腸、食道の順に多く、女性では乳房、子宮(頸部+体部)、大腸、胃、肺の順に多いという結果となりました。

症例件数詳細

部位名 男性 女性 総計
口腔・咽頭 91 14 105
食道 97 20 117
284 101 385
大腸(結腸) 141 90 231
大腸(直腸) 65 40 105
肝臓 33 11 44
胆嚢・胆管 17 9 26
膵臓 80 58 138
喉頭 25 1 26
237 80 317
骨・軟部 25 22 47
皮膚(黒色腫含む) 8 3 11
乳房 3 328 331
子宮頸部 0 111 111
子宮体部 0 57 57
卵巣 0 47 47
前立腺 401 0 401
膀胱 85 22 107
腎・他の尿路 68 23 91
脳・中枢神経系 24 21 45
甲状腺 27 25 52
悪性リンパ腫 79 60 139
多発性骨髄腫 11 7 18
白血病 9 4 13
他の造血器腫瘍 6 2 8
その他 69 63 132
総計 1,885 1,219 3,104

胃がん

年齢階級別・性別登録数のグラフを見ると、55歳から徐々に増え始め、75歳から79歳をピークに減少しています。また、罹患数は女性より男性のほうが多いことがわかります。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、I期の割合がもっとも大きく74%を占めています。次いでIV期16%でした。

I期の割合が高い理由として、胃がんの多くが早期に発見されていることが考えられます。

胃がんでは、手術がもっとも有効で標準的な治療で、I期からIII期の患者さんに対して行われます。病変が浅く、リンパ節に転移している可能性が極めて小さいときは、内視鏡を用いて胃がんを切除する方法があります。胃がんの抗がん剤治療には、手術と組み合わせて使う補助化学療法と、治療が難しい状況で行われる抗がん剤中心の治療があります。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、I期は手術や内視鏡による切除の割合が大半を占めています。II期からIII期では、手術または内視鏡的切除+薬物による治療の割合が多くなり、IV期は薬物のみの治療の割合が多くなります。

胃がん年齢別
胃がんステージ
胃がん治療

大腸がん

年齢階級別・性別登録数のグラフを見ると、50歳から増え始め、65から74歳をピークに減少しています。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、全体の50%を0期・I期のいわゆる早期がんが占めています。他の部位と比べて不明の割合が多いのが特徴です。これは、特に大腸の早期がんでは、術前にがんが発見されず、内視鏡による手術後の組織検査ではじめてがんが発見されることが多いからです。

大腸がんの治療は手術による切除が基本で、早期でも手術が必要な場合があります。0期またI期の軽度のものは、内視鏡を使って大腸の内側から切除する方法もあります。直腸がんでは手術後の補助療法として放射線治療を行う場合があります。抗がん剤治療は、主に手術後のがん再発を予防するための補助療法、手術が困難な進行がんに対して、延命および生活の質(QOL)の向上を目的に行います。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、0期は内視鏡を使った治療が多く行われ、I期、II期では単独手術が多く行われています。III期からIV期は手術または内視鏡的切除+薬物による治療の割合が多く占めています。

大腸がん年齢
大腸がんステージ
大腸治療別

肝がん

年齢階級別・性別登録数のグラフを見ると、65歳から増加し80歳から84歳をピークに減少しています。また、罹患数は女性より男性のほうが多いことがわかります。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、I期がいちばん多く40%、次いでIV期、II期、III期の順となっています。

肝臓がんの治療は、手術、局所療法、肝動脈塞栓術(TAE)の3つが中心になります。肝臓がんの患者さんの多くは、慢性C型肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患を抱えています。そのため治療は、がんの病期だけでなく、肝機能の状態なども加味したうえで選択する必要があります。

単発で比較的大きながんでは肝切除、がんの大きさが3cmより小さい場合は、ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所療法が選択されます。腫瘍が複数ある場合は塞栓療法(TAE、TACE)が選択され、骨に転移した場合や、血管に広がったがんに対する治療では放射線療法が、手術や局所療法などの標準的な治療で効果が期待できない場合は、抗がん剤治療が行われます。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、I期と診断された症例は様々な治療方法となっていますが、IV期では、薬物を使った治療の割合が多くなっています。なお、その他の治療にはTAE、RFA等が含まれています。

肝がん年齢
肝がんステージ
肝がん治療

肺がん

年齢階級別・性別登録数のグラフを見ると、45歳から増加し65歳から69歳をピークに減少しています。また、罹患数は女性より男性のほうが多いことがわかります。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、I期とIV期が多く占めています。他の部位と比べてIV期の割合が多い傾向にあります。

肺がんの治療は、肺がんの分類(非小細胞がんと小細胞がん)と病期に基づいて決まりますが、がんのある場所、全身の状態、心臓や肺の機能なども総合的に検討して治療法を選択します。ここでは肺がんの分類(非小細胞がんと小細胞がん)についての集計は行っていません。

肺がんのI期からII期の場合は、手術の適応になります。肺の葉の1つか2つ、または片側の肺すべてを切除する方法があります。骨や脳に転移した場合は放射線治療が行われます。非小細胞がんでは病期に応じて手術や放射線治療と組合せて、あるいは単独で抗がん剤治療を行います。小細胞がんは抗がん剤の効果が高いため、抗がん剤の治療が中心となります。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、I期・II期は手術による治療が多く行われていますが、ステージが進むにつれ薬物のみの治療または、治療なしの割合が多くなっていることがわかります。

肺がん年齢
肺がんステージ
肺がん治療

乳がん

年齢階級別登録数のグラフを見ると、35歳代から増加し始め60歳から64歳がピークとなっています。

また、まれに男性が乳がんにかかることもあります。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、I期が43%と最も多く占めていて、次いでII期27%でした。

0期とI期のがんが全体の61%を占めています。

乳がん治療は、手術、放射線治療、薬物療法(ホルモン療法、分子標的治療、化学療法など)があります。それぞれの治療を単独で行う場合と、複数の治療を組み合わせる場合があります。

基本的な治療は手術によってがんを取りきることで、大きく分けて、乳房を残す「乳房温存術」と、乳房を全部切除する「乳房切除術」とあります。放射線治療は、手術後の再発のリスクを下げるために、乳房温存術の後や乳房切除術で病変が大きい場合、腋の下のリンパ節に広がっている場合などに行われます。薬物療法は、「手術やほかの治療を行った後にその効果を補う」、「手術の前にがんを小さくする」、「手術が困難な進行がんや再発に対して延命および生活の質(QOL)を向上させる」などの目的があります。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、I期においても手術のみは少なく、手術と薬物治療や放射線治療を組み合わせた治療が大半を占めています。他の部位と比べて、手術+薬物治療や手術+放射線+薬物治療というように、複数の治療を組み合わせる治療が多くみられます。

乳がん年齢
乳がんステージ
乳がん治療

子宮がん(頚部・体部)

年齢階級別・部位別登録数のグラフを見ると、子宮頸癌は25歳から増加し、45歳から49歳がピークとなっています。子宮体癌は45歳から増加し、55歳から59歳がピークとなっています。このことから子宮頸癌は若い年代がかかりやすいことがわかります。

子宮頸癌のUICC TNM治療前ステージの割合を見ると、0期が大半の46%を占め、次いでI期18%となっています。

子宮体癌のUICC TNM治療前ステージの割合では、I期が最も多く全体の76%を占めています。

子宮頸癌の治療には手術、放射線治療、抗がん剤治療があります。がんの病期や年齢、合併症の有無など患者さんのそれぞれの病状に応じて選択されます。

子宮体癌の治療は、手術でがんを取り除くことが基本になります。患者さんの状態やがんの広がりに応じて、放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法を組み合わせて行います。

子宮頸癌の治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、0期では手術による治療の割合が半数以上を占めていますが、ステージが進むにつれ手術の割合が少なくなり、放射線治療、薬物治療などの割合が多くなっています。

子宮体癌の治療前ステージ別・治療方法の割合では、I期からIII期までは手術単独、または、手術と薬物治療を併せた治療の割合が大半を占めています。

子宮がん年齢
子宮がん頸部ステージ
子宮がん体部ステージ
子宮がん頸部治療
子宮がん体部治療

前立腺がん

年齢階級別登録数のグラフを見ると、60歳代から急激に増加し65歳から74歳がピークとなり減少しています。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、I期が55%と大半を占め、次いでIII期20%となっています。

前立腺がんの治療としては、手術、放射線治療、内分泌療法、抗がん剤治療があります。また、特別な治療をせず注意深く経過を観察する場合(待機療法)もあります。前立腺癌の治療方法は、TNM分類、発見時のPSA値、がんの悪性度、患者さんの年齢や合併症、さらに患者さんの希望などを考慮した上で最適と考えられる治療を選びます。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、I期とII期では手術の割合が半数以上を占めていますが、ステージが進むにつれ放射線治療と薬物を組み合わせた治療や、薬物単独の治療の割合が多くなっています。

前立腺がん年齢
前立腺がんステージ
前立腺がん治療

食道がん

年齢階級別・性別登録数のグラフを見ると、60歳代から増加し65歳から74歳がピークとなっています。また、罹患数は女性より男性のほうが多いことがわかります。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、0期とI期の早期がんが全体の55%を占めています。

食道がんの治療には大きく分けて内視鏡を用いた治療、手術、放射線治療、抗がん剤治療の4つがあります。食道癌では、手術が最も一般的な治療です。0期またはI期の軽度のものは、内視鏡を用いて食道がんを切除する場合もあります。ある程度進行したがんでは、手術、放射線治療、抗がん剤治療を組み合わせる治療も行われます。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、0期とI期では、手術または内視鏡による切除の割合が多く占めています。II期からは手術のみの治療の割合は少なく、放射線治療+薬物治療など、複数の治療を組み合わせる治療の割合が大半を占めていることがわかります。

食道がん年齢
食道がんステージ
食道がん治療

膵臓がん

年齢階級別・性別登録数のグラフを見ると、55歳から増加し、65歳から69歳をピークに減少しています。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、IV期が45%といちばん多く占めていて、次いでII期23%となっています。

膵臓がんの標準的な治療法は、手術、抗がん剤治療、放射線治療の3つです。がんが膵臓やその周囲にとどまっている場合は、手術単独、あるいは手術と放射線治療を組み合わせます。何らかの理由で手術ができないときは、放射線治療や抗がん剤治療が行われます。がんが広い範囲にあり、根治的な手術ができない場合や転移がある場合は、抗がん剤による治療が中心となります。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、I期からII期は手術単独または手術と薬物治療を組み合わせた治療が多くを占めています。一方、ステージが進むにつれ手術の割合は減り、薬物治療の割合が多くを占めていることがわかります。

膵がん年齢
膵がんステージ
膵がん治療

悪性リンパ腫

年齢階級別・性別登録数のグラフを見ると、55歳から徐々に増加し65歳から69歳をピークに減少しています。また、罹患数は男性の方が女性より若干多いことがわかります。

UICC TNM治療前ステージの割合を見ると、IV期が39%と最も多く、次いでI期25%、II期22%となっています。

悪性リンパ腫の治療法は、大きく放射線治療と抗がん剤治療に分けられ、手術を必要とする患者さんはまれです。治りにくい場合や治療の効果が十分でない場合は、さらに強い抗がん剤治療や抗CD20モノクローナル抗体を用いた抗体療法、造血幹細胞移植などが行われます。

治療前ステージ別・治療方法の割合を見ると、I期からIV期ほとんどが薬物による治療が行われています。これは悪性リンパ腫の主な治療方法として抗がん剤化学療法が行われているからです。

リンパ腫年齢
リンパ腫ステージ
リンパ腫治療