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センター紹介

乳腺センターの概要

乳がんは、食事の欧米化、少子化や晩婚化により女性のがんの第1位を占め、2017年に新たに乳がんに罹患する人は9万人と予測されています。また、今後さらに増え続け、50才以下の子育て中や働き盛りの女性に特に多いがんです。このように増加する乳がん患者に対応し、質の高い医療を提供するために、2016年10月に乳腺センターが開設されました。乳腺センターでは、乳腺外科、腫瘍・血液内科、形成外科、遺伝子診療科などとの連携により総合的・集学的な乳がん治療を行っています。

各科の特色

1.乳腺外科

乳がんの診断と治療

当科では、「正確な診断・適切な手術、術後はEBMに基づいて全身治療、新規抗がん剤の導入、積極的な臨床試験への参加」をモットーとし、より質の高い医療が提供できるよう日々努力しております。

早期診断治療

当科では受診当日にMMG・超音波・細胞診を実施し、即日診断に努めております。細胞診で不明な時は局麻下で針生検を実施します。初診から手術までは約1ヶ月、入院はクリティカルパスを使用し1週間前後です。

低浸襲治療

早期がん(1.5cm以下・リンパ節転移なし)の患者さんに対し、ラジオ波熱焼灼療法(RFA)を2013年度より先進医療として国内8施設による多施設共同試験開始致しました。また外科治療は術中にセンチネルリンパ節生検を行い、腋窩リンパ節陰性例にたいして腋窩リンパ節郭清の省略に努めております。乳房温存術につきましては、全体の約5割となっております。

化学内分泌療法

術前および再発例に対する臨床試験を含めた化学内分泌療法を積極的に行なっております。術後補助化学療法は、腫瘍血液内科で行っています。通院化学療法室での外来治療を主とし、ホルモン療法や分子標的製剤につきましても、患者さんと相談の上、状態に合わせた薬剤が選択できるよう密に関わっております。世界的標準治療を患者さんに提供するにとどまらず、治験や高度先進医療を多数行っており、千葉市近郊では、当施設でしか受けられない高度な治療を受けられる可能性があります。

乳房再建術

2013年度より形成外科が新設され、形成外科と密に連携を計り、病状や患者さんの希望を考慮し、安心・安全な乳房再建を行っています。

地域連携クリティカルパス

2008年7月より乳がん術後経過観察地域連携クリティカルパスを使用した地域連携を行っています。連携している地域の医療機関(32施設)と診療計画を共有することにより、同じ医療の質を保ちながら、患者さんのご自宅に近い場所での医療の継続を行うことができます。現在までに2200名(2017年3月現在)を超える患者さんが登録されています。

2.乳癌化学療法外来(腫瘍・血液内科)

腫瘍・血液内科では、造血器悪性腫瘍および抗癌剤感受性の高い固形腫瘍に対する化学療法を担当しており、造血器腫瘍、固形腫瘍のそれぞれに対して、最新の標準治療を適切に提供していくことを科の基本方針としています。

乳癌に対しては、早期乳癌に対する術後補助化学療法、および再発乳癌・転移性乳癌に対する化学療法を乳腺外科と協力して行っています。

平成25年度~27年度の3年間で、乳癌の術後補助化学療法あるいは再発後抗がん剤治療を目的として新規に当科へ紹介された患者さんは327名で、入院治療を行った乳癌患者さんの数は63名でした。

年度別治療患者数

年度

外来化学療法 入院治療

平成25年度

141

41

平成26年度

86

9

平成27年度

100

13

 

術後補助化学療法は、癌の治癒を目的として手術や放射線と共に集学的治療の一環として行うものです。手術の所見(癌の大きさ、腋窩リンパ節転移の数、ホルモンレセプターやHER2蛋白発現の有無、等)から判断した再発リスクに応じて、乳腺外科と腫瘍・血液内科で協議して抗癌剤の内容を決定しており、現在は、TC療法(主に低リスク)、FEC療法(主に中リスク)、FEC+ドセタキセル療法(主に高リスク)を行っています。HER2蛋白陽性の場合には、FEC療法やFEC+ドセタキセル療法に加えてハーセプチンの投与も併用しています。

 

再発・転移性乳癌に対して化学療法を行う目的は、癌の進行を抑えて出来るだけ長く普段の生活が続けられるようにすることです。共通の標準的治療があるわけではなく、それぞれ最適の治療法が異なるので、患者さんの年齢や癌の進行状況などを考慮しつつ、各々の患者さんの人生観や生活スタイルに合わせた治療(抗がん剤)を選択できるように心がけています。

≪乳癌化学療法外来担当医≫

味八木 寿子(乳腺外科)熊谷 匡也(腫瘍・血液内科)辻村 秀樹(外来化学療法科)

3.形成外科

乳房再建とは

乳がんの手術による変形や全摘後の乳房の形態を、ご自身の体の一部や人工乳房を使用して再び取り戻すことを乳房再建といいます。

再建方法

ご自身の体の一部(自家組織)を使用する方法と人工乳房(シリコン・インプラント)を使用する方法があります。自家組織の場合は採取部位の筋肉の犠牲が少ない遊離腹部皮弁(深下腹壁動脈穿通枝皮弁)を用いることが多いのですが、患者さんの希望や体型などを考慮して決めています。当院では異物を用いないため自家組織による再建のほうが主流ですが、他に傷をつけたくない方などにはインプラントによる再建も行っております。また、乳がん術後の上肢リンパ浮腫の患者さんに対しては、リンパ浮腫の外科的治療である、リンパ節移植を乳房再建と同時に行うことも可能です。

どの方法を選べばよいの?

乳がん手術と並行して行う一次再建の利点としては、乳がんの手術の際に乳房の喪失感を軽くすることや、手術を受ける回数を少なくすることなどの利点がありますが、がんの治療が終了してから行う二次再建も可能なので、焦る必要はありません。
当院では、自家組織(遊離腹部皮弁)による再建は通常、手術時間8~10時間、術後入院期間は8~10日間、インプラントによる再建は手術時間2時間、術後入院期間は4~6日間程度のことが多いです。自家組織による再建は、最初は大変ですが、長期的には通院不要になります。一方、インプラントによる再建は、人工物の為、年1回程度の定期検査を勧めています。大切なのは、乳房再建をしたいと考えた際に、十分に納得して治療に臨んでいただくことだと思います。失った乳房を取り戻したいという、ごく自然な望みについて聞いてみたいことがあれば、いつでも、何度でもご相談ください。

年度別手術件数
術式

2017年度

2018年度

2019年度

自家組織による乳房再建(遊離腹部皮弁)

18

28

29

自家組織による乳房再建(その他)

4

4

6

シリコン・インプラントによる乳房再建

7

7

4

 

4.遺伝子診療科

乳がんは体質の影響を受けて生じることがあります。体質は家族で共有するため、乳がん患者さんの約15%は家族にも乳がんになったかたがいます。遺伝子診療科では、患者さんが乳がんのできやすい体質を持っているかどうかを、がんの遺伝を専門とした医師(臨床遺伝専門医)と遺伝カウンセラーが病歴と最新の遺伝子検査により診断しています。また、がん患者さんのご家族も、乳がんになりやすい体質を持っているかどうか発症前に診断することができます。

このような方が受診しています

  • 自分が乳がんになったので、娘に遺伝しないか心配です。
  • 母親と姉が乳がんだったので、私も乳がんになるのか心配です。
  • 乳がんと卵巣がんの両方になったが、がん体質でしょうか?
  • 家族や親戚に遺伝性のがんだと言われた人がいるが、子どもに遺伝しますか?
  • 他の医療機関で遺伝性のがんだと言われたが、説明がよくわからなかった。
  • 遺伝子検査を受けたいので、詳しい説明を聞きたい。
  • その他、若年性(50歳未満)乳がん、両側乳がん、トリプルネガティブ乳がん、男性乳がんの患者さん・ご家族
診療方針

1.遺伝性の評価

患者さんとご家族の病気から遺伝形式や原因遺伝子を推定し、臨床的に診断します。

2.カウンセリング

乳がんの遺伝に関する最新の情報を提供し、患者さん自らが納得のいく診療を選択できるよう支援します。

3.遺伝子検査(確定診断のための検査)

検査を担当する遺伝子診断部と連携しており、保険にはない専門的な遺伝子検査(自費)を受けることもできます。遺伝子検査の必要性も含めて患者さんと一緒に検討していきます。

4.予防的治療・検診

国際的なガイドラインに準じた個別の検診を計画します。リスク低減手術が適応になる場合もあります。

診察時間・場所
遺伝子診療科

火曜日・木曜日13時00分-16時00分 乳腺センター1階 外来診察室 (完全予約制)

おひとり1時間程度ゆったりお話しを伺います。わかる範囲で祖父母・おじ・おばまでの病名と発症年齢を書いて当日ご持参ください。

予約方法

当院の患者さん・ご家族は、担当医にお申し出ください。当院でがん治療を受けておられないかたやご家族だけで受診する場合は、地域医療連携室にご連絡ください。

診療実績

外来件数    123件(平成27年度)

主な疾患

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群、カウデン症候群、リ・フラウメニ症候群、ポイツ・イエガ症候群