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更新日:令和6(2024)年8月13日
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防災・防犯・安全
令和6年8月1日掲載
再生時間:57分9秒
大規模な地震や大雨などによって、宅地が大規模で広範囲に被害を受けた場合に、被害の状況を迅速かつ的確に把握して、宅地の二次災害を軽減・防止し、住民の安全を確保するために被災宅地の危険度の判定を行う被災宅地危険度判定士として必要となる判定マニュアル等について説明します。
「危険度判定マニュアルの解説_1」では、「被災宅地の調査・危険度判定」の作成について、手順等の内容を具体的に示しています。
動画の内容
スライド1
これから、被災宅地危険度判定士の講習会を始めさせていただきます。そのなかでも、判定の基本となる判定マニュアルについて説明いたします。
スライド2
まず、被災宅地の調査危険度判定マニュアルの説明の場合は、判定マ丸として、手引きの説明の場合は、手引き丸として、参考資料は、参考丸として、右肩にページを表示します。それでは、本題に入りたいと思います。
スライド3
被災宅地危険度判定関係のマニュアル及び手引きは、被災宅地危険度判定連絡協議会のホームページよりダウンロードできます。
スライド4
平成7年1月の阪神淡路大震災での宅地災害を教訓として被災宅地危険度判定活動を、より円滑、かつ適切に実施するために、都道府県、政令指定都市等を会員として、平成9年5月に被災宅地危険度判定連絡協議会が創設されました。本協議会では、判定方法の改善や、会員相互の支援に関しての調整、判定における実施体制の整備、などを推進しています。
スライド5
被災宅地危険度判定連絡協議会では、このようなパンフレットを作成しています。被災判定調査の事前PRや、判定をしている際に、住民に活動内容を説明する資料などとして、利用してください。
スライド6
これは、平成7年兵庫県南部地震以降の被災宅地危険度判定実施状況をまとめたものです。実際に被災宅地危険度判定制度による判定は、平成12年鳥取県西部地震が初めてとなります。その後、震度6弱以上の地震で、この被災宅地危険度判定が行われるようになってきています。
スライドでもおわかりのように、震度7以上だった平成16年新潟県中越地震、平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震で、被害が甚大だったことがこの調査結果からも分かります。
スライド7
主な被災宅地危険度判定の写真です。上段左は、平成16年新潟県中越地震。上段右は、平成19年新潟県中越沖地震。下段左は、平成20年岩手内陸地震。下段右は、平成23年長野県北部地震の被災写真です。
スライド8
こちらは東日本大震災で被災した、仙台市折立(おりたて)地区を撮影したものです。左の2枚は同じ宅地を角度を変えて撮っています。宅地が道路より50センチ位沈下しているのは、宅地背後斜面が宅地ごと滑ったのが原因です。右上は盛土の崩壊に伴う擁壁の亀裂破壊です。右下が亀裂部分を拡大したもので、大きく口が開いているのが分かります。
スライド9
2021年3月26日政府の地震調査委員会が、今後30年以内に、震度6弱以上の揺れが起きる確率の分布を示した全国地震動予測地図2020年版を公表しております。
スライドに示されている確率は、その場所で地震が発生する確率ではなく、日本周辺で発生した地震によりその場所が震度6弱以上の揺れに見舞われる確率です。日本列島のなかでも強い揺れに見舞われる可能性が高い場所ほど濃い赤色と相対的に低い場所を黄色で示しています。巨大地震が想定されている「千島海溝」や「南海トラフ」、首都直下型地震が想定されている太平洋側で、確率が高い傾向が見受けられます。確率の定義ですが3%なら1千年に1回程度、6%で500年に1回程度、26%では、100年に1回程度を示しています。
スライド10
このスライドは、都道府県県庁所在地周辺で、今後30年以内に激しい揺れと定義されている震度6弱以上で揺れる確率を示したものです。震度6弱以上に合う確率は、新宿都庁周辺が、全国で上から9番目となっています。地震調査委員会は「相対的に確率が低い地域でも、油断は禁物」と注意を呼びかけています。
スライド11
さて、これから判定マニュアルの説明を行います。マニュアル、参考資料、手引きなどの内容をスライドにて説明します。まずは、パートワン基本事項編です。基本的な事柄を述べます。資料としては、判定マニュアルの1ページから12ページが中心となります。
スライド12
目的です。調査の目的は、災害対策本部が設置されるような規模の地震又は降雨等により多くの宅地が被災した場合の、被害状況調査と危険度判定調査です。そしてその目的は、二次災害の軽減、防止です。この調査のあとは、仮復旧、本復旧にむけた行政のセカンドアクションが必要になります
スライド13
調査構成の説明です。被災直後の危険性を含む区域であるので、調査班は、被災宅地危険度判定士を含む、3又は4名で構成し、目視できる範囲を調査します。判定士の皆様は、非常時の連絡先一覧表を携帯することが必要です。
スライド14
ここで、マニュアル改訂により採用された、簡易記録について説明します。この判定は、判定活動を迅速かつ効率的に実施することを目的に出来た制度です。調査時に被害がない場合は、判定表のこの部分にチェックを入れ被害がないことと、簡易記録が採用されていることを明記すれば、被災状況図の記載や変状採点を省略することができ、判定点をゼロ点とし、無被害判定とすることが出来る制度です。
スライド15
次は、調査の実施です。擁壁の調査における経路順序を示したものです。これは、あくまでも一般的な経路ですので状況に応じて対応していただければ結構です。調査時に二次災害に遭わないことが重要です。危ないと感じたら近寄らないことです。この踏査では、擁壁本体の変状や周囲の状況などを確認します。
スライド16
これは、のり面の調査における経路手順を示したものです。のり面の場合も、まず全体をながめて危険のないことを確認してから始めて下さい。この場合も、擁壁と同様、危険のない範囲で、この順路を参考に踏査していただければ結構です。こちらには、行きと帰りの点検範囲を分けてありますが、小段(こだん)部分を調査する場合、行きと帰りで見る視点を、変えると調査漏れが防げますよ、ということを示しています。この踏査では、のり面のはらみや隆起、崩壊といった法面そのものの被害状況やその周辺の状況を確認します。
スライド17
排水施設の被害状況調査には、擁壁の排水施設とのり面の排水施設があります。それぞれ、表面排水工で被害の変状を判断し、
スライド18
擁壁の背面排水工の状況で基礎点の判断をします。
スライドは、水抜穴の被害状況例です。擁壁背面の地下水は裏込め排水層と水抜穴の組合せで、排水するのが基本です。裏込の状態を正確に把握することは困難であるので、水抜穴の機能が十分か否かで排水処理状況を推定します。水抜穴の被害状況には、設置本数の不足、土砂による穴の詰まり及び破損などがあります。
スライド19
これは、表面排水工の模式図です。表面排水工には、のり肩排水、小段排水、縦排水があります。表面排水には湧水処理も含みますが、のり面蛇籠や砕石置換で対処するのが一般的です。
スライド20
スライドは、のり面排水工の例です。盛土部においては、間隙水圧を低下させるために水平排水材などを設ける場合が多いです。
スライド21
調査における被災写真の撮影要領の説明をします。ここでは、撮影範囲、撮影に当たっての留意事項などを説明します。被写体には、必ず整理番号、撮影年月日などを、ホワイトボードなどへ記入し、撮影してください。
スライド22
パートツーは、調査票の共通事項編です。資料、擁壁、のり面等被害調査、危険度判定票作成の手引きなどを引用し、判定票の記入方法についての説明になります。
スライド23
危険度判定票は、擁壁タイプと、宅地地盤とのり面、自然斜面が一緒になったタイプの2つがあります。これは、様式1の擁壁の判定票です。詳しくは、後で説明します。
スライド24
次は、様式2の宅地地盤とのり面・自然斜面が一緒になった判定票です。擁壁は1セットでしたが、宅地地盤とのり面・自然斜面は、この1セットで両方の判定を行います。
スライド25
つぎに、宅地地盤のり面で、無被害の場合における書き方です。様式2、の判定票を使います。擁壁の場合と同様に、判定票の左上、被災状況図の上に、被災なし箇所と、簡易記録箇所にチェックを入れます。そして、右下の被害の判定値の被害点の欄に、ゼロ点を入れ、無被害と判定します。また、被害がないことが分かる全景写真を撮影し、被災状況図に住宅地図を貼り付け無被害あることを記載します。以上が、2021年8月に改訂した判定マニュアルの変更内容です。
スライド26
まず、宅地擁壁の判定票です。一番上に基本事項。その下に被災状況の項目。その下に被災状況図。最下段に、特記事項、となっています。それぞれの詳細について見ていきましょう。
スライド27
まず、基本事項です。調査日時。災害名。調査番号。被災発生箇所。所有者氏名・連絡先。などを記入します。さきほど、同一宅地での複数被災の場合、共通事項については、一方を省略して良いというのは、この部分のことです。
スライド28
次は、その下の部分で、擁壁の被災状況図のチェックになります。拡大してみましょう。
スライド29
被災状況図の記入方法について、説明します。調査現場の被災状況に該当するものを抽出し、図面に丸を付けてください。複数に付けても構いません。被害が無い場合は、被災無し及び簡易記録枠にチェックを入れ、無被害と分かる全景写真を撮影します。
スライド30
擁壁被災状況の記載例です。
スライドの事例ですと、クラックとハラミと傾斜の3つの変状が確認されたことがわかります。
スライド31
配点表に行く前にもう少し記入することがあります。被災状況図の記入です。次に詳しく説明します。
スライド32
平面図は、住宅地図又は地形図から被災現場周辺を切り抜き、被災現場を丸で囲み、貼り付けてください。手書きの場合も、概略延長が分かる様に記入してください。被災状況をわかりやすく記入してください。
スライド33
断面図は、被災断面の高さ、幅、奥行きが、分かるように、書いてください。擁壁上下の家屋までの最短距離を、必ず記入してください。家屋については、住宅、非住宅などの用途別と、木造、RC造、プレハブ、鉄骨、などの構造別にわけ、何階建てかわかる様に記入してください。断面図だけでなく、正面図や立体図も書き入れてください。また、被害状況の説明も記入してください。
スライド34
最下段が「特記事項」です。ここには、被災写真と、写真番号をリンクして記入します。また、特記事項として、今後予想される危険性と取るべき措置、住民の方とお話しした場合は、日付と時刻、会話の内容、相手かたの氏名、携帯電話番号等を、記載してください。また、被災宅地の周辺状況も記入してください。
スライド35
次は、パートスリー、宅地擁壁の調査内容を説明します。ちなみに、この写真は、平成21年に発生した中国・九州北部豪雨により被災した擁壁群です。擁壁は脆弱な練積擁壁で、水抜穴が殆ど無く、3段に増積みされた極めて粗悪な既存不適格擁壁でした。
スライド36
宅地の危険度判定は、宅地擁壁、宅地地盤、のり面の3つで実施しますが、宅地擁壁は、基礎点と変状点の合計で危険度を判定します。一方で、宅地地盤とのり面は、変状点のみで危険度を判定することになります。ただし、宅地地盤とのり面には、変状点の一種ですが、加算点というものが共通であります。のちほど説明いたします。また、実施本部の決定により簡易記録の実施が採用された場合、すべての項目で被害が確認されない場合は、無被害判定となります。
スライド37
さてこの図は、宅地擁壁の調査をフロー図化したものです。まずスライド左上の宅地の構成要素を確認します。擁壁か、宅地地盤、斜面か、宅地地盤、斜面であれば、各々の調査するルートにゆきます。宅地擁壁であれば、まず擁壁の構造、種類を特定します。次に、基礎点を調査するルートです。ブルー枠の上から、擁壁の位置を特定し、湧水の有無を分類し、排水施設を分類し、擁壁高さを測定します。そして、これらを足した合計が、基礎点合計になります。次は、擁壁の変状点のルートです。右、ピンク枠の上から1、クラック、2、水平移動、3、不同沈下、目地開き、4、ハラミ、5、傾斜・倒壊、6、擁壁の折損、7、崩壊、8、張出床版付擁壁の支柱の損傷、これら1から8を擁壁の種類と、被害に応じて配点します。そして、9、基礎及び基礎地盤の被害、10、排水施設の変状、11、擁壁背面の水道管の破裂、これらは擁壁の種類に関係なく配点します。変状点は、1から11の最大点数をもって、変状点とします。
スライド中央下段のグレー枠基礎点と、変状点の合計をもって、評価点とし、評価点に応じて、青色が調査済宅地、黄色が要注意宅地、赤が危険宅地、と評価します。では、その内容について述べます。
スライド38
判定票様式1のうら面です。手引き14、15ページに出ています。今、申し上げたことをこの票に当てはめると、擁壁の基礎的条件として、擁壁の種類を特定し、高さ・勾配などを記入します。基礎点として、擁壁の位置関係と基礎点項目の配点を記入します。変状程度の判定と、変状点の配点として、変状程度の大、中、小を、判定します。変状のチェックは複数記載が可能で、変状点最大値を抽出します。判定票記入の最後です。危険度の点数を記入する項目と、所見を記入する項目になります。まず、危険度ですが、基礎点と変状点を記入し、その合計点で危険度を判定します。
スライド39
宅地擁壁の被害の評価です。危険度の判定は合計点がこの表のどの区分に入るかによって決定します。擁壁の場合は、判定値が、4.5点未満であれば、小、8.5点未満であれば、中、8.5点以上であれば、大、となります。そして、最後に所見の記入です。ここでは緊急度と拡大の見込みを記入します。緊急度は、人命、財産、交通の3つの視点で判断します。拡大の見込みは、危険度や緊急度の評価から、総合的に判断することになります。
スライド40
擁壁の基礎的条件部分を、拡大したものです擁壁の種類は、コンクリート、練石積、空石積、増積、二段擁壁、張出擁壁の六つがあります。擁壁高さは、地上からの見付け高さを記入します。擁壁の設置条件は、切土、盛土、軟弱地盤上、その他、不明のどれかにチェックを入れます。擁壁の勾配は、勾配定規などを使用して、記入してください。
スライド41
練石積擁壁には、通常の練石積の他に、雑割石積と間知(けんち)ブロック積みがあります。空石積擁壁にも玉石積と大谷(おおや)石積があります。
スライド42
擁壁の種類については、今お話ししたとおりです。ピンクで着色した。増積擁壁、二段擁壁、張出床版付擁壁、空石積擁壁が、既存不適格擁壁です。本来あってはならない擁壁と言うことになります。
スライド43
擁壁の種類を、実際の写真で見てみます。上が、練石積擁壁です。間知ブロックと、自然石で、作られた擁壁の2種類があります。空石積擁壁との違いは、練石積擁壁はケンチブロックとコンクリートを一体化しながら積み上げる擁壁ですが、空石積は、文字通り石だけで積み上げる擁壁です。下の写真が、増積擁壁です。写真のように下の擁壁の上に新らたに擁壁を積み上げたものです。設計時に、別の擁壁を積み上げたものを想定し設計されていない為、既存不適格擁壁となります。
スライド44
上が、コンクリート擁壁です。左上が現場打ち擁壁、右上がプレキャスト擁壁です。プレキャストは、現場打ちと異なり、1メートルか2メートル間隔で継ぎ目があるので判ります。下の二つが二段積み擁壁です。これも、増積擁壁と同様、二段擁壁として当初から、設計されていない場合は、既存不適格擁壁となります。なお、小段の幅が、10メートル以上あればそれぞれ単独の擁壁と見なして良いと、判定マニュアル19ページに記載されています。
スライド45
つぎは、張出床版付擁壁です。これは練積擁壁のように前面に、勾配がある擁壁を覆う形で、土地の有効利用を図る目的で、張出しを後施工し、テラスや庭、ひどいものにあっては、家屋の一部が、その上に構築されているものもあります。これも、下の擁壁は、上の荷重を、考慮した構造ではありませんので、既存不適格擁壁となります。下の二つが空積擁壁です。これも、写真のような高さの擁壁では、既存不適格擁壁となります。これで擁壁の種類の特定が終わりました。このあと説明してゆきます、変状点の配点は、擁壁の種類によって異なります。このような理由から、擁壁種類の説明を、させていただきました。
スライド46
スライドは、建物と、道路との位置関係を表しています。擁壁の上、イッテンゼロエッチ、と、擁壁のした、イッテンナナエッチ、の範囲に、建物、もしくは道路があれば、ケースA、そうでなければ、ケースBと、判定します。これらをもとに、基礎点の配点を行います。ただし、簡易記録の場合は、採点しなくてかまいません。
スライド47
擁壁の基礎点は、3つあります。1つ目は、湧水です。乾燥、湿潤、にじみ出し、流出のいずれかをチェックします。2つ目は、排水施設です。次のスライドで説明します。3つ目は擁壁の高さです。擁壁の最大高さに、該当する部分の点数を丸で囲みます。
スライド48
まず、湧水の状況分類から説明します。ここでは、水抜穴や、擁壁表面の湿潤状態を見て、擁壁の背面に水が滞水し、水圧を受けるような状態になっているかどうかを判断し、乾燥、湿潤、にじみ出し、流出の3段階に分類します。水抜穴周辺が乾いていれば、乾燥とし、良い状況と判断します。にじみ出し流出が多ければ、にじみ出し流出とし悪い状況と判断します。そのいずれでもなく、しめった状態であれば、湿潤とします。
スライド49
この表は、乾燥、湿潤、にじみ出し流出の配点を、表しています
スライド50
湧水分類の定義は、水抜穴周辺が乾いていて、擁壁の崩壊の素因となる地下水の排水が良好であれば、乾燥とし良い状況と判断します。ただし、水抜穴が、閉塞していないか注意して下さい。
スライド51
水抜穴や、ブロック目地周辺がしめった状態であれば、湿潤と判断します。
スライド52
水抜穴から水が流れ出している場合や、最近流出した跡が残っている場合は、にじみ出し流出として、悪い状況と判断します。
スライド53
基礎点項目の2番目として、排水施設です。湧水の項目では、擁壁背面の滞水状況で判断しましたが、ここでは、その背面水を排水する機能が備わっているか、無いかを、判断します。これも、良い状態の、イ、から、ロ、ハ、の3段階に分類します。水抜穴直径が75ミリ、且つ3平方メートル、に1箇所と規定通りあり、かつ、擁壁天端に雨水の浸透を防ぐ排水施設が有る場合は、良いと判断し、分類は、イ、とします。反対に、水抜穴が規定通りなく、浸透を防ぐ排水施設もない場合は、悪いと判断し、分類は、ハ、とします。いずれか一方を満足している場合は、中程度と判断し、分類は、ロ、とします。
スライド54
三番目の擁壁の高さは、先ほども説明しましたが、見つけ高さを、測定します。増積擁壁は、擁壁部分と、増積部分を、分けて測定します。二段擁壁の場合は、下段と、上段に分け測定してください。また、基礎点には関係しませんが、擁壁の勾配は、擁壁の基礎的条件覧に記入箇所があります。傾斜定規などで測定し、記入して下さい。
スライド55
基礎点の配点です。先ほど説明いたしました、湧水、プラス、排水施設、プラス、擁壁の高さ、この3つの配点を合計し、基礎点とします。
スライド56
次は、変状点です。赤枠囲い部分の変状程度の概要説明と、青枠囲い部分の配点表があります。まずは、変状点の採点の前に、被災状況図で該当する項目に、丸をつけてください。複数ある場合は、複数の丸をつけてください。次は、大、中、小、の変状程度の説明がありますので、合致するところに丸を付けてください。赤枠部分で、変状の程度を判断し、青枠部分で、点数に変換します。もし、分かりにくい場合は、マニュアルをよく読んで選択してください。
スライド57
擁壁の変状程度、大、中、小、の概要説明です。小は、小被害を示しており、変状を生じているが変状部分を補修することにより、機能が回復するもの。中は、中被害を示しており、補修又は、部分的な改修により、機能が回復するもの。大は、大被害を示しており、致命的な打撃を受け、機能を失っているもの、又は、復旧には、全体改修を要するものです。次に、各擁壁の変状項目ごとに説明します。
スライド58
それぞれの変状の項目について、もう少し詳しく見ていきます。最初は、つみ擁壁のクラックの判断指標です。こちらは、クラック幅で判断します。判断指標数値は、2ミリ未満が小、20ミリ未満が中、20ミリ以上が大となっています。
スライド59
同じく変状項目は、クラックですが、コンクリート擁壁です。こちらもクラック幅で、判断しますが、積み擁壁とは、判断指標の数値が、異なっているのでご注意下さい。コンクリート擁壁では、2ミリ未満が、小、5ミリ未満が、中、5ミリ以上が、大、というように、積み擁壁に比べ、クラック幅の判断指標が、異なっています。ご注意ください。
スライド60
次は、変状項目2項目の水平移動です。この項目は、擁壁間の隙間や、変位の量で判断します。一般的には、目地部分の変位で、判断します。判断指標数値は、5ミリ未満を、「小」、50ミリ未満を、「中」、50ミリ以上を、「大」、と判別とします。
スライド61
次は、不同沈下および、目地開きの変状です。ここも、目地の上下ずれや、開きの量で、判断します。先ほどの、水平移動と区別が、付きにくいと思いますが、沈下を伴う変位の場合は、こちらに記入して下さい。判断指標の数値は、水平移動の数値と同じです。
スライド62
つぎは「ハラミ」です。概要説明だけでは、判断しにくい項目だと思いますが、概要説明と併せて、機能回復の程度を加えて判断すると良いと思います。部分補修によって、その機能が回復する程度なら、「小」、もう少し変状程度が大きく、補修または、部分改修をすれば機能回復が見込めるならば、「中」、完全に機能を失っていて、機能回復が見込めないものは、「大」、に分類します。これらのことは、マニュアル28ページ表3の15に、共通事項として記載されています。これから説明していきます変状項目のなかには、ハラミと同様に、概要説明の判断指標だけでは判断に迷う場合がでてくると思います。そのような場合は、機能回復の程度と併せて判断して下さい。
スライド63
次は、擁壁の傾斜、倒壊です。これは積み擁壁と、コンクリート擁壁とでは、判断指標が異なります。積み擁壁であれば、擁壁の傾斜が、地盤に対して垂直以下、コンクリート擁壁では、傾斜が50ミリ未満であれば、「小」被害。積み擁壁の傾斜が地盤に対して垂直以上、コンクリート擁壁では傾斜が50ミリ以上であれば、「中」被害。前傾倒壊して機能を失っている場合は、「大被害」と判断します。
スライド64
続いて、擁壁の折損です。こちらも積み擁壁と、コンクリート擁壁とでは、判断指標が異なります。まず、練石積擁壁の折損の程度です。クラックを境に、わずか傾斜している程度の変状で、部分補修によりその機能が回復するものであれば、小。
スライドの真ん中のように、抜け石や、裏込コンクリートが見えるような場合は、中。
スライド右のように、一見して被害が、大と判るものは、「大」と、判定します。
スライド65
同じく折損で、コンクリート擁壁の説明です。こちらもクラックを、境の傾斜や破壊の程度で判断します。クラックを境に、わずかに前傾している程度の変状で、部分補修により、その機能が回復するものであれば、小。クラックを境に、折れて前傾しているが部分的な改修で機能が回復するものであれば、中。せん断破壊で、上部が後傾していて、全体改修を必要とする場合は、大、に分類します。
スライド66
次は、擁壁の崩壊の程度です。この変状は、積み擁壁がほとんどです。この表は、判定票の表現と若干異なっておりますが、参考資料7ページでは、積み擁壁を練積と空積とに分け、判りやすく説明していますので、ここでは、参考資料にもとづいて説明します。まず練積擁壁です。擁壁の上半分で、滑り崩壊を生じているものは、「小」。被災は受けているが、基礎部分が残っているものは、「中」。基礎部分を含めすべて崩壊し、機能が失われているものは、「大」。と分類します。
スライド67
空石積擁壁の崩壊、崩落に関する変状程度です。小被害は、積み石がずれているもの。中被害は、上段部分が崩壊しているもの。大被害は、全体が崩壊しているものです。
スライド68
つぎは、張出床版付擁壁の変状です。支柱の損傷程度で判断し、支柱にクラックが入っている程度のものは、小被害。鉄筋が露出している状態のものは、中被害。支柱がせん断破壊している状態のものは、大被害、と判断します。
スライド69
基礎、及び基礎地盤の被害状況です。大規模な沈下や、クラックが生じている状態は、非常に危険と判断します。
スライド70
排水施設の変状に関する変状程度です。天端排水溝にずれ、欠損がある。又は、天端背面、舗装面に、クラックが見られるものは小被害。小被害に加え、擁壁のクラック又は、目地からの湧水があるものは、中被害。水抜孔のつまりや破損など、排水機能が、失われているものは、大被害に分類します。
スライド71
擁壁背面の水道管の破裂です。水道管が破裂して水が流出している状態は、非常に危険と判定します。
スライド72
判定票は、空欄の各項目を記入すれば、必要な情報収集ができるようになっています。無被害の場合は、被害点ゼロ点として、無被害に丸をつけてください。
スライド73
被害の判定は、基礎点と、変状点の合計で、危険度判定を行います。
スライドの例ですと、基礎点が、0.4点、変状点が8点ですので、合計は、8.4点になります。被害程度は、4.5、から8.5、との間になりますので、中被害、となります。
スライド74
被害判定の下に、所見欄があります。これは、人命、財産、交通、の3つの視点で、判断します。無被害の場合は、記載しません。緊急度「大」、は、すぐに措置しなければならない状態です。明らかに交通が、困難な状況で、家屋等個人の財産が、崩壊しており、放置しておくと構造物や、人命に危険が及び、二次災害が起こり得る場合です。中は、ある程度日数は、放置しておくことができる状態です。やや交通が困難で、家屋等個人の財産に被害が見受けられ、長期間放置しておくには、危険すぎると思われるものです。小は、ある程度の期間は、放置しておくことができる状態です。交通は、さほど困難ではなく、家屋等にもあまり被害は、見受けられず、構造物や人命に対して危険ではないものです。
スライド75
拡大の見込みは、危険度や、緊急度及び現場の状況などを総合的に勘案し、該当するものをチェックしてください。ここに示す「拡大の見込み」は、被害そのものが、今後どのようになるのか、収束するのか、拡大するのかを考慮し、判定士が記入してください。判定士が記入する拡大の見込みのあり、なし、判断不可については、危険度の評価、緊急度、現場の状況、今後の天候の見込み、余震の継続、被害箇所周辺の施設など、総合的に勘案し評価してください。
スライド76
判定票の最下段部分です。被災写真は、判定票とリンクさせた写真番号を記入します。特記事項では、今後予想される危険性などを記入します。
スライド77
つぎは、宅地地盤とのり面の判定票になります。この写真は、中越地震で被災した腹付け盛土の崩壊例です。
スライド78
こちらは、擁壁の時お見せした、危険度判定の実施フローです。宅地地盤とのり面は、赤枠囲い部分になります。擁壁では、基礎点と変状点の合計で、危険度を判定しましたが、宅地地盤と、のり面は、両方とも、変状点と加算点1点で、危険度を判定します。また、判定票も、様式2を、使用します。宅地地盤とのり面は、同じ様式2を対象によって、使い分けをします。「湧水・噴砂の有無」が、加算点の変状項目になります。変状点の最大値と、加算点の合計を評価点として危険度を判定します。
スライド79
スライドは、宅地地盤の危険度判定のフローを示しています。まず宅地の構成要素を確認します。擁壁、斜面であれば各々の調査する内容にゆきます。宅地地盤であれば、変状点を調査するルートに入ります。1、クラック、2、陥没、3、沈下、4、段差、5、隆起の点数を入れます。次に1から5の最大変状点を抽出します。6、で、湧水、噴砂の有無を確認し、あるで、1点、ないでゼロ点を加算します。変状点、プラス、湧水、噴砂の加算点の合計で「評価点」とします。
スライド80
それでは、それぞれの変状項目を説明します。まず、宅地地盤のクラックです。これは、クラック幅またはその量で判断します。程度の小、は、クラック幅が3センチ未満で単数の場合に該当します。クラック幅が、3センチから15センチ未満か、3センチ未満でも、クラックが複数ある場合は、中、程度と判断します。クラック幅が、15センチ以上か、15センチ未満でも、クラックが宅盤全面に見られる場合は、大、と判断します。クラックの幅は、数センチから数10センチ以上に及ぶこともあります。
スライド81
続いて2つ目の変状項目は、陥没です。陥没の程度は、陥没の深さで判断します。小は、深さが20センチ未満。中は、20から50センチ。大は、50センチ以上となります。
スライド82
次は、沈下です。沈下の程度は、沈下量で判断します。沈下量の場合は、10センチ未満が、小。10センチから25センチ未満が、中。25センチ以上が、大となります。
スライド83
次の変状項目は、宅盤の段差です。これは、段差量のみで判断します。段差量20センチ未満は、小。段差量20センチから50センチ未満は、中。段差量50センチ以上は、大、とします。ここまで、陥没、沈下、段差と、三種類の変状を説明しましたが、実際に変状を目にしたとき、概要説明だけでは、いずれとも判断しがたい場合が出てくるのがこの3変状です。マニュアルの43ページから45ページにもう少し詳しい解説がされているので紹介します。陥没は、地中の異物や、空洞によって生じたと、判断される変状。沈下は、地盤の性状に起因した変状で、液状化や、圧密による変状が該当します。また、段差は、地震動による衝撃などによって生じたと推測される変状というように記述されています。参考にしてください。
スライド84
隆起とは、部分的に現状地盤より盛り上がったもので、円弧滑り部におけるのり尻の隆起、構造物等が、支持力を失った結果として、周辺地盤の盛り上がりなどの現象を言います。隆起量は、数センチから、数10センチ以上に及ぶこともあります。
スライド85
宅盤の最後は、湧水、噴砂です。左の写真は、液状化による噴砂被害です。右の写真は、背後の山からの湧水による被害です。これらの変状が、確認されたら、程度や規模の大小に関わらず、1点を加算することになっています。
スライド86
宅地地盤の被災状況図の記入例です。この事例では、宅地地盤に、地盤のクラックと、地盤の陥没が認められると判定していることがわかります。
スライド87
次に宅地地盤の被災状況図の記入例です。例題は、中学校ですが、一般的には、宅地になります。建物周りの宅地地盤にクラック、陥没等、の変状が生じていないか、観察してください。この事例では、地盤の亀裂すなわちクラックが、長さ10メートルに及ぶものが三箇所あり、その他に、陥没深さ三十センチ、の被害もあることがわかります。
スライド88
被害状況図で丸をした、1、クラック、2、地盤の陥没に、丸をつけます。この事例では、地盤の亀裂長さが、10メートルに及ぶものが、三箇所あったため、複数に該当するので、「中」、の3点となります。次に、陥没の深さが、30センチあったので、変状形態20センチから50センチに、該当するため、中、の4点となります。また、湧水が、あったので、6、湧水、噴砂の有りにチェックをし、1点が追加されます。故に、被害の最大変状点4点、プラス、加算点1点の合計5点となります。
スライド89
最下段部採点表に記入します。最大変状点プラス加算点合計が、被害の判定値になりますので5点となります。簡易記録の場合は、0点で無被害。1から3点であれば、小。4から7点であれば、中。8から10点であれば、大となります。記載例では、4点から7点の間にあるので、中被害となります。また、緊急度は、中、拡大の見込みは有りとしました。
スライド90
最下段に、特記事項を記載する箇所があります。ここでの記載事項は、ステッカーに記載する内容となります。記載例では、中学校ですので、キレツや陥没の被害自体は、大きいが居住者がいない学校なので、避難するほど危険ではない。としています。
スライド91
宅地地盤に関する被害例に、1、地盤の沈下。2、地盤のクラック。3、地盤の陥没、などがあります。
スライド92
また、写真のように4、液状化。5、隆起。6、段差。などがあります。
スライド93
次は、宅地のり面等の危険度判定です。
スライド94
こちらは危険度判定の実施フローです。のり面は、赤枠囲い部分になります。擁壁では、基礎点と変状点の合計で危険度を判定しましたが、宅地地盤とのり面は両方とも、変状点と、加算点1点で危険度を判定します。また、調査票も様式2を使用します。宅地地盤とのり面は、同じ用紙を使用し対象によって使い分けをします。湧水、落石、転石の有無が、加算点の変状項目になります。変状点の最大値と、加算点の合計を評価点として、危険度を判定します。
スライド95
宅地のり面の変状は、1、クラック。2、ハラミ、盤ぶくれ。3、ガリー浸食。4、滑落崩壊。5、のり面保護工の変状。6、排水施設の変状。7、のり面内の水道管等の破裂。があり、その変状点の最大値を抽出します。
スライド96
加算点である、湧水、落石、転石、の有無を確認します。あるで、1点、なしで、ゼロ点の加算です。変状点A、プラス、湧水、落石、転石、の加算点Bの合計で評価点とします。表は、宅地のり面・自然のり面の危険度判定の区分を、示しています。
スライド97
のり長さとは、スライドの通り、のり面の斜距離を指します。
スライド98
それでは、それぞれの変状項目を説明します。まず最初に、クラックです。のり面の場合も、宅地地盤と同様、クラックは、その幅またはその量で判断をします。判断指標は、3センチ未満又は単数であれば、小。3センチから15センチ又は複数ある場合は、中。15センチ以上又は、全面に認められる場合は、大、と判断します。
スライド99
次は、のり面の、ハラミ、盤ぶくれ、の例です。ハラミは、のり面のクラックが、進行し、滑り落ちそうになった状態で、のり面中央部に表れる現象です。盤ぶくれは、のり面中央以下の滑り状態にあって、のり尻先端の地盤が、ふくれ上がる現象です。これら、ハラミ、盤ぶくれ共、大規模崩壊前の途中現象です。これも、隆起量または、その規模で判断をします。判断指標と配点は、この表のようになります。
スライド100
次はガリー浸食です。この項目は、変状程度で判断します。浸食が始まった状態が、「小」。浸食が進み、放置すると、被害が広がるおそれのある状態が、「中」。浸食が、この表の表現にあるように大規模で、のり面下側に、被害を及ぼすような状態は、大、と判断します。
スライド101
こちらの写真が、ガリー浸食による被災例です。ガリーとは、降雨等により集約した水の流れによって、地表面が削られてできた地形のことをいいます。変状程度としては、左側が、中、右側が、大、というところでしょうか。
スライド102
次は、のり面の滑落、崩壊です。判断指標はこの表のようになります。この滑落・崩壊の変状は、被害点では、最大の配点となっており、小程度でも、7点という高配点となっています。
スライド103
次は、のり面保護工の被害です。まず、のり枠工です。クラックや、浮き上がりの程度で判断しています。小が、のり枠の間詰め陥没。中が、のり枠の部分的な破損。大が、のり枠の浮上り破壊。
スライド104
コンクリート吹き付け工の変状です。「小」が、コンクリート吹き付けに、わずかにテンションクラックが、見られるが、吹き付け工のずれは、認められない程度。「中」は、コンクリート吹き付けのクラック部分で、陥没、ずれが、見受けられる。「大」は、コンクリート吹き付けのラス金網が、露出し、コンクリート吹き付け面に、破損が、見受けられる。この変状も、滑落、崩壊と、同様に配点が高い変状です。
スライド105
こちらの写真が、のり面保護工の被災例です。左上の写真のようにアンカーヘッドが、飛んでしまった例もあります。
スライド106
続いて、排水施設の変状です。この項目は、擁壁でもありましたが、判断指標もほとんど同じで、変状点の配点も同じです。のちほど見比べてみて下さい。
スライド107
こちらが、排水施設の変状例になります。
スライド108
次は、のり面内の水道管の破裂と、湧水、落石、転石、の2項目の変状です。のり面内の水道管の破裂が、確認されれば、規模に関係なく、8点を付けます。湧水、落石、転石を確認した場合、程度に関係なく、1点を、加算します。
スライド109(のり面・自然斜面の被災状況図の記入例)
のり面、自然斜面の被災状況図の記入例の説明をします。被災状況図で、被害状況に該当するものに、丸をつけてください。この事例では、のり面のクラック、滑落に丸が入っています。このあと、丸をしたそれぞれの変状項目について、判定票で、配点してゆくことになります。
スライド110(被災状況図の記入)
次に、のり面、自然斜面、の被災状況図の記入です。ここでは、高さ8メートルの自然斜面が崩壊し、斜面下に住んでいる人の避難が必要となっています。
スライド111
こちらが、宅地地盤とのり面の判定票になります。調査票は、どちらも様式2を使用し、対象によって使い分けをします。まず、擁壁の場合と同じように、赤枠部分に基礎的条件を記入します。
スライド112
様式2の宅地のり面の基礎的条件記載の説明です。1、既存資料や実測により、のり面高さの記入してください。のり面高さは、最大高さ、平均のり高を、記入します。ただし、不可能な場合は、目測でかまいません。2、既存資料や、勾配定規などで実測し、のり面勾配を記入してください。3、のり長さを、記入してください。4、自然地盤の場合は、オーバーハングの有無を、記載してください。
スライド113
変状部分を拡大したものです。被害状況図で丸をしたクラック、崩落、に丸をつけます。この例では、のり面に、クラックが複数に存在しますので、「中」の2点となります。次に、高さ8メートル、長さ20メートル、幅20メートルの、表層すべりが、あります。表層すべりが、進んで、えぐり取られたような状態。放置すると拡大するおそれのあるもの、又は、のり面なかほどまで、滑落に該当しますので、「中」、の8点となります。湧水、落石・転石は、ありませんので、加算点はゼロ点です。故に、被害の判定値は、最大変状点はち点、プラス、加算点ゼロ点の合計8点となります。
スライド114(のり面・自然斜面被害の判定)
先ほど、申し上げた通り、採点表の、この部分に記入する被害の判定値は、8点となります。被害程度では、8点から10点との間になりますので、大被害となります。また、斜面上にクラックがあり、さらに大規模に崩壊する可能性がありますので、緊急度は大、拡大の見込みも有りとします。
スライド115(被災状況の記入)
最後に、特記事項を記載します。ここでの記載事項は、ステッカーに記載する内容となります。この例では、それほど大きな表層すべりではないが、前方に民家があり斜面にもキレツがあって二次災害のおそれもあるので避難が必要であろう。としていますが、ステッカーには、斜面崩壊が、今後も拡大する恐れがあるので、対策をするまで避難してください。との記載が望ましいと思います。
スライド116
複合被害がある場合は、様式1と様式2の両方の帳票を用いて判定を行います。但し、共通する部分、例えば被災状況図などと、擁壁の危険度判定については、様式1に記入し、のり面の危険度判定については、様式2に記入するものとします。
スライド117
谷埋め型大規模盛土造成地は、豪雨や地震時に宅地造成前の谷底付近をすべり面として、盛土造成地全体または、大部分が斜面下部方向へ移動する可能性があり、腹付け型大規模盛土造成地も、豪雨や地震時に盛土造成地全体または、大部分が斜面下部方向へ移動する可能性があります。このような場合は、専門家に支援を受けるべく判定票に被害が分かる代表断面図等記載し、災害対策本部に報告して下さい。
スライド118(宅地地盤全体の被害)
宅地地盤の被害事例について説明します。Aは、のり尻の隆起の事例です。Bは、のり肩の亀裂の事例です。Cは、腹付け盛土の崩壊の事例です。Dは、液状化による側方流動の事例です。
スライド119(Part V:その他)
その他の事項になります。この写真は、中越地震における、被災宅地相談窓口の状況です。
スライド120
判定の1日の流れは、このようになります。
スライド121
まずは、実施本部へ集合し、ミーティングとなります。注意事項、判定地域の説明、資料配布などがあります。その際に、調査箇所の住民に対する説明用リーフレットなども配布されます。
スライド122
被災写真の撮影要領として、
スライドに書いてあることに注意してください。順を追って説明してゆきます。
スライド123
判定活動の役割分担としては、計測係、写真撮影、判定票記入係、ホワイトボード係の最低3名がひと班編成になります。
スライド124
ホワイトボードの記入では、災害名称、整理番号、撮影年月日・時間、被災地住所を記入してください。
スライド125
撮影方法として、擁壁や宅地全体の概要が解るように、全景写真を撮影してください。被災個所の局部写真を撮って、被災の状況が解るようにしてください。判定ステッカーを貼り付けた状況を撮影してください。
スライド126
こちらは判定ステッカーになります。危険宅地の赤。要注意宅地の黄色。調査済みの青の3種類です。赤判定や、黄色判定の場合は、この注記箇所に、どこが、どのように危険か。また、どのように行動すべきか等を、必ず記入し、危険を周知させた上で、二次災害を防ぐことが重要です。
スライド127
判定ステッカーには、以下の内容を簡潔に記入します。1、何が危険であるか。2、判定日時。3、宅地危険度判定実施本部の連絡先。4、無被害の場合は、「簡易記録」として記載を省略しても構いません。
スライド128
判定ステッカーの実際の貼り付け例です。右上の写真で、2枚貼られている上段が建築の判定です。下が、宅地の判定です。左下の例では、建築は危険、宅地では、要注意と判定されています。それぞれの判断基準が異なりますので、建物の判定結果を気にする必要はありません。
スライド129
スライドは、ステッカーによる現地表示例です。被災擁壁の現地表示は、スライドに示すように該当箇所に、判定ステッカーを、布製ガムテープ等で貼り付けます。また、のり面等の現地表示は、該当箇所に判定ステッカーを針金ピン等で固定します。それらが難しい場合には、付近の電柱に布製ガムテープ等で貼り付けたり、針金ピンでクラックのある石積等にも取り付けるなどの方法があります。
スライド130
現場踏査が終了しましたら、判定結果のとりまとめを行っていただきます。判定票のチェック、図面の補足、写真の整理等を行ってください。
スライド131
調査内容の整理が終わりましたら、判定調整員への報告を行っていただきます。ここまでが判定活動一連の内容になります。
スライド132
これで被災宅地の調査・危険度判定マニュアルの概要と記入方法についての説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。
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