エムポックスについて
エムポックス※は、1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めの感染が確認された、オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルスによる感染症で、中央アフリカから西アフリカにかけて流行しています。国内では感染症法上の4類感染症に指定されています。
※令和5年5月26日にサル痘からエムポックスに感染症法上の名称が変更されました。
エムポックスとは?
1 病原体
ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルス
コンゴ盆地型(クレード1)と西アフリカ型(クレード2a及び2b)の2系統に分類される。
コンゴ盆地型(クレード1)による感染例の死亡率は10%程度であるのに対し、西アフリカ型(クレード2a及び2b)による感染例の死亡例は1%程度と報告されている。
2 感染経路
アフリカに生息するリスなどの齧歯類をはじめ、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染する。
また、感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む。)、患者との接近した対面での飛沫への長時間の曝露(prolonged face-to-face contact)、患者が使用した寝具等との接触等により感染する。
皮疹の痂皮をエアロゾル化することで空気感染させた動物実験の報告があるものの、実際に空気感染を起こした事例は確認されていない。
3 国内、世界での発生状況
エムポックスについて(厚生労働省ホームページ)
Emergency situation reports(WHO)
4 潜伏期
6~13日(最大5~21日)
5 治療と診断
(1)臨床症状:
- 発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0-5日程度持続し、発熱1-3日後に発疹が出現。
- リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部に見られる。
- 皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。
- 多くの場合2-4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがある。
- 皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。
- エムポックスでは手掌や足底にも各皮疹が出現することなどが、水痘との鑑別に有用とされる。
※2022年5月以降の欧米を中心とした流行では、以下のような、従来の報告とは異なる臨床徴候が指摘されている
- 発熱やリンパ節腫脹などの前駆症状が見られない場合があること
- 病変が局所(会陰部、肛門周囲や口腔など)に集中しており、全身性の発疹が見られない場合があること
- 異なる段階の皮疹が同時に見られる場合があること
(2)診断:
- 水疱や膿疱の内容液や蓋、あるいは組織を用いたPCR検査による遺伝子の検出
- その他、ウイルス分離・同定や、ウイルス粒子の証明、蛍光抗体法などの方法が知られている。
(3)治療:
- 対症療法
- 国内で利用可能な薬事承認された治療薬はない。
- 欧州においては、特異的治療薬としてテコビリマットが承認されており、我が国においても同薬を用いた特定臨床研究が実施されている。
6 予防法
- 天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があるとされている。
- 流行地では感受性のある動物や感染者との接触を避けることが大切である。
7 エムポックスを疑う症状があった場合はどうすればよいか。
- エムポックスを疑う症状が見られた場合、最寄りの保健所に相談してください。
- 医療機関を受診する際には、マスクの着用や発疹部位をガーゼなどでおおう等の対策をした上で受診してください。
リーフレット
患者の発生について
参考
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