答申第195号
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答申の概要(答申第195号:諮問第278号)
実施機関
病院局長
事案の件名
「医療事故の報告について(平成15年12月以降)及びレベル別事故件数(平成15年度)」の行政文書部分開示決定に係る異議申立てに対する決定について
対象文書
- 種類 報告
- 情報 医療事故報告書、起案文書、カルテ等添付書類
請求に対する決定
部分開示
不開示条項
条例第8条第2号
原処分
- 不開示部分 患者氏名、住所、生年月日、性別、年齢、患者側の意思表示、家族への説明、報告年月日、起案年月日及びカルテ等の添付書類
- 不開示理由 特定の個人が識別することができる情報であるため、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため。
申立年月日
平成16年7月1日
諮問年月日
平成16年7月30日
答申年月日
平成17年6月16日
審査会の判断
条例第8条第2号の該当性について
特定個人の識別可能性の判断に当たっては、事故が発生した病院における医療関係者、患者本人及びその近親者等の特別の情報を有している関係者ではない者が通常入手し得る他の情報と照合することにより、個人が識別できるか否かを基準として判断すべきである。
- 患者の氏名、住所、生年月日、年齢、カルテ番号、性別
患者の氏名、住所及び生年月日は明らかに個人に関する情報であって、特定の個人が識別される記述であり、不開示が相当である。
患者の年齢については、事故発生時点と生年月日と密接に関係するものであり、また、カルテ番号は患者個人ごとに付される番号であり、特定の個人が識別され得る記述と認められるので、不開示が相当であるが、性別については、他の情報と照合したとしても特定の個人が識別され得るとは認められないので開示すべきである。
- 事故発生日時、起案年月日等については、これらの情報から特定の個人が識別され得るとは認められず、開示すべきである。
- 医療事故関係者(医師、看護師等)の氏名及び事故調査委員会の委員氏名等は、医師、看護師等については、特例条例第2条第1号の適用により氏名を開示すべきであり、また事故調査委員会の委員の所属大学、職名、氏名については、条例第8条第2号ただし書イの適用により開示すべきである。
- 添付文書に記載された病名・診療経過等(病状の変化に関連して記録された日時を含む。)は、個人の生命・健康等に直接かかわる機微にわたる情報であり、個人が識別される部分を除いたとしても、これをそのまま公にした場合には、個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められるので不開示が相当である。しかしながら、事故の概要(医療事故に係る医療行為・原因)にかかわる事実的な記載については、病名や診療経過の部分を開示する場合とは異なり、これを開示しても個人の権利利益を害するおそれがあるとは認められないので開示すべきである。なお、本件事案のうち、病名等一定の情報を報道機関を通じて公表しているものについては、その範囲の情報は条例第8条第2号ただし書イの適用により開示すべきものである。
- 医療事故報告書に記載された患者側の意思表示・感情等及びその他の情報は、医療事故の当事者となった患者の家族としての率直な感情等であり、家族から患者への思いの強さや家族の人格等と密接に関係するものであり、特定の個人が識別される部分を除いたとしても、個人の権利利益を害するおそれがあると認められるので不開示が相当である。
- 医療事故報告書に添付された手術記録(詳細に転記された書面を含む。)は、手術を担当した医師自らがその手術経過等を詳細に記録したものと推認され、その文書の性格からこれを公にした場合には、個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められるので不開示が相当である。
- 医療事故報告書には、上記で検討した文書の他にも、医療事故報告までの経緯をまとめたものや、患者家族からの質疑に回答した回答文等の様々の趣旨の文書が添付されているが、患者の身体、病状の変化等を、個人の生命、健康等に直接かかわる機微にわたる情報があることから、これらを公にした場合には個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められ不開示が相当である。
医師に課される守秘義務との関連について
実施機関は、刑法第134条第1項を引用して、医師に課される守秘義務の関連から、具体的な診療経過を開示することが不適当と判断した旨説明するが、報告書の提出を受けた実施機関が、条例の不開示情報に該当しないと判断した情報を開示する行為は、同条同項に規定する刑罰の対象には当らないものと判断する。
異議申立人の主張について
異議申立人は、他の実施機関が行った同種の開示決定等との違いを根拠に矛盾していると主張するが、他の実施機関が行った開示決定等の態様により、当審査会の判断が左右されるものではない。
附言
本件決定の決定内容を精査したところ、回議のために起案文書に記録された情報と添付された報告書等に記録された情報について、開示・不開示の取扱いに不統一な部分が散見され、中には本来、不開示が相当と判断される病状等の情報が開示されているものもあった。実施機関においては、今後同種の開示請求に関する対応について、本答申を参考とし、より慎重で適正な開示事務を行うべきである。
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