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更新日:令和6(2024)年10月3日
ページ番号:8735
「白砂青松」、この言葉は、私達、日本人の心の原風景を呼び起こすひとつです。
海岸といえば、海を囲む白い砂浜と松林を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
青い海と白い砂浜、緑濃き松林・・・大変美しい景観です。しかし松林だけは自然がもたらしてくれたものではありません。
松林は人々の暮らしを守るために先達により営々と育てられてきたのです。
九十九里海岸では古くから、海岸林が造成されてきました。
幾度かの乱伐や荒廃を経て再び植林をするという歴史をたどっています。
第二次世界大戦中にもほとんど伐採され、飛砂や潮風が人々の暮らしを脅かしていました。
戦後、人々の暮らしを守ろうと、再び海岸林の造成が始まったのです。
クロマツは、日本の樹種の中でも特に潮風に強い木です。
しかし、クロマツといえども砂の移動の激しい場所では根も張ることができません。
そこで先ず、クロマツが生育しやすい環境を作るために先人は砂丘を人工的に築きました。
これで海から直接吹き付ける風により運ばれる砂の移動を抑えたのです。
こうして、砂が移動しないようにしてからクロマツが植えられました。
厳しい環境に耐えうるようにと密に植えられるようになってきました。
どのくらいの本数か・・・というと、現在では約1ヘクタール当たり10,000本、普通の山に植える本数の約3倍です。
さらに風などを防ぐために竹で編んだ柵(竹簀(たけす))を張り巡らせ、考えうる限り、生育条件の向上に努めました。
試行錯誤を重ねた上で、このような方法により海岸林の造成がされてきたのです。
現在でも基本的には、このようなやり方を踏襲しています。
海岸林の役割として、東日本大震災以降は津波被害をやわらげる機能がますます期待されています。
海岸林は津波を完全に止めるものではありませんが、幅が50メートル以上あれば、津波の速度を半分以下にし漂流物を留める効果があると言われています。
また、海岸沿いに住む方々にとっては、海から吹く風や飛んでくる砂を防ぐ海岸林はなくてはならないものです。
さらに、松林の中を散策するのは気持ちが良いもので、保健休養のための遊歩道も設けてあり、地域の方々の散歩コースとなっています。
さて、重要な機能を持つ九十九里の海岸林ですが、いろいろな問題も抱えています。
ひとつめの問題は、過湿化による枯損です。もともとこの地域は、標高が1から3mと低い上に、地盤沈下などに伴い地下水位が高い状態となっています。
このような場所では、マツの根が長期にわたり浸水するため、酸素不足となり枯れてしまいます。
また、水位が高いため根が縦方向に伸びず、横に広がり、木全体を支える力が弱くなり、ちょっとした風にも倒伏する木が多くなっています。
地下水位が高い林内(左)
地中方向には数十センチしか根が
伸展していない(左)
地下水位が高いため、地中深くに
根を張れず倒れたクロマツ(右)
さらに、全国的に蔓延している松くい虫により、本県の松林も激害を被りました。
そして、東日本大震災では津波後の潮害を受けています。
海岸に生育できる樹種でクロマツに替わるものは、なかなかありません。
このため懸命な防除を続けていますが、枯損を完全には止められていないのが現状です。
松くい虫や過湿化、津波の被害により荒廃し、裸地化した箇所には、盛土をしたり松くい虫に強いクロマツを植えることにより、再び「青松」となるよう現在も植栽が続いています。
このように、重要な防災機能を持ち、また、訪れる人々に森林浴や休養の場を提供してくれる九十九里の松林ですが、夏場の花火やバーベキューによる不始末火、冬場の乾燥した時期を中心に不審火もあり、一瞬にして長年の努力が消え去ることもあります。
海岸林は、みなさんの大切な財産です。
地域のみなさんを始め、利用される一人一人の方に、優しい心配りをしていただけたら幸いです。
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